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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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230/362

230.お漏らしは誘導の香り

 魔法使い2人組が特訓という名の監禁にあっている間、こちらは平和に過ごしておりました。読書に興じたり、ミュス狩りしたり。ピロリがイェーメールでお値段を聞いたら俺よりさらに倍率ドンだったらしい。ご愁傷様だ。それでも、付与楽しみだと金策に走っているそう。


「クラン資金はガンガン貯まってるけどな」

「酒の運び屋がでかいな」

 八海山の言い方はちょっと語弊があると思う!


 柚子と案山子がいないので、今日は5人で運び屋3往復してる。2人いない分2回運んでいたら、もう1回お願いできないかと店を預かっている店長さんに言われた。

 最近はドワーフだけでなく他の種族のお客さんも増えてきたそうだ。

 それは良い傾向。

 

 てことでもう1度ローレンガに。

「しっかし、ローレンガも落ち着いたな」

「にゃんにゃんパラダイスは大盛況でござるよ」

 あ、俺もまた行こうと思って行けてない。


「結局狩りに便利な街を拠点にしてしまうんだろう。移動は厄介だ」

「クランハウスあるから、アランブレに帰るようにしてるだけだしなぁ」

「ウロブルに部屋持てたから、ウロブル拠点にする子も多いわよ~」


 【持ち物】にニホン酒を詰めながらの雑談だ。周りにNPCはいないので好き勝手してる。

「メイン進めようとしても、ソールだっけ? 学者さんが見当たらないらしいわ」

「学院に常駐してる奴らが見つけられないなら、しばらくは無理だろうな」

 学院の方もかなり調べ尽くされてきているようだ。


「貸本屋さんに関連するようなクエストがあったら教えて」

「貸本かあ。まあ、見つけたら言うよ」


 貸本屋は横の繋がりがしっかりしていそうなので、どこの都市でもお助けしたらアンジェリーナさんの耳に入るだろう! 積極的に入れていきたい。


 詰め込み作業が終わり、それではと移動する。今回も限界ごりごりまで詰めてきたよ。


 店長さんにたいへん感謝をされ、その後どうするかの話。特に何もないので、それでもウロブルも気になるので行ってみようかなぁ。


「もうすぐ夜だし、俺は、『湧き水亭』に行く」

 ソーダが腹を押さえて宣言する。

「あ、私も行く-!!」

 2人が行くとなれば結局5人で移動。この間俺食べ損ねたし。


 渡し船で移動する。最近はもう、ただでいいとは言われなくなった。解放特典消えてきたのかな? みんな基本的に親しげではあったが。


「へいらっしゃい! おう、お前らか。空いてる席に座ってくれ」

 もう常連気分だ。そんな言うほど来てないけどね。


「今日は何にしようかなぁ~」

 がっつり定食お品書きが並んでいる。


「私は、チキン南蛮定食!」

「俺はやっぱり生姜焼きかなぁ」

「唐揚げ定食で」

 そうやってみんなが注文する中、俺は見つけてしまった。


「うな重で」

「拙者もうな重お願いするでござる」

「はっ!?」

 3人がばっとこっちを見るので、お品書きの反対の壁にある、『うな重始めました』の張り紙を指さす。


「私もうな重変更!」

「俺もうな重!!」

「全員うな重、5つお願いします」


『ゲームでうな重とか。最高じゃね?』

『拙者、うなぎ久しぶりでござる』

『名古屋に旅行に行ってひつまぶし食べて以来だわ~』

『ああ……ひつまぶしもいいなぁ』


 これ、リアルの俺の身体の口の中大変なことになってない!?


 よだれがー止まらないっ!


 そしてやってきたうな重は大変、大変美味でございました。

「ふっくらで、タレよ、ウナギのタレ、美味しいぃー!」

「タレとご飯うまうまでござる」

「山椒がいいな……最高だ」

 旨い旨いとペロリと平らげてしまった。一瞬だった。お値段はいつもの定食よりずっと高いが、それだけのものだった。大満足ですよ。


 お茶をいただきつつまったりだ。


 と、またまた以前と同じような現象が起きる。

「例の温泉宿、さすがお高いだけあって部屋も温泉も最高らしいな」

「だけど、最近温泉に幽霊が出るとか」

「温泉と幽霊なんて……似つかないな」

「宿の方には出るって話はよく聞くがなぁ」


 わざとらしく耳に入ってくる会話は、他の面子にも届いているようだ。思わず顔を見合わせる。


『温泉宿ってあれよね、前にお風呂だけ入りにいった……』

『鯉のぼりボートレースの副賞』

『ああ。ピロリが男湯も女湯も拒否され1人風呂しに行った』

『1人風呂、よかったんだからっ!!』

『わざとらしく聞かせてくれたし、見に行く? これ、猫又情報与えられたときと一緒のパターンだよ』


 それならばと5人連れだって向かった。

 温泉宿は山の方にある。眠れる美少年を撃破したことにより、営業を再開した場所だ。綺麗な場所なんだよねー。旅館に辿り着くまでの小道とか、整備されていて落ち葉1つも、雑草1つも許しませんみたいな。でも、その脇の山の方に目をやれば自然豊かな風景が広がっている。


 温泉もそんな自然の中に作られたものだった。


『泊まるのは無理、よね』

『5人はお値段が怖い』

『クラン費用から出したら柚子と案山子が怒るな、きっと』

『個人支払いでもまあ、いいけど』


 ということで、以前聞いた、温泉のみコースで入ることにした。

 旅館の入り口をくぐると、以前もおもてなししてくれた女将さんがやってくる。


「いらっしゃいませ。ご予約は承っておりますでしょうか?」

 予約いるのかぁ!! そこまで徹底しているとは。


「あ、今日もお風呂だけいただこうかなと思いまして」

「そうですか、ではこちらへどうぞ。気に入っていただけてよかったですわ」


 今日のお着物の柄は朝顔。綺麗だな。季節感とかあるんだろうなぁと眺めていた。そして運命の分かれ道。


「右手は殿方、左手は女性用となります」

『たぶん、1人しかいないはず!! 行ってくるわ』


 今回は止める手立てはない。

 ピロリと分かれて以前も来た温泉にじゃぼんするよ。

 タオルやアメニティは全部揃っているのだ。さすが高級旅館。そして残念な配慮機能。なんと、温泉入るときも最初の白パンツ着用。


『NPCからはこれ見えてないんだろうな』

『一応腰にタオル巻いておくでござる。次何があるかわからないし』


 そう、今日は幽霊を見に来たのだ。


 衣類というより装備は【持ち物】に収納。これならすぐ装備できるし。問題はアイテムポーチ。

『さすがに持って入れないな』

 まあ、本人登録してるから、他の人は使えないという設定ではある。それでもなくなったらちょっと悲しい。


 さて、いい感じに空は暗くなってきた。幽霊は出るのかっ!?

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


匂わせられる!!

温泉に幽霊って、なかなか難しい気がするんですよね〜


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― 新着の感想 ―
過去の殺人事件の被害者が幽霊になっていて遺体を探すとかのイベントも有りそう
温泉って言うと幽霊よりも殺人事件かなぁ… …昔やってたMMOは温泉は体型調整用でしたね… 太る温泉とか痩せる温泉とか。
温泉、幽霊...ゆらぎ荘を連想した。うん、ホラー感皆無。
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