253.大団円?
とはいえ、ここからはほぼ運営の方針で話が流れていった。
実際にはすでに無翼の王は地上の王と通じており、袂を分かった王子落下事件の真実解明に協力することを約束し、現在の有翼の王排除からの、国交復活などはすでに裏で約束がされていたそうだ。
ある程度有翼を叩いておかねば反発も激しかろうと、来訪者が竪琴の防御を無効化するために潜入、協力することで、今回の話に1枚噛むこととなった。
王宮内のホールでは、今、地上の王の代表である騎士団長が無翼の王、アヴァクバラ王と握手を交わし、ぼろっとした有翼の戦士たちと、それなりに戦って傷ついた地上の騎士たちが並んでいた。
由香里さんはそんな王と騎士団長のすぐ後ろでニコニコと笑顔で立っていた。
『ほら、セツナ叫ぶぞ』
ええ? と思っていると、由香里さんが声を上げる。
「ケルムケルサ万歳! テラエトゥーラ万歳!」
すると、それに来訪者が賛同する。
「ケルムケルサ万歳! テラエトゥーラ万歳!」
何度も繰り返されるそれに、NPCたちも声を合わせた。
そしてまずは傷を癒やすこととなった。なるべく来訪者がどちらの陣営などと関係なく回復をかけてあげてくれと、話が回っていた。
『来訪者は、目の前の楽しみに飛びついていくと思っていたのだが……』
パーティーチャットでヴァージルがつぶやくと、アランもそれに同意した。
『まあ、そういったのが多いけど、国と国との戦いとなるとね』
こちらとしてはどちらの国も滅んではいただきたくない。新しいフィールドが出来るから。
『さて、騎士団が引き上げ始めた。俺たちも帰るよ。みんなも……ほどほどに』
『ヴァージルさん、お疲れなのじゃ』
『またねッ! 気をつけて!!』
『帰るまでが遠足だよヴァージル』
『えんそく?』
俺の言葉に王宮の外で首を傾げているヴァージルの姿が思い浮かんだ。
『まあ気をつけて。お疲れ様。アランも、ご家族怪我なかったかな?? お大事に』
2人がパーティーを抜けると、パーティーチャットは遠慮のないものになる。
『セツナどうすんの? 豆の木生やしたやつ』
『知らせたらどうなることやら……でもちょっと気になることあるんだよなぁ』
ヴァージルとアランが入っていたのでアライアンスは組んでいないらしく、クランチャットと変わらないものとなる。
『気になることってなんだい?』
外でせっせと回復しに回っているらしい八海山からの質問に、俺はステータスウィンドウの知識の項目を検索する。
『アンジェリーナさんのところで本を読んでいたら、』
『せっちゃんまめ男なのじゃ……平安時代はモテモテじゃよ』
今だってモテたいよ!!
『アンジェリーナさんからオススメって言われて借りたやつに、海からの地上からの空って順番で人が移り住んでいったらしいって記述があって』
『また、なんか続き物の気配が』
ソーダが隣で構える。
『地上こそ楽園、空を制しているから覇者みたいなことを言ってる人が驕っているってあった。海、腹に一物ありすぎない?』
『ありすぎでござるね……』
『豆入ってたのも乙姫様の宝箱だったし』
異物混入してた。
『それはどこまで言うか、だなぁ……』
八海山の困惑声色。
『言ったらセツナくんの所業バレちゃうしねっ』
それな! それ困るな!
『まあ、そこは、みんなわりとウェルカムだったのじゃ!』
『ちなみに拙者の宝箱にも入っていたでござるね、興味なくて突っ込んでるだけだったでござるが』
半蔵門線のにも入っていたのか。
木魔法持ちの宝箱に混入される仕様? 【グローイングアップ】習得は必要ないと?
『まあそこら辺は……スレですりあわせかな。最近てんこ盛りでさあ~動画化おいつかねーよ!!』
『人雇うしかないわねっ♪』
『ピロリの方と動画分けようぜ』
『いやというよりダメかしら? うちの動画はハニーが全チェックして編集してくれてるから』
ピロリの配信には彼女目線の主観がごりごり字幕として入るらしい。それが名物でもあるという。
『八海山……』
『うちは市場の変動と買い取り状況などがメインだから。まあ最近はレイス狩り動画とかもあげてるけど』
経済系配信??
『うちはお料理番組だからダメッ! 材料から取りに行くタイプのッ!』
『私もガラス工の過程ひたすら流すだけの、余計なモノカットしただけのやつだからダメなのじゃ。動画編集にかけてる時間はないのじゃ! 家事をおろそかにするわけにはいかぬのじゃ!』
みーんなから断られて俺を見るけど、ムリだよ。
『うちはヴァージルパイセンショート動画チャンネルだから』
『とりま重要なヤツだけとっとと上げるかぁ。面白いのが上げられない……』
『重要なヤツは、他プレイヤーからしたら十分面白いんだろうけどね』
『セツナの案件が微妙に面倒なんだよ。ここから察せられたら困るとかでピーーーーって入れないといけないし』
『頑張れ』
応援はするよ!!
ピーの検証班もいるらしい。
アンジェリーナさんの秘密だけは守りたい。
『ワールドアナウンスの情報ギルドの話は全然出てこないし、また隠してるんじゃないかって言われてる』
『あれ、まだ見つかってないんだ』
俺がしれっと言ってみる。
『まあ時間の問題ではあるだろうけどな。プレイヤーまた万単位で増えてたぞ。……とまあ、それは置いといて。豆の木問題』
『プレイヤーになら別に話してもいいけどー』
『また名前を伏せて察してもらうかぁ……』
「ということで問題はないだろう。それでは、1ヶ月後そちらへ伺います」
「こちらも、お迎えする準備を整え、お待ちしております」
再び固い握手を交わした王たち。
《ゲーム時間内1ヶ月後、アランブレ王城内で復交のパーティーが開催されます。今回の貢献度によって入れるエリアが変わります。後日メールが配信されますのでご確認ください》
パーティーだってー。これ王様とかも来るヤツだ。タイミングが合えば行きたいな。
『そういや貢献ポイントの通知なかったな』
『どのくらいなんだろうね~』
解散となって、プレイヤーたちは三々五々と散っていく。
俺たちも出てみんなと合流するかと思っていると、声を掛けられた。
「マスターさん! お疲れ様でした」
駆け寄ってきたのは由香里さん。
衣装がなんかこー、俺たちのとちょっと違うんだよな。貴族の資金投入されてる? もしかして。
ブックマーク、評価、いいね、感想、ありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
自首するのはちょっと勇気が必要ですよねw
訂正を入れました。
228話目、ヴァージルが聖地に行く話をしているとき1年に1度いくとなっているのを、3年に、にしました。
じゃないと4ヶ月リアル時間ごとで忙しないので。
直さねばと思ってて忘れていた!!
ということでリアル時間1年毎のイベントになります。
つまり今そこら辺を書き始めようとしているところでした。
以上ご連絡。




