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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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224/362

224.ホワイトウッドの樹液

 ドロップが渋いホワイトウッドの樹液は、さてどうしよう。

 ドロップ率を上げると言えばヴァージルなわけだが、なんか仕事もあるのにこちらから誘うのは気が引ける。

 とりあえず1人で行ってみることにした。

 場所はファンルーアの近く。イェーメール間だ。

 ということは結構マップを行かなければならず、途中ぎょろちゃんが攻撃された。

 水辺だったのだが、鉄砲魚みたいなことしてくるんだよ。恐ろしいヤツめ。俺がドキドキしているのをよそに、ぎょろちゃんは余裕で回避していた。頼もしすぎる!


「今日もありがとうな、ぎょろちゃん」

 お礼の赤水晶をべろんと食べきったのを見て、俺はぎょろちゃんを石に戻した。


 ホワイトウッド。

 木肌が白い。白樺のような模様がある。

 モンスターだが、アクティブではなく、こちらが攻撃すると枝を伸ばして叩いてくるそうだ。【ブランチウィップ】みたいだ。

 【鑑定】してみると、弱点は火。まあ、木だからなぁ。

 あわよくば種も欲しいなと思う。前回火の木から採った種は、1度出してみたらそこら中に火を吐くので始まりの平原で軽くボヤを起こしました。危険だ。


 このあたりは森で、木の上に小さな気配を感じている。リスか鳥か、そんなものだろう。こちらも特に攻撃を仕掛けてくることはなかった。


 とても平和な森である。


 と、奥に丸太小屋が見える。なんだかデジャヴ。平和な森に立派な丸太のおうち。

 それでも気になるから近づくと、家からお爺さんが現れた。


 顔っっ!!


 アルボル爺さんとそっくり!!!

 こちらは完全に戦闘モードというか、超警戒モードだが、あちらのお爺さんは俺の姿を見つけるとにこりと笑う。


「おやおや、こんな森の中にお客さんかい? もうすぐ日も暮れるが泊まって行くか?」

 流れもーっ! 流れも同じっ!!


「お、……お名前お伺いしてもいいでしょうか? 俺はセツナといいます」


 斧を持ったおじいさんはそうかいそうかいと笑う。

「わしの名はイルボル。この森で木こりをしている」


 兄弟ぃー!!




「そうかいそうかい、アルボル兄さんがなぁ……そりゃ手間をかけたな」

「いえ……申し訳ないですが、アルボルさんはすでに……」

「いや、わかってる。あやつは、木に悪いモノはいないと言うのが持論でなぁ」


 丸太小屋のテラスでお昼ご飯をいただいている。

 今回は【鑑定】があるから毒を喰らうことなんてない。大丈夫。無害なご飯だ。


「それで、ホワイトウッドの樹液、だったな。ホワイトウッドは切ると暴れ出す。樹液を得るにはちょっとコツがいるんだよ」

 そう言ってイルボルさんが教えてくれることとなった。


 めっちゃいい人じゃん、イルボルさん。アルボルじーさんは……まああれは仮の姿だったしな。本来のアルボルじいさんにも会ってみたかったな。どうも本を読んだ感じだと毒推しだったけど。


 樹液というからには表皮を傷つけねばならぬらしい。だが、普通に傷をつければ攻撃判定が出て、ブランチウィップで滅多打ちにされるという。


「そこで役に立つのがこの、ホーンブラックビートルだ!」

 そこには、手のひらくらいの大きさの立派なカブトムシがいた。


「攻撃されるのをなんとかしのいで、木肌に傷をつければ、夜中こやつらが樹液をたっぷり蓄える。それをちょちょいといただくんだ」

 ということで、木肌を傷つける作業に飛び出しました。

 丸太小屋から少し離れたところですることにした。

 イルボルさんは危ないから下がっててもらおうと思ったんだが、このお爺ちゃん、元気過ぎるだろ……。


 俺より上手に【ブランチウィップ】避けてるよ。

 少し距離を置いて5本ほど傷をつけておいた。これでOKだろうということで撤退。その引き際も鮮やか。


「イルボルさん、慣れてます?」

「あの樹液は色々な素材の元になるんだよ。君も咳止めシロップのために来たんじゃないのかい?」

 えー知らない!!

 というか、あれ? 八海山がドロップが出にくいって言ってたけど、この様子だと普通に採れそうなんだが。どういうことだ?


セツナ:

ホワイトウッドの樹液、なんか、カブトムシ使って採取するって言ってるんですけど、ドロップしにくいんですか?


八海山:

えっ!?

普通は木を倒すんだが……。


セツナ:

えっ!?


八海山:

セツナ君、きみ、何かイレギュラーなことしてないか?


 えー?

 なんだろう? 何かしたっけ?


八海山:

また検証スレが大変なことになりそうだ。



「夜まで用事がないならうちで過ごしていきなさい。なに、すぐだよ」

「お手伝いすることがあるならやりますよ!」


 暇だしー、なんか、お仕事ください。


「ふむ……なら、木を切るのを手伝ってもらえるかな?」

 そうか、木こりなのか、イルボルさん。


「足手まといにならないならぜひ」

「ならんならん。よし、それじゃあ張り切ってやるか。樹液を採取する場所とは離れたところに行こうか」


 そして、木こりの本気を見た。

 倒したい方向に受け口という切り込みを入れて、反対側から切って行くのだが――、

「ほら、セツナ君、これを貸そう」


 斧ぉ!! おもっ!!


「……ちょっと筋力が足りないか? ふむ……これを頭に巻いておけ!」

 

 なんかねじり鉢巻いただきました。やば、筋力+30なんだが。え、くれ……。


 ステータスの力ってすごい。イルボルさんの持っている斧よりかなり小さめだが、さっきは引きずりそうだったのが、今度は軽々持てる。

 スキル発動のためにもまずは筋力をあと少し上げてしまおう。

 その後器用さに全振りだな。


 イルボルさんがそれは鮮やかなお手並みで木に受け口を作る。最低2回斧を入れなければいけないし、本来は簡単に2回で終わるわけもない作業なのだが、ほいほいっと終わらせてしまう、マッチョじじい。

 そうなると、ヘイトはイルボルさんに向いているので、俺は反対側から思い切り叩きつけるようにすると、なんということでしょう。一発OK。ホワイトウッドがメリメリと倒れて行く。


 たまに樹液がドロップしたよ。

 えー、本当になんかフラグ踏んだのかなぁ?

 なんでカブトムシで樹液採取するんだろう。あと、どうやって樹液採取するんだろう??


 注文が入ってるとかで結構な数を倒したところで日が暮れて来た。イルボルさんは軽く仮眠。俺は、アルボル爺さんとの戦闘シーンをソーダとともに検証してました。


 そして時間になったので白樺のところに行くと、うじゃうじゃカブトムシ君がいた。それをひょいひょいと革袋に詰め込むイルボル。


 家に戻り瓶を用意し、衝撃的な方法で採取した。


 角倒すと口からぴゃーっと吐き出すのだ。



 いやぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


いやぁぁぁぁぁ!!!


感想少しずつお返事していってます。

いつもありがとう。


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― 新着の感想 ―
いやぁぁぁぁぁぁ!!!
元ネタは鵜かな? いやでも、動物が集めるために一度飲み込んでは割と定番かも知れない。
なんか、ホラーな光景ですな。 ロボみたい
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