259.そんなわけで船上の人たち
これにて空の国のイベントは終了。お貴族様とのやりとりも一段落。
と思っていたのに、だ。
ただいまフェリックス様と同船しております。
「大きな魚捕れたわよっ!」
「刺身ッッ!! 俺が料理スルッ!!」
「夜は酒盛りじゃぁ!! たぁんと持ってきたぞ!」
海の男たちが雄叫びあげてる。
「まさかそちらから誘われるとはなぁ」
ハザック親方がフェリックスを見ると、彼はソーダを見やった。
「彼らには今回かなり世話になっていてね。魔鉱石が欲しいという話も聞いていたんだ。セツナ君もいるし、どうせなら親方も巻き込んでしまおうと思ったんだ」
「新しい飛行船の部品やら発着場の材料に必要だって話もあったし、まあ渡りに船だった」
「新しい飛行船?」
俺が親方を見ると、楽しそうに頷いている。
「空の国との国交が回復したから、空の魔物の心配がぐんと減るんだよ。そうしたら大昔の航路も開通となる。なかなか遠くて行き来できなかった聖地の向こうへも行けるようになるだろう」
セツナ:
聖地の向こう……あれ、これ、Marchサーバーだけどんどん話進む?
ソーダ∶
いや、さすがにそれはないと思う。運営もいきなり全部出してはこないだろう。ウロブルだって開かれてないのに。名前だけの第7都市もあるしさ。ただ、聖地までは飛行船通りそうだよな。お前約束してるし。
八海山:
ソーダは早めに出す情報出していかないと、面倒なのが増えそうだ。
出し渋りって言われるんだって。
「今回は魔法足止めは案山子と柚子に任せようかなぁ~」
「了解なのですじゃー、師匠」
「お任せあれ、師匠」
2人に告げたのは、【魔術師】の師匠ローハン・アスラッテ。例の木魔法教えてくれた魔術師さん。
「みんなそれぞれある程度の魔鉱石が欲しいんだろう? なら数を捕らないとな」
「ちょっと採掘場の奥まで行ってみるか?」
「いや、あそこはかなり魔窟になっているので、今まで通りおびき出して3体くらいまでを相手するのが限度かと。何せ【属性看破】をして的確に属性を突かないといけませんからね。セツナ君の仕事が回らなくなりそうだ」
大忙しは嫌だな。どうせ船で2日寝るから、狩りが多少伸びても問題ないし。
ピロリが本格的に属性剣を作るらしく、その中で特に入手に困るのが無属性のレインボータートルエッグと、魔鉱石だ。エッグは手に入っているからあとはマジックストーン。
「デザインも色々と相談しているところなのよ。担当の小人族さんが趣味がよくってめちゃくちゃはかどったのよ~ただ、おかげでたくさん別の余計な素材集めがあるんだけど、かっこよくて可愛いを両立させるためなら仕方ないわよねー。頑張らなくちゃ」
なんでも白基調で髪色のピンクと藍色をとか、剣のお尻にふさふさとビジューをつけたいだの、鞘をデコりたいとかもう、とんでもないことになっているそうだ。
そんなに、自由度高いの!?
俺は作ってもらったのがかっこよくって大満足だけど、ピロリの欲望は尽きない。
「拙者もやがては妖刀と小太刀を持って、状況に応じて使い分けられるようになりたいでござる。付与剣は属性の効く敵には良いが、剣自体のポテンシャルは妖刀の方が高いでござる」
魔法使い組は、魔鉱石が武器だけとは限らなそうなので在庫として持っていられるならいたいとのことでみんなまとめてお願いすることにしたのだ。
この間もいつの間にかお代わりが来ていたので、その奥の狩り場とやらから今回も追加が補充される可能性が高い。心して掛からねばならない。というか火力が増えたからむしろたくさん長時間狩ろうぜって感じだ。
「なんか街歩き用のかっこいい服が欲しいんだよな……」
「ああ、先日言っていた意中の君に会う時か」
フェリックスさんが、悪気ない顔でニコニコ言ってくれるが、親方がなにぃ!? と声を上げる。
いや、親方だけじゃない。周囲で働きながらこちらの話に耳を傾けていた兄貴たちと海の兄貴たちがめっちゃくちゃ嬉しそうな顔でこっち向いた!!
「今夜の酒の肴は決定だな」
ハザックの親方にバンッと背中を叩かれる。
えーっ、NPCに恋バナ話してどうするんだよ。
海の上は結構暇だ。
1人で乗り込んでいるときは常にスキップボタンが出ていた。
今もあるが、スキップ0/7だ。これは全員合意のスキップじゃないとダメなヤツ。
NPCといいつつ、中に運営の人乗り移ってね!? 聞き方がガチなんだけど。直接聞いてこないんだよ。どこら辺の人なんだ? アランブレか? イェーメールか? 年の頃は? 出会ってどのくらいなんだ? 身長は? かなりの美人なんだろう、セツナはヴァージルのせいで目が肥えてそうだからな、って……。
直接聞かれたほうがマシレベル。
クランメンバーはそれをニヤニヤしながら聞いている。
騎士団から来てるメンツはまだ、多少の遠慮がある。だけど親方のところと海の男たちが、グイグイなんだよ〜助けて! スキップ1にしたのに誰も他にスキップしてくれん。
それでもまあ、服の話になったりもした。冒険者向けの腕の良い街の服屋をいくつか教えてもらう。
「来訪者の裁縫師もなかなかだが、アランブレはすべてが集まってくる街だ。いい腕のやつらはたくさんいる」
「屋敷には仕立て屋も来るが、たまに街を散策していると思わぬものに当たるんだ」
と、フェリックスとローハンが言う。
「アクセサリも、自分の能力向上には重要だからな。平民が利用できる腕のいい細工師もいくつか知ってるよ」
ローハンが名前を挙げると地図にポイントが打たれていった。
半蔵門線∶
アランブレの、出入りが透明の壁で止められるあたりでござるっ!!
八海山∶
出入りするのにクエスト必要だって言われてたあたりだな。ありがたい。
ソーダ∶
今回の船旅プラスしかねぇっ!!
柚子∶
大ラッキーなのじゃぁ〜!! そーちゃんナイスゥ!!
この間のパーティーで、魔鉱石を取り扱う大店をフェリックスに聞いてみたら、ならば採りに行くかという話の流れで始まったという。
たぶん、空の国攻略のご褒美。
「ふっ……男の服はこの筋肉!! 筋肉さえあれば誰もがイチコロさっ!!」
う、うわぁ……始まったよぉ……船のことがあると言って当番は酒を飲んでいないはずなのに、海の男たちが次々と脱ぎ始めたぁ!!
まただよ、暑苦しいんだよここ。
船長もヤメてっ!
ソーダも参戦すんなし。
うちで一番の筋肉ピロリさんはやだーと、ソーダをビンタしてました。ダメージ出てます。




