230.お漏らしは誘導の香り
魔法使い2人組が特訓という名の監禁にあっている間、こちらは平和に過ごしておりました。読書に興じたり、ミュス狩りしたり。ピロリがイェーメールでお値段を聞いたら俺よりさらに倍率ドンだったらしい。ご愁傷様だ。それでも、付与楽しみだと金策に走っているそう。
「クラン資金はガンガン貯まってるけどな」
「酒の運び屋がでかいな」
八海山の言い方はちょっと語弊があると思う!
柚子と案山子がいないので、今日は5人で運び屋3往復してる。2人いない分2回運んでいたら、もう1回お願いできないかと店を預かっている店長さんに言われた。
最近はドワーフだけでなく他の種族のお客さんも増えてきたそうだ。
それは良い傾向。
てことでもう1度ローレンガに。
「しっかし、ローレンガも落ち着いたな」
「にゃんにゃんパラダイスは大盛況でござるよ」
あ、俺もまた行こうと思って行けてない。
「結局狩りに便利な街を拠点にしてしまうんだろう。移動は厄介だ」
「クランハウスあるから、アランブレに帰るようにしてるだけだしなぁ」
「ウロブルに部屋持てたから、ウロブル拠点にする子も多いわよ~」
【持ち物】にニホン酒を詰めながらの雑談だ。周りにNPCはいないので好き勝手してる。
「メイン進めようとしても、ソールだっけ? 学者さんが見当たらないらしいわ」
「学院に常駐してる奴らが見つけられないなら、しばらくは無理だろうな」
学院の方もかなり調べ尽くされてきているようだ。
「貸本屋さんに関連するようなクエストがあったら教えて」
「貸本かあ。まあ、見つけたら言うよ」
貸本屋は横の繋がりがしっかりしていそうなので、どこの都市でもお助けしたらアンジェリーナさんの耳に入るだろう! 積極的に入れていきたい。
詰め込み作業が終わり、それではと移動する。今回も限界ごりごりまで詰めてきたよ。
店長さんにたいへん感謝をされ、その後どうするかの話。特に何もないので、それでもウロブルも気になるので行ってみようかなぁ。
「もうすぐ夜だし、俺は、『湧き水亭』に行く」
ソーダが腹を押さえて宣言する。
「あ、私も行く-!!」
2人が行くとなれば結局5人で移動。この間俺食べ損ねたし。
渡し船で移動する。最近はもう、ただでいいとは言われなくなった。解放特典消えてきたのかな? みんな基本的に親しげではあったが。
「へいらっしゃい! おう、お前らか。空いてる席に座ってくれ」
もう常連気分だ。そんな言うほど来てないけどね。
「今日は何にしようかなぁ~」
がっつり定食お品書きが並んでいる。
「私は、チキン南蛮定食!」
「俺はやっぱり生姜焼きかなぁ」
「唐揚げ定食で」
そうやってみんなが注文する中、俺は見つけてしまった。
「うな重で」
「拙者もうな重お願いするでござる」
「はっ!?」
3人がばっとこっちを見るので、お品書きの反対の壁にある、『うな重始めました』の張り紙を指さす。
「私もうな重変更!」
「俺もうな重!!」
「全員うな重、5つお願いします」
『ゲームでうな重とか。最高じゃね?』
『拙者、うなぎ久しぶりでござる』
『名古屋に旅行に行ってひつまぶし食べて以来だわ~』
『ああ……ひつまぶしもいいなぁ』
これ、リアルの俺の身体の口の中大変なことになってない!?
よだれがー止まらないっ!
そしてやってきたうな重は大変、大変美味でございました。
「ふっくらで、タレよ、ウナギのタレ、美味しいぃー!」
「タレとご飯うまうまでござる」
「山椒がいいな……最高だ」
旨い旨いとペロリと平らげてしまった。一瞬だった。お値段はいつもの定食よりずっと高いが、それだけのものだった。大満足ですよ。
お茶をいただきつつまったりだ。
と、またまた以前と同じような現象が起きる。
「例の温泉宿、さすがお高いだけあって部屋も温泉も最高らしいな」
「だけど、最近温泉に幽霊が出るとか」
「温泉と幽霊なんて……似つかないな」
「宿の方には出るって話はよく聞くがなぁ」
わざとらしく耳に入ってくる会話は、他の面子にも届いているようだ。思わず顔を見合わせる。
『温泉宿ってあれよね、前にお風呂だけ入りにいった……』
『鯉のぼりボートレースの副賞』
『ああ。ピロリが男湯も女湯も拒否され1人風呂しに行った』
『1人風呂、よかったんだからっ!!』
『わざとらしく聞かせてくれたし、見に行く? これ、猫又情報与えられたときと一緒のパターンだよ』
それならばと5人連れだって向かった。
温泉宿は山の方にある。眠れる美少年を撃破したことにより、営業を再開した場所だ。綺麗な場所なんだよねー。旅館に辿り着くまでの小道とか、整備されていて落ち葉1つも、雑草1つも許しませんみたいな。でも、その脇の山の方に目をやれば自然豊かな風景が広がっている。
温泉もそんな自然の中に作られたものだった。
『泊まるのは無理、よね』
『5人はお値段が怖い』
『クラン費用から出したら柚子と案山子が怒るな、きっと』
『個人支払いでもまあ、いいけど』
ということで、以前聞いた、温泉のみコースで入ることにした。
旅館の入り口をくぐると、以前もおもてなししてくれた女将さんがやってくる。
「いらっしゃいませ。ご予約は承っておりますでしょうか?」
予約いるのかぁ!! そこまで徹底しているとは。
「あ、今日もお風呂だけいただこうかなと思いまして」
「そうですか、ではこちらへどうぞ。気に入っていただけてよかったですわ」
今日のお着物の柄は朝顔。綺麗だな。季節感とかあるんだろうなぁと眺めていた。そして運命の分かれ道。
「右手は殿方、左手は女性用となります」
『たぶん、1人しかいないはず!! 行ってくるわ』
今回は止める手立てはない。
ピロリと分かれて以前も来た温泉にじゃぼんするよ。
タオルやアメニティは全部揃っているのだ。さすが高級旅館。そして残念な配慮機能。なんと、温泉入るときも最初の白パンツ着用。
『NPCからはこれ見えてないんだろうな』
『一応腰にタオル巻いておくでござる。次何があるかわからないし』
そう、今日は幽霊を見に来たのだ。
衣類というより装備は【持ち物】に収納。これならすぐ装備できるし。問題はアイテムポーチ。
『さすがに持って入れないな』
まあ、本人登録してるから、他の人は使えないという設定ではある。それでもなくなったらちょっと悲しい。
さて、いい感じに空は暗くなってきた。幽霊は出るのかっ!?
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匂わせられる!!
温泉に幽霊って、なかなか難しい気がするんですよね〜




