265.ヴァージルコーデコンテスト
「セツナ君。今度ヴァージル連れてきてよ」
「あ、それ、俺INしてるときにマジお願いしたい」
NPC来るの?
「フワフワちゃんが弓師連れてきてたよ」
「ヴァージルのコーデしたらさ、めちゃくちゃ宣伝になるし、頼む!」
「いやいやいや、アレを着飾らせて野放しにしたらどうなるか……」
怖い怖い。
「ヴァージルは、本人があずかり知らぬところでひと儲けできるレベルのヤツだよ。絶対面白いと思うんだけどなぁ」
最初のお店のお兄さんがうーんと唸りだした。
「わかる、俺、最近服作るとき、ヴァージルが着ることを想定していたりする」
「うわ……やば、インスピレーション山盛り降りるじゃん。そうか、自分が着たいものじゃなくて、ヴァージルに着せたいもの……」
「なる……」
なるじゃないんだよ。
ちょこわい。
とつぜんみんな、真顔で動き止めた。
ガチ思考の海に沈んだやつだ。
「うわあ。この人数の動きを止めるなんて、ヴァージルすごいわ~」
思考に浸ること10分ほど。俺はピロリと店の商品見ていた。
「よしこうしよう!! 我々は、ヴァージルコーデコンテストを開くっ!!」
あ、これ、パーティー会話してた??
「ヴァージルコーデコンテストの審査員やってよ、セツナ氏!」
「頼む! あわよくばヴァージル連れてきて!!」
「俺になんのメリットもないっ!」
「ヴァージル用に作った服全部あげるから!」
「へそとか出てそうだからヤダ!」
俺の全力の拒否に、ぴえってみんながおののいていた。
「奇抜な服だとヴァージル普通に着ないよ絶対」
NPCから拒否されるだろう。あと、ヴァージルのために作るとか、絶対顔に負けない派手衣装になるだろう。
「仕方ない、独自開催するか……」
「表の露店の子たちも誘う?」
「そうだな、服飾スレでイベントしようって誘おうぜ。普通の服ならいいの? セツナ氏」
「ええ……普通の服ならヴァージル持ってるだろうし、誘えないって」
「あ、じゃあこういうのは? 来訪者の世界の一般的な服を試してみないと誘う。つまり、あちらにある服でコーデ」
ピロリの提案に皆が目を見開く。
「いいねーっ!!」
いいのかなぁ?
「ヴァージル着てくれたら嬉しいけどまあ、セツナ君の好感度下げてまですることじゃないから。んで、連れてきてくれて、ヴァージルが着てくれたら、作った服はセツナ君にプレゼントと」
「大量普段着ゲットチャンスじゃない、セツナくん!」
乗せられてるような気がするけどね~。
「まあ、話してはみるけどさぁ。NPCってそんなことまでしてくれるの?」
「どーだろねー。運営に漏らしておいたら行くようにAIいじってくれるかも?」
後日、開催するよと誘われ、ヴァージルに一応聞いてみる俺。ひと狩りしたあとクランハウスでご飯を食べている時のことだ。
「そうだ、ヴァージル、来訪者の服装って興味ある?」
「服装?」
今日はカツ丼ぱくついてる。お刺身も美味しくいただけるようになったヴァージルさんだよ。カツ丼と刺身って、贅沢だなぁ。
「アランブレに来訪者のお店があってさ、俺たちが以前着ていた服を模した物を多く作ってる店がまとまってあるんだけど、よかったら見に行く?」
内心、面倒だろう、断れ!! と思っていたが、ヴァージルって俺の提案あんまり断らないんだよね……。
「面白そうだね、行ってみようか」
後ろでピロリがガッツポーズしてる。
ちなみに結構広まってるらしいが、親衛隊、今日は出入り禁止になりました。あと、人が多くなるとチャンネルわかれちゃうから、後日きちんと俺が、そう、俺が!! 動画化することになって、話がついているらしい。
なぜ俺の許可なく話がついたのだ? ピロリさん……。
でもちょっと見てみたい気もする。
しかし、ヴァージルに似合った同じコーデを着る勇気はないぞ。
「夜中狩りしてたから眠いだろ? ちょっとだけな」
一応周囲に念押ししておいた。
クランメンバーはもちろんついてくるのだ。
施設内に入るのは禁止されてるけど、周りにいるならいいんでしょうばりに、建物の周囲に女子おおっ!! 多すぎるんだよお前ら、1発でわかるんだって。
「へえ、アランブレはあまり出歩かないから、初めて見たよ」
「来訪者が多くなってきたから建てたらしいよ」
入ってすぐの女の子向けショップの店員さん、みんな中身入りだ。店前まで来てめっちゃ、ヴァージル見てる。
「いらっしゃーい」
店員さんたちがずらりと並んでお待ちかねだ。なんか今日はマネキンを1つの店に持ち込んで、そこでこれが俺のオススメコーデ!! と推すらしい。
「あー、ヴァージル。知り合いの来訪者の服屋さん。ほら、俺の今着てる服、これ、作ってくれた人たち」
「シンプルな物が多いな。へえ……」
「よかったら試着してみてください。奥に試着室がありますから!」
といいながら俺をチラチラ見る。わかってるって……。
「ヴァージル着てみない?」
「面白そうだね」
すると、店員さん恐ろしい速さでマネキンの1つを丸裸にしてヴァージルに渡すのだ。
「どうぞどうぞ~」
そこからは、もう、おおーしか言えなかったよ。
ピロリがめちゃくちゃかっこいいポイントを伝えるので、最終的にヴァージルが照れた。
「ピロリは……男が喜ぶポイントを的確に突きすぎるな……」
中身がね、アレなんで!
てか、販売員、なに照れたヴァージルにキュンとしてるんだよ。お前ら……。
「まー、ファッション街歩き用だからなかなか着るのをためらうかもしれないけど、気に入ったやつあったら俺が買うよ、いっつも世話になってるし」
「いやいや、ヴァージルさんに着てもらえるならお譲りしますよー。正直イェーメールの聖騎士団長さんがうちの服を着てくれたという話なら、店に箔がつきますし」
商売人たちがニコニコしてた。
「アランブレでも、みんながこういったファッションを取り入れてくれるかもしれないですしね」
「そうなったら来訪者冥利につきますねー」
「こちらの世界で楽しくさせてもらってますし」
「そうそう、住民の皆さんとこうやって仲良くさせてもらっていることが嬉しい」
NPCよいしょを始めるプレイヤーに、ヴァージルは何か思うところがあったのか笑顔になり、俺を振り返った。
「それじゃあセツナに選んでもらおうかな」
えっ……。や、やめてくれよ。店主さんたちの笑顔がこちらにむけられる。
コンテスト審査員俺になっちゃうじゃん!!!
「ピロリの方が趣味がいいよ、ねっ!」
「ちょ、セツナくん……ま、まあ仕方ないわね……」
俺には荷が重いっす、ピロリ姐さん!!
結局ピロリが2着選んだ。
「ヴァージル色が淡いからね~薄い色も似合うわよねぇ。いやーイケメンは見ていて嬉しいわ~」
とか言いながら結局ノリノリで選んでいたよ。
参加店舗は10店舗だったらしいが、今回はありがとうってことで他の服たくさんもらいました。わ、わーい?
「セツナくんが着て動画に上げて欲しいなっ!」
「おん……」
需要はあるのか?
店舗名とプレイヤー名、得意な物などの、完全宣伝動画になった。もらったお礼ができたならいいんだが。
親衛隊からは、ヴァージルの着た姿を一時停止してピロリからのかっこいいポイントも別に音声とって付け加えてと、ピロリの編集が大変好評でした。
第2回はお断りしました。
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