264.ショッピングモール
店は、3つの入り口があり、入ったところは広いホール。そこから左右に道が分かれる。左へ行ってすぐにピロリオススメ女の子の服ゾーンだ。
他にも来訪者がたくさんいた。
女の子のアバター派手だな。
「服のためにモンスター狩ってる子も多いわよ~。ほら、アバタースタイルいいから。現実で服を着るためにダイエットって限界あるでしょう? せめてゲームで派手な服着たいんだって子多いのよ」
「あー、現実では無理だけど俺も聖騎士の礼服着てアンジェリーナさんに見てもらいたかった」
「あれね!! ものすごいかっこよかったね。今度コスプレで流行りそう!」
「リアルで着こなすのきつそうだけどなぁ。背も、肩もそれなりに必要なのに、そこまでごつい感じじゃないのって筋肉つけられる? あれ」
「それはそう。バランスが神がかってるのよね。ゲームのアバター」
理想と現実って大変。
「あ、見えた。ほら。あのあたりが男の子のおしゃれ着エリアね。それなりに買っていく人はいるわよ。ただ、男の子専門はなかなか難しいから、ここら辺はペア売りが多い」
「ペア……」
「おそろコーデ? ゲーム内カップル用」
「カップル……」
俺はまた深淵を覗くことになるのだろうか?
「やあ、ピロリさん。て、セツナ君だ。いらっしゃい。え、2人でコーデするの?」
「嫌ですよ」
「ちょ、セツナくん、私傷ついちゃうなぁ~」
嘘つけ。
声を掛けてきたお兄さんは緑色の短髪に黒のスラックス、白いフード付きトレーナープラス濃い緑のカーディガン? ええ……普通に外歩いてそうな格好だ。
「めっちゃ……普通に売ってそう」
「いいっしょー、顔イケメン仕様だから似合うっしょ。俺の店は、リアルにもありそうな服をコンセプトにしてるから。あ、こっちは防御力ほぼゼロだから気をつけてね。向かって左側はちゃんと防具だよ。厳ついの多いっしょ」
そう、左側にはフードとか、生地の厚そうな皮のパンツとかも売ってる。
「なかなかおしゃれ着だけだとテナント料払えなくてさ。今日は何をお探しかな? それ、カエルちゃんパンツだよね。こっちの茶色の皮の方が防御力上がるからオススメだよ。【鑑定】持ってたっしょ? 見てみるといいよ」
お初の人も俺のスキルとか普通に把握してるのがちょっと怖い世界。
ソーダの動画どれだけ有名なんだろう。みんな見てるレベル? それなら登録者数もうちょい行ってもよさそうなのに。
「ラフな街着でおしゃれなのがいい!」
「いーねーっ!! 任せて、俺コーデする」
「いやぁー、私がやるのよお」
お店は間口が180センチくらいでとても狭いが、奥行きは2倍くらいある。その両側に棚とハンガーを掛けるところがあるのでかなり広い。そして、間口が狭いと言うことは、俺たちの会話はすぐ隣にも筒抜けである。
「セツナ君っ!! こっちこっち。ねえ、せっかくファンタジーっぽいゲームしてるんだから、こういったかっこいいの着てみたくない!?」
そういってお隣の店から出てきた人が持っていたのはなんと、軍服っぽいやつ。
あ、これ、プレイヤーが着てるの見かけたことある!!
「制服ってかっこいいよぉ!! ほらこれ、この棚に飾ってるのみて! 騎士服っぽいのもあるよ。さすがにゲーム内既存騎士服は作れなかったんだけど、ちょっと色違うのとかあるからどう!? 着てみない!? ヴァージルと色違いしよう!!」
「ヴァージルと色違いは引き立て役にしかならないからヤダっ!」
俺の言葉にいつの間にか周囲に集まってたプレイヤーたちが、あー……と声を漏らした。
みんな、わかるーって顔してる。
「リアルよりコスプレしやすいって人気なんだけどねー」
「ヴァージルにこれ着せてみてえっ」
「やめろよ……あいつなんでも着こなすだろう。俺たちのアバターが可哀想になるわ」
ぼそぼそ話し合っている。うんうんって相づちだらけだ。
「騎士服普通に人気だけどね。カレピと一緒にゲームしてるって子が、着せ替えして遊んでたわ」
「騎士服、リアルで着るとかまず無理だからなぁ~ほらこのペリースとか」
そういって騎士服の半分マントをペラりとしていた。あれ、ペリースっていうのか。覚えて……おく必要もねえな。忘れよう。
「ドルマンもいいよなー。かっけえ」
話が始まると自分たちの望むかっこいい服に行くらしいので俺はすすすと離れて店の中をちょいちょい覗いて回る。
ジーンズ生地のパンツもある。面白いなぁ。
とはいえ、ファンタジー世界に来ているので、別にリアルの服みたいなものじゃなくてもいいんだよなぁ。お店が結構あるので悩む。その半分はやはりファンタジーな服だった。
と、後ろからちょいちょいと袖を引かれる。
「セツナ氏、チャイナ服はどうアルカ?」
糸目のお兄さんが……チャイナ服推してきます。
「女の子が着てたらいいなっておもうけど、男のチャイナ服にはなんも……と思ったけどかっこいいっすね」
振り向きざまお断りしようとしたが、チャイナ服かっこよ。なんというかこー、ひらひら系のやつ。シャツにパンツ系のカンフー服じゃないやつ。暗器とか袖に隠してそう。
「面白いですね。こんなのまで作れるんだぁ」
「いっぱいアルヨ。服飾も沼アルネ」
口調よ……。
「型紙おこしをリアルでして、申請したら通ったりするからね、このゲーム」
「バックにリアル洋裁和裁してる人がついてるらしいよ」
「ただ、この服の権利俺らにないの、リアルで」
「リアルとゲームの繋がりが怖い」
「刺繍の模様もすでにある物は通らないけどないと通るんだよ。そしてその権利はゲーム会社の物と」
「怖い怖い」
「一応そこら辺、最初に全部説明されてるけど、絶対飛ばしてるヤツいるよなー」
「裁判負けるんだよ。フフ」
運営の金の稼ぎ方か!?
まあそんなことを話しながらも俺は黒いパンツに青いシャツを選んだ。
「普通……過ぎない? え、こっちのベルトとか合わせてよ!」
「わかった、ベースはノーマルでそれでいいから、ジャケットこれにしよう。ゲーム的な感じもあっていいだろ!?」
フワフワ縁のついたフードがある茶色のジャケットなの!? を押しつけられる。てか商品じゃないの? 俺に着せられるってことは単なる持ち物として持ってきてるだろこいつら。
アバターってついやっぱりかっこよくしがちで、俺の周りに高身長イケメンがあれやこれや洋服を持って迫ってくる。
普通に街歩きするとき軽いヤツ着てたいんだけど!?
「まあ、これくらいはしないとねっ!」
最終的には、黒いブーツに黒のパンツ。青いシャツになんか金属ごてごてついた攻撃力の高そうなベルト。フードが大きめの濃い茶色のジャケットふわふわ付き。
「きゃーかっこいい! いいじゃない!」
しめて150万シェルくらい。高いっ! なんのプラスもないくせに、高いっ!! いや、ブーツは今まで履いていたヤツより性能上だからよし。
「男の子のコーデも楽しい~」
「ピロリ趣味いいからな」
「まいどあり。また買いに来てよ。ちゃんと性能重視のもあるからさ」
「今月のテナント代払える。助かる~」
「嘘つけ、お前この間ごっそり買ってったやついたろ」
「あれは先月分だよ」
テナント料お高いのかな?
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