270.毒魔法研究第一人者もじゃ
もじゃ――ベルガナ先生は、毒魔法研究の第一人者だそうだ。
ビエナちゃんの上の大物出てきた!?
日々新しい毒魔法を模索しているそうだ。なんとも危険な研究室である。
例の、カエルやキノコからエナドリを生み出した研究室とはよいライバル関係で、あちらがエナドリという素晴らしいブーストドリンクを生み出したことを、称えつつも悔しい思いをしているらしい。
全部吐露してるよ。
「悔しい! 俺だって画期的なものを生み出したい!」
「ベルガナは今までにたくさんの画期的なものを生み出してるよ。毒も薬になるからな」
ブラウン先生がなだめているが全然効かない。なぜか周りの研究員たちもうんうんと頷いて目に涙を溜めている。
いいからはよ、クエスト寄越せ。
「でだ、俺が作りたいのは、混入された毒を見つけるものなんだ。ほら、貴族は銀食器を使うだろう? あれは毒が混入された際、比較的反応する物が多いからだ。でもそれは万能ではない。俺は、経口摂取でどんな毒も発見できる、または、毒に対して耐性をつける物を生み出したいんだ」
話がちょっと興味深くなってくる。
「例えば、毒耐性アクセサリーみたいな?」
「そう! その通りだ。毒耐性アクセサリーはなかなか難しくてね」
セツナ:
耐性系アクセサリーってあまりないの?
ソーダ:
いや、あるよ?
雷耐性なんかは比較的安値で売ってる。
セツナ:
毒は?
八海山:
毒は見たことがないな。眠り耐性アクセサリーを作ったろ?
状態異常系のアクセサリーは実はあれが初めてだ。
セツナ:
了解。毒耐性とかあるといいよね。
ソーダ:
指輪とかブローチがあるといいな。
なに? 今そんな話に接触してるのか?
セツナ:
です。まあもうちょい話聞いてから。
「毒耐性アクセサリーは、貴族からの支持も得られるだろうな」
「だいたいの構想はできているし、できると思うんだが、ただ、材料が」
出ました、材料が足りない。
「それを俺に採ってきて欲しいと」
「そういうことだ」
場所もわかっていると地図を広げて俺の地図にポイントが打たれる。
「採ってきてもらいたいのは、ハーピーの爪」
はーぴーぃ……聞いたことある。なんか女性の鳥人間?
「結構凶暴だし、空を飛んでいるからなあ。研究員の我々ではなかなか。冒険者ギルドに依頼も出すつもりだが」
毒魔法と引き換えにタダで手に入るならってことか。いや、俺に教えてくれるんだからタダじゃない。お互い利になるやつです。
が、……強そうだなぁ。
「友だちに手伝ってもらってもいいですか?」
「こちらは構わないよ。毒耐性アクセサリーなんて、他じゃまだ研究進んでいないしな。なんだかんだでウロブルの学院が最先端さ」
自信ありげにもじゃってる。
「毒耐性アクセサリー、俺も買えますか?」
「……ふむ。要求分以上を持ってきてくれたら、かな。残念なことにパトロンがいるからね、商会の方と話し合ってもらうことにはなるだろうけど。多少の割引はしてもらえると思うよ」
「一緒に採りに行く友人分も?」
「そこは自分で交渉しなさい」
ぐぬぬ。
セツナ:
毒耐性アクセサリー爆誕させるの手伝ってくれる人~!
ピロリ:
はーい!
多少耐性はもってるけど、アクセサリーは欲しいわね。
眠り耐性と同じよ。掛かる率がぐんと減るから!
八海山:
レシピが広まるのかな?
セツナ:
そこはちょっとわからない。
できあがったら売り出すところが決まっているような話で、そこの商会と交渉してと言われました。
で、必要なのがハーピーの爪。所在地も聞いてるけど強そう……。ウロブルのちょい先なんだよ。
ソーダ:
そっちは今、先が開かれないって言われてるからそれほど攻略されてないなぁ。
半蔵門線:
ハーピー、めちゃくちゃ強かったとどこかのスレで見たでござるね~。
場所がウロブルより先なので早々に1人では無理だと判断しております。
ソーダ:
ならまあ、クラン狩り行くかぁ~。
そんな急ぐことか?
セツナ:
いや、別に急がないよー。空の国との調整役あるし。
ピロリ:
なんか楽しそうなことまたやってるの~?
セツナ:
写本師という新ワード出てきてますね。
ソーダ:
おまーーーー!! また本関係そうじゃん。
セツナ:
だからクエストお断りせずに受けたんだよっ! 他に見せられるかわからない。アンジェリーナさんもちょっと関わってるし~
空の国の図書室の蔵書と、アランブレの図書館の蔵書をお互いに見せ合って欲しいものを写本してトレードとかそういう話だと思ってるんだけど。
始まりはアンジェリーナさんが高所恐怖症だったことからなんだ。
うっうっ……一緒に行けなかった。
相談して俺の方に進展がなければ明日のクラン狩りにしようということになった。話していなかった魔法使い組は生産職の方にちょうどかかりきりだったようで、後からOKをいただいた。
で、ログインして、特に連絡はなし。
『よーしクラン狩りだー! 準備きっちりしろよ~』
『毒耐性用に集めるってことは毒があるってこと?』
『毒攻撃があるでござるねー。それで聖職者が状態異常回復にかかりきりになるそうでござる』
『なら、各自回復薬は多めに持って行ってくれ』
ウロブルへはみんなぴょいっと移動できる。その後街の門の近くに集合した。
「お、マスター、揃ってクラン狩りか?」
深淵のジラフとその仲間たちだ。
「ちょっと先のマップに素材狩りだな。そっちは?」
「こっちもお嬢様のお望みの物をな……」
お嬢様?
首を傾げているのは俺だけで、クランメンバーは生ぬるい笑みを浮かべている。
「それはご愁傷様だなあ。どっち派ついたの?」
「クリスティーン様派だなあ。マスターたちは?」
「俺まだ選択してない」
「私もまだよ」
「あんまり放置してるとどちらの派閥からも疎まれるらしいぞ」
「推進派と和睦派、どっちもどっちなんだよなぁ~」
と、ようやく2人の話にピンとくる。
「学園の派閥争い?」
「そうそうって、セツナ君は学園在住じゃないのか」
ジラフに言われて頷く。
「学院で遊んでるから。で、研究室の先生に今の学園には近づくなって言われた」
俺の言葉にみんながうへぇって顔してた。
「どっちも我が強いお嬢様だからなあ。もう戦争終わったしいいだろうって思うんだが、そうはいかないらしいな。案外どっちからも疎まれるルートが正解なのかもしれないぞ」
「どうだかなあ。クエストはやってみたいんだけどな。この間の空の国ので、ユーザー同士の陣営敵対も狙ってるんだろうなってのがわかったから、危ない気がする」
「掲示板の閲覧規制用意されていたものだったもんな」
ひとしきりそんな話をした後、お互いの狩り場へ出掛けることとなった。
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