268.調整役のお仕事始めました
となると今度はアランブレの司書たちだ。図書館に行かねばならない。
その前にアンジェリーナさんに今回の流れを報告しておこう。
ホウレンソウは大事だよ。
カランと貸本屋の扉が音を立てる。
「こんにちは、アンジェリーナさん」
「いらっしゃいセツナくん」
そうして今回の流れを説明した。
「私が言ったから面倒ごとに巻き込んじゃったわね」
「いえいえ、空の国の本を自由に読めるようになるのは、それはそれで嬉しいですから」
「そうね、私も新しい本は読みたいわ」
にこりと笑うアンジェリーナさんの素敵な笑みにノックアウトだ。
この笑顔があれば俺はもっとやれる!
「それで、俺これから図書館にこのお話を一応事前に話しておこうと思うんですけど、誰に話すのが一番か相談したくて」
「もちろん同行するわ。あなたに全部厄介ごとを押しつける気はない。写本師の伝手も私の方が詳しいしね」
うわああい! アンジェリーナさんと図書館まで街歩きだ!
今日はまた新しい街歩き用コーディネートを試している。防御力ほぼゼロだけど! 咄嗟に着替えられるかが俺の腕の見せ所。
アンジェリーナさんの衣装は残念ながら変わらない。
ヴァージルとかみたいに衣装チェンジあるのかなぁ……。見たいよおお。
スカーフもどこに行ったんだろう。これからも何かと貢いでいきたい。そしていつか、いつか俺のプレゼントをつけてもらいたい!
「あれ、アンジェリーナさん、こんにちは。今日は仕事は特になかったと思うんですが」
「ちょっと用事があってね。司書長はいらっしゃるかしら? いなかったら、面会の予約をしたいんだけど」
「今日は在席しておりますよ。用件をお伺いしても?」
そこでふふと蠱惑的な笑みを浮かべる。
打ち抜かれる俺のハート!
「空の国の本のお話がしたいの」
目の前の男はいたって普通。こいつ、本当に男なのか? 今のにやられないなんて……特殊性癖の持ち主か?
「それは、とても興味深いですね。中に入って少しお待ちいただけますか?」
俺はアンジェリーナさんと揃って入館証を首から掛けた状態で中へ。待たされることほんの数分。受付の彼がそのまままた部屋へ案内してくれた。表の重厚な歴史満載の図書館とは違って、その裏側、無駄なものが排除された廊下を歩き続ける。
そうやって通されたところには、1人の男性が待っていた。
「何やら面白い話を持ってきたようだね」
「お久しぶりです司書長。実際取り付けたのはこちらの彼よ。私の弟子なの。セツナくんよ」
「セツナです。よろしくお願いします」
「それじゃあ聞こうか」
うん、たぶんこの人貴族。
最近貴族とそうでない人がわかるようになってきた。なんかね、背筋の伸ばし方がすごい。ぴしっと胸張って自信ありげなんだ。
あー、だからトラヴィスは貴族に思えなかったのか。あいつ、自信なさげだもん、カジノの外だと。カジノの中ではうさんくさげでした。
俺は、今回の話の流れを説明した。きちんと順を追って。そして、空の国はもう要望を準備していることも。
「こちらも王宮に出向いて早急に話を進めなければならないな。セツナくんにはアンジェリーナを通せばいいか?」
「そうね、そうしてもらえると私も流れを把握できて嬉しいわ。写本師の手配がいるようならお手伝いしますよ」
「最近は腕のいい写本師がなかなか捕まらないからな。頼むかもしれない」
「目録なんかの情報が回ってくるならなお嬉しいですし」
「つなぎの過程で見えてしまうのは仕方ないな」
ニコニコ話してる。うーん、アンジェリーナさんの大物感がすごい。貸本屋の中でも若い方だと思うのに、目の前のおっさんと対等に話している。
さすがアンジェリーナさんだ!!
「写本師という職業もあるんですね」
「そうね、修復師とも関わりがある職業よ。どうしたって同じ本を増やすには写本師がいるでしょう? 普通の人が真面目に写していたら何ヶ月もかかるし、どうしたって誤字脱字が起こる。それによって本の内容が正しく伝わらないこともあるわ。写本師は、スキルで写し取るから、熟練度によっては一瞬で本を完成させるのよ」
それまたすごい職業……あー、新職? でも、図書館とかに深く関わっていないとなれなさそうだなぁ。情報を流すかどうかを悩むことコンマ5秒。
ないね。
写本=本=貸本屋! この危険な数式には触れない方がいい。
それでは次はまた連絡をしてという話になった。地上か、空の国で同時に開示する方がいいんじゃないかな。公平性を保つために。
「セツナくんはこの後は?」
「もうすぐ夜なので狩りをします」
お金なくなっちゃったんだよ……。
ミュス狩りでもいいんだけど、今始まりの平原、必要以上に人がいて騒がしいんだよね~。
てことでハチさんだ。効率的にハチを狩るなら、火付与してが一番なのだが、なにせ付与素材採りに行くのが1人でできないうえに、錬金費用が高い! なので素細剣でプスプスして、他のをプスプスしているうちに手元の方が死ぬ。そうすると細剣に空きができるので先に刺して、押し込まれて手元の方で新しくハチが死ぬ。
死のローテーションを作っております。
夜中がっつり狩って、朝イェーメールへ。ねぼすけドワーフを叩き起こして、売り払う。
「いや、助かる。ケルムケルサから注文がどっさり届いてな。彼らの武器は基本槍。さらにはジャベリンを使うんだ。空の魔物を倒すために投げるのさ。得物に刺されば回収するが、どこかに飛んでいってしまえば新しいのが必要になる」
「えっ……じゃあ空から槍が降ることも!!」
慣用句が現実になる!?
「そこら辺は考えて使っているようだな。ジャベリンは基本海の上でしか使わないそうだ……俺も心配になって聞いた」
ガッハッハと笑う。
「とにかく今はハチの針が大量に欲しいってことだ。ここは儲け時だからな。俺も頑張るぜ!」
「それは俺も儲け時! 頑張りますね」
よろしく頼むと固い握手を交わして、1000万シェルの補填に走る……全然走れないよぉ……。
さて、さすがの俺も気になっているのだ。
本読むのは当然として、今後やってみたいことを改めて一覧にすることにした。
VR、本当に便利なのだ。
ステータス画面にメモという項目があり、自由に思ったことを書いておけるのだ。
ブックマーク、評価、いいね、感想、ありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
名実ともに、私が書いた最長の物語となりましたー
まだまだ楽しんで書けそう。
日々のスキマ時間潰しに、よかったらこれからもよろしくお願いします。




