232.ハンマーヘッドシャーク
選手控え室まではピンクカメは入ってこられないらしく、俺たちは辺りを見回しながら作戦会議だ。
『ミッションだからやらないと失敗判定でしかないんだよな。だからやるのはやるんだが……勝ってもなんかろくなことにならなそう』
『乙姫様、強いのが大好物って言ってるらしいでござるからね』
『食べられそうだな』
『そこら辺最大限に警戒して行こう』
幸い水の中だが呼吸に問題はないし、歩くのも水圧的な違和感はない。ただ、意識して水を掴もうとすれば掴めるのだ。
『これ、雷禁止?』
『あー……怖いな』
『でも、動きも呼吸も問題ないし、1度やってみる?』
『やるなら初回だな。相手が弱いうちに試し打ちしてみよう』
ということになった。
結果。
「死ぬ死ぬ死ぬwwww」
「自力ポーションしてくれ。まだしびれてる」
「雷禁止でござるwww」
「セツナくん、ステイwww」
びりっびりになった。付与剣で【紫電】やったけど完全にアウトだった。相手も倒したけど危うく共倒れでしたよ。すまんな、スズキさん。
雷だめならなににしようかなぁ。炎か。【螺炎】でもしようかな。渦巻き状に相手に炎が行くやつ。
「ちょっとぉ~客席までしびれさせて、アウトよあなたたち~。私がとりもったからなんとかなったけどぉ、あなたのその物騒な剣は使用禁止になったわよ!!」
「えーっっっ」
細剣封印されてるっ!
これ、魔法使い無理くさくね?
あと、ぎょろちゃん出そうとしたけど出せなかった。そこは水の中判定でアウトのようだ。
「さ、2回戦が始まるわよ!」
ピンクカメに促され、俺たちは闘技場の門をくぐった。
コロッセオよろしく円形闘技場になっており、たくさんの魚類イカタコ貝類まで、それは大盛り上がりで客席を埋め尽くしていた。
「赤コーナー!! ソーダと愉快な仲間たち、総勢5名!!」
ボクシングなんだよなぁ……。
「青コーナー!! その様相に誰もがびびるっ! ハンマーヘッドシャーーーーーーク!!」
おお!! シュモクザメだ! ダイバーに人気で基本人を襲わないで逃げてくやつ。だが、ここのハンマーヘッドシャークは頭? をブンブン振り回してやる気満々である。
俺は細剣禁止になったからダガー装備になりました。さてどうしようかなぁ~。
「両者準備はいいかな? よし、はじめっ!!」
カーンとゴングがなる。
ゴングなんだよなあ。
ハンマーヘッドシャークが頭をブンブン振り回しながらこちらへ一気に距離を詰めてくる。うん、早いんだよ。こいつら。海だから、泳ぎが得意な奴らには敵わない。
「【投擲】」
半蔵門線が網を投げる。
お魚には漁業で対抗ですよ!!
「【沸騰】」
細剣が使えないとなると、この生活魔法マイスターが爆誕する。効果が倍だから、沸騰結構ダメージでかいようだ。ハンマー部分を狙ったらめちゃくちゃ暴れた。
「あづいいいいあづいよよおおよお」
「【ひと突き】」
そこへピロリのダブル【ひと突き】が入る。
もだえているうちに網が取り払われていたが、きっちり決まった。さらにソーダが盾でドンと押し返す。
「ぎゃああああひどいひどい」
ソーダの盾トゲトゲついてるんだよね。イェーメールの鍛冶屋たちがアップグレードしてくれたらしいが、かなり痛そう。
頭をブンブン振っていたが、ハンマーヘッドシャーク、ようやく落ち着いて目をギラギラさせている。目、小さいな。
「ひどいひどい。ひどいよおおお!!」
そう言って再び一気にこちらへ進んで来た。
「【一身集中】」
ヘイトを集めると同時に、一時的に防御力も増すらしい。その代わり盾を構えることしかできなくなる。
どおんと、辺りの水を思い切り震わせるほどの振動。ソーダの盾にハンマー部分が入った。先ほどと違うのは、そのハンマー部分の色。まるで鉄製のように黒く変化していた。さらにそのまま上に振りかぶり、盾に向かって振り下ろす。
ここまでが先ほどとは考えられないほどのスピードで、完全に見ているだけになった。
「【沸騰】」
再び生活魔法だが、先ほどのように熱いと暴れない。
「ハンマーが硬化してる!」
スキルか何かだろう。暑さを感じなくなったようだ。
「【なで切り】」
日本刀のスキルが、ハンマーヘッドシャークの尾部分を切り飛ばした。
「ぎゃあああああ」
叫びはするが、ソーダを執拗に攻めるのをやめない。
「【冷凍】【沸騰】【冷凍】」
「セツナくん!?」
切った尻尾部分をさらに切ろうとしていたピロリが驚きの声を上げる。
「【沸騰】!」
その瞬間、ぴしっと嫌な音がした。
俺たちにとっては最高の音。
ハンマーヘッドシャークのハンマーにヒビが入った。
「ぎゃあああ!!! 俺の、俺のハンマーがっっ!!!」
ぎゃあと叫びながら会場中を泳ぎ狂う。
「ハンマーヘッドシャーク戦闘不可により、赤コーナーソーダと愉快な仲間たちの勝利!!」
カンカンカンとゴングが鳴り響く。
「あんたたちすごいじゃなーい!! これで乙姫様の覚えもよくなるわぁ♪ ありがとう。ささ、次で最後よ。ほら、予想通りあいつが勝ち残ってるわっ!!」
半魚人さんがギロリとこちらを見ていた。
魚顔、なんかすごいな……。
口の辺りから泡がぼこぼこ漏れていた。
強者感がすごいっ!
そして、再び俺たちのパーティー名が呼ばれる。
「トライデントヤバイヤバイヤバイ」
「八海山が避けきれないから、頼む」
「1発なら自分で回復するが」
ただ、何度も喰らう羽目になる。
半魚人さん、このエリアを縦横無尽に泳ぎながらトライデントをこれでもかと投げてくるのだ。しかもなんか手元に戻るスキルがあるらしく、外せばすぐさま取り戻し、少し泳いで再び投げてくる。
俺たち翻弄されっぱなしだ。
「とにかくあの泳ぎを止めないと!!」
そうは言われても、凍らせてもものともせずに進むのだ。【沸騰】も泳ぐスピードの方が早くて効いていない。とにかく泳ぎを止めないとどうにもならない。
半蔵門線の投網はトライデントにより無残な姿となりました。
俺たちのHPが徐々に厳しいものとなっていく。
海の中というアドバンテージがキツい!!
水の中だからね、試してみたよもちろん、リリさん召喚を! だけどダメだった。リリさんは来てくれませんでした。たぶん呼べない空間なのだろう。ぎょろちゃんも出てこないしね。
さてどうすればいい!!
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雷はダメだった!!




