266.圧迫する服たち
今日はピロリコーデの衣装に身を包み、アンジェリーナさんのお店に凸するのだ。
「なんか、かーちゃんが買ってきた服着てるやつみたいだな」
「!?」
な、なんだ……と。
「でも、俺もちゃんと選んだし、これは、お店の人からの店舗宣伝感謝分だしっ!!」
男性の街歩き用服が結構売れ出したとお礼のメールもいただいた。フレンドに一応なったのだ。ちょっと金の匂いのするフレンドだが。
「まあ、戦闘用はきちんと【持ち物】に入れておけよ?」
一瞬で着替えられるようにね。
「わかってる」
ブーツは買ったやつを優先した。案外金が掛からず大量の服を手に入れたので、今度は装備としての服も検討しないとなぁ。
「たださー、服って1品物だから部屋のストレージ圧迫がすごい」
「あら、じゃあ部屋にクローゼット置いたら?」
「え、タンスだけがストレージじゃないの?」
「クローゼットは服専用だけどストレージよ。私の部屋アイテムストレージ用タンスとクローゼットしか置いてないわよ。枠数が多いの」
な、なんと……。
「NPC売りクローゼットなら確実にストレージになるけど、プレイヤー売りはちゃんとストレージになるか確認してからがいいわよ。スキルなしで作った単なる箱もたまに売ってるから」
「おお……」
クローゼット必要だなぁとか考えながらカランと扉を開ける。
「こんにちは」
「いらっしゃい、セツナくん」
今日も麗しいアンジェリーナさんだ。
どう、どうですかアンジェリーナさん!! とは聞けないこの複雑な男心。気づいて欲しいけど、NPC、そこまで認識してないかも、で何も言えない。彼女のネイルに気づけない男子を責めたくなる気持ちはちょっとわかってしまう。何か一言でもいいから欲しいんですよぉ~!!
ただ今日は俺は言おうと決めてきたことがあるのだ。
本を持って、カウンターに行く。
「これをお願いします」
はーいとお会計してくれるアンジェリーナさんに俺は気合いを入れた。
「アンジェリーナさん、今度、空の国の図書室に行きませんか?」
また今度誘ってと言われたアレだ。
い、行きませんかお願いしますっ!!
だが、アンジェリーナさんはちょっと困った顔をした。
「あのね、ごめんね、私、実は……高所恐怖症なのよ」
終わったぁぁぁぁぁぁぁ!
「本当にごめんなさい、この間は新しい本ってことでワクワクしてついああ言っちゃったけど、考えてみたらたぶん耐えられないわ……」
「それは、残念ですけど仕方ないですね」
「よかったらセツナくんが読んで、どんな物があったか教えてくれる? もし本当に全然知らない物だったら、ちょっと許可をとって写本師を向かわせることも考えているの。国同士の話だから、国に掛け合ってとかになるかもしれない。私個人というよりも国とのやりとりね。図書館の司書たちとも話し合っての事業になるかも」
む、むむむむむ?
話がでかくなってきた?
「目録があったら是非目を通したいとも思うし……まずは見たことのない本がどの程度あるか調べるところからだけど」
「ああ……じゃあ、空の国の図書館の人に、目録があるか、地上でも本に興味がある人がいるので、もし知らない本が多かったら写本してもいいか、国同士のやりとりになるなら代表の人が来るので交渉をお願いしたいとかそういったことを聞いた方がいいですか? それとも、図書館の人がやる?」
「セツナくんがそこまで段取りしてくれるなら嬉しいけど。聞いたところによると、空の国の人の来訪者に対する気持ちはわりあい友好的だそうよ。地上の人たちよりね。だから、話が通りやすくはなると思うの」
「ほー。まあ、難しいことは考えずに、目録があるかどうかとか聞けそうな雰囲気なら聞いてみますね。反対に地上の図書館の本の目録が欲しいとか言われたら……」
「そうね、そうなってくると司書同士がいいかもしれないわね」
「了解です」
アンジェリーナさんと空の国に行けなくなったのは残念だけど、役に立てるなら立ちたいのでオッケーだ。
となると、早めの方がいいのかな?
あーでも、クローゼット問題も解決しないと、正直物が溢れそうでヤバイ。
発注から納入まで時間もあるから、先にクローゼットだな。
夕方まで本を読んで、夜は蜂狩り。器用さを上げるために頑張っております!!
そして、夜が明ける。家具と言えば、マルスさん。ベッドとソファをお願いした家具工房へGOだ。とっても久しぶりだ。
「こんにちは~!」
「ああ、久しぶりだね。セツナ君。いらっしゃい」
なんと、マルスとユリアだ。
「あ、お邪魔しました?」
「いやいや、大丈夫だよ」
「お邪魔だけど、許してあげる」
相変わらず勘違い女だなこいつ。
でもまあ、時間が惜しいので家具の発注をしたい旨を伝えた。
「クローゼットか。あの部屋に置くスペース……ああ、あのあたりに多少は置けるか」
「ちょっと予定外の衣装持ちになってしまって」
「収納率が高い方がいいやつだね」
「なら、マルスはうってつけね! 彼のスキルは本当に素晴らしいのよ」
褒めるユリアに照れるマルス。
「部屋の数値はこちらにまだ残っているから、ちょっと待っていてくれ」
そう言って奥へ1度引っ込んだ。
「マルスに注文に来るなんて、あなた結構お金稼いだのね」
「ふっ……アランブレに来たばかりの頃の俺と同じと思わないでください」
無属性レインボータートルエッグを売ったお金がまだある! 防具揃えてもまだ、かなり余裕があるのだ。
「なら私の実家からいい材木高く買い付けてもらおうっと」
「いやちょ……適正価格でお願いします」
足下見ないでくれ。
「ありました。これがセツナさんの部屋の間取りですが、変わっていませんか?」
多少鉢植えが増えているが、鉢植えはタンスの上にも移動できるしいけるはず。
「大丈夫です」
「それでは……材木と意匠はせっかくなのでベッドと一緒でいいですか?」
「はい! お願いします」
「なるべく入るクローゼットがいいですよね……スキル使っても?」
「お、お値段と相談で……」
すると、にっこり恐ろしい金額を言われました。
べべべ、ベッドより高い。はっぴゃくまんしぇる……。
「その代わり、たくさん入りますよ」
冷や汗だらだら出そうな状態ですよ。俺の財布がすっからかんになる。いやでも、最近、ハチの針がお高く買い取りしてもらえるし……くっ。
ピロリに聞いたら、その性能で大きさで800万シェルはお買い得過ぎるから自分も欲しいと言われた。それくらい良いものらしい。
服しか収納できないが、くっ……懐に余裕があると、人はつい……つい……。
「お願いします」
ユリアがにやりと笑った。
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