255.アンジェリーナさんお誘いの権利
結局空の国イベントでは、空の国エリアの開放と、ヒューマン種族クエストが見つかったということだった。
まあ、早めにということでスレにもとっかかりは空の国の図書室だということは流してもらった。すると、1日も経たないうちにヒューマン種族クエストのスレッドが進みに進んで、海の国の話まで広がっているそうだ。
俺はそこまで興味がないのでパス。
クランメンバーもそれよりは空の国のダンジョンへ行きたいという話になっている。
「1つは表に出てるのよ~! そっちは普通にダンジョンですって。島全体がダンジョン」
すでに見つけられていたフィールド型ダンジョンだそうだ。眠りの美少年と同じような感じで、雲に阻まれつつ、進んでいくと出会うことができる雲とクモ。
「空クモってのがいて、これからドロップする糸がかなり高品質の糸らしいわ。裁縫師がワクワクしてる。私も可愛い衣装お願いしちゃった。層の浅いところならソロ狩りも出来るから現在素材集め中」
「空の国の衣装、知力上げ商品で、着替えようか悩んでるッ!」
「オリンポスにいそうな格好でござるよね」
星が近いからより神に近いみたいな思想はありそう。
「耐久はそれ以上下げないで欲しい」
「案山子がなんだかんだで被弾したら死ぬ確率トップなのじゃ」
「当たる面積が多いからっ」
そんな話をしつつ、案山子のご飯を食べていた。クランハウスでの出来事である。
「次のクラン狩りは空クモ狩りにしようか。その前に、秘密のダンジョン探してもいいし」
「その後に、だな。クラン資金貯める方が先だ」
クランのお財布、八海山からの厳しめの声に、ソーダは肩をすくめた。
「セツナ、今日は?」
「アンジェリーナさんのところに」
「本読みに行くなら空島巡りしようぜ」
「アンジェリーナさんに空の国の図書室の話するからダメー!」
絶対譲れないことなのでお断りしました。
みんながやれやれみたいなポーズ取ってたけど、アンジェリーナさんより優先するものなんてそうそうないぞ。
カランとドアベルを鳴らして入ると、定位置に我が女神が鎮座している。
「こんにちは」
「いらっしゃいセツナくん。今日は特に仕事の方はないわね。もう少ししたらいつもの図書館での修復のお仕事があるわ」
「はい! 起きたら顔を出すようにします。今日は空の国のお話です」
「ああ、この間和解したと聞いたわ。よかったわね。平和が一番よ。もうすぐ飛行船もいくつか解放されるらしいわ」
お、空の国が空の魔物を退治してくれたってことかな?
「いいですね、どこに繋がっているんだろう」
「たぶん、お隣の第12都市ハカカチャね。飛行船さえあればすぐなのよ。大きな亀裂のそばに昔の発着場があって、そこを整備し直すって話を聞いたわ」
おおー。
ハカカチャか。楽しそう。
「それで、空の国がどうしたの?」
「あ、はい。空の国に図書室があって、結構な蔵書の量だったんですよ! 好きに見てもいいって言われたから、興味ありますか?」
「もちろん!! 今まで見たことのない本とかあるのかしら。ああ、行きたい。行きたいけど……ううん、今ちょっと忙しいのよ。また今度誘ってくれるかしら?」
さそっ!!!
誘っていいのっ!?!?!?!?
「わかりました。俺の方はいつでもアンジェリーナさん優先なので!!」
そう宣言して、今日はどっぷり本を読むことにした。空の国関連で忙しかったもんなぁ~知力自動上げになるし、本を読むのはいいことだ。しかし、400は目指せそうだけど、800はなぁ……山が高い。
といいつつ、400なんてと言ってたし、コツコツ読んでたらいつの間にかはありそうなのでそれを狙うしかないなぁ。
夕方17時には店を出る。それ以上はダメです。ミュス狩りでもしようかと思ったが、今あのフィールドは空の国へ行く人たちであふれかえっているのだ。
ならばソロ狩り。ビッグキラービーさんと戯れる。本当は付与したいけど、付与の素材集めに手間がかかるし、調合に金が掛かる! 結論、素細剣で挑むことにした。
【突き刺し】まくっていたら、スキル生えました。【連続突き刺し】。おお? 何かと思ったら。2匹いたら流れるように2匹が細剣の刀身に突き刺さっていた。
1匹避けつつやっていたので助かる。最大3匹くらいがうろつくのだ。
そして、5匹ほど刺さったところで最初の1匹が死ぬので、いつまで経っても5匹手元にあるかないかみたいな状態でいい感じだ。
「ひと~つ刺しては女神のため~」
夜になってもビッグキラービーのみなのがまたいい。ここのマップは本当に俺との相性ばっちりだった。そうやってたんまり溜めたハチ針を持って行くところは、イェーメールだ。
今回は【持ち物】を整理して収容量を上げ長々狩りをしていたので、ゲーム時間内11時。飲兵衛ストリートの店もちらほら開いている。
てかこの人たちの仕事時間短くね? 夕方になったら酒屋に行くってのに。
「よ、セツナ!」
「こんにちは~」
そこら中から声をかけられるので、それに応えつつ、モロンの親方の店に辿り着く。
「よお! セツナどうした」
「また針を引き取ってもらいたくて~」
「助かる! あと少し足りなくてな」
「こちらこそ」
と言うわけで取引成立。わあ~たくさんだ。
「それにしても、こんなにたくさんの針、何に使うんですか?」
「ああ、これで作るのはジャベリンなんだが、ほら、投擲用の槍だよ。なんでもファンルーアの方に出るとんでもなく強いモンスターがそろそろ活動時期になるらしくてな。ある程度弱らせるまで近づけないタイプのやつだから、包囲してこいつを一斉放射するらしいぜ」
とんでもなく強い、か。
「どのくらい強いんですか?」
「城の騎士団と、各地の聖騎士団が協力して倒すくらい強いらしい。冒険者にも高額の依頼料で討伐隊に参加してもらうって話だな。詳しい時期は知らねえが、このジャベリンの注文は城からのものだ」
協力型超大型レイド、とか?
「投げたら終わりですよねこれ……」
「そうだなあ。だが、最初は魔法も効かないらしい。とにかくこれで相手の力を削いで削いで、ようやく戦うことができるって話だ」
えー、どんなことになるんだろう?
「1年に1度出るか出ないかって言われる大物だから、セツナも見に行くのはいいけど、あまり不用意に近づくんじゃねえぞ。一緒に酒が飲めなくなっちまうだろ」
ひげもじゃのウインクはなかなかの破壊力でした。心配してくれてありがとう。
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カレーはスタッフと一緒に美味しく食べました。
案山子がカレーを勉強中。




