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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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22.獅子座の宝珠

『ぐぬぬ、やるな、人の子よ』

「俺はミュス狩りで生きてきた男だ!!」

 いや、獅子の神様大きいから攻撃も大振りなんだよね。

 その点俺は投擲と囲い込みで……いえ、神様の大振り攻撃から逃げ出したミュス狩りウマーでした。

 密集しているところには強いんだろうな。でも、ミュスってそこまで密集してない。


『勝負に負けたのは事実。そなたの望みはなんだ?』

 え、負けたらなんか罰ゲームあったのか? これ。勝ったからよかったけどさ。

「望み……じゃあ、ふらふらしないで神殿の彫像にちゃんといてください」

『ぐぬっ……我も暇なのだ』

「皆さんお祈りに来てくれているんでしょう? 暇とか言ったらダメですよ」

『……そなたが正しい。これからは、――散歩も少し控えよう』

「少しー?」

『なるべく』

 半透明の獅子の神様、表情豊かで面白い。猫科可愛いな。触れるものならナデナデしたい。

「まあ、ずっと同じところにいるのは退屈なのはわかりますけどね……お祈りの人が少ない夜にしたらどうですか?」

『うむ……そなたの進言、心に留めておく』

 ビミョーな回答だった。


『勇猛なる人の子、セツナよ。そなたに褒美をやろう! さらばだ!』


 夜空に舞うキラキラした半透明の獅子神様は、たいそう綺麗だった。


《クエスト∶獅子の神の遊戯 をクリアしました》

《クエスト報酬 獅子座の宝珠を手に入れました》


 おふっ、重量制限……。



 

 耐久初期値の紙装甲なので、重量オーバーした状態での戦闘は厳しい。EP用ご飯を食べて少しでも減らしはしたが……キツイ!

 泣く泣く尻尾を捨てた。あと、石ね。投擲用の。それでやりくりしてなんとか街へたどり着く。

 ご飯持ちすぎだったよ。

 でもさすがにご飯は捨てられない。もらったものだ。

 冒険ギルドへ行き、ミュスの尻尾とバッドバットの羽根を換金する。

 ここらへんは、常時募集。ミュスは衛生面で狩り促進のため、バッドバットは薬になるから。


 尻尾×46=2300

 羽根×25=5000


 合計7300シェル。

 そして、獅子座の宝珠。

 持ってるだけでいいんだっけ?


 ステータスを開くが、特に変わりない。

 んん? 獅子神様?


セツナ∶

獅子座の宝珠もらったんだけど、何も効果が得られない。どうするの? これ。


ソーダ∶

宝珠!? しかも12星座の!? すっげあっあーーっっっ!!


 断末魔……。


 10分ほどして――、


ソーダ∶

すまん遅れた。で、12星座の宝珠は、すげえよ! しかも獅子座だろ? 筋力+30とかだぞ、確か。あーだけど、それ専用アクセサリ装備がいるんだよなぁ……とにかく大事に持っとけ。クランの、自分のタンスにしまっとけ!


セツナ∶

わかった。さっき大丈夫だったか??


ソーダ∶

ギリギリセーフ!


八海山∶

俺のリザレクションが火を吹いたね。


半蔵門線∶

奇跡の4リザでござるwww

危うく経験値ぶっ飛ばすところだったでござるよwww


案山子∶

ポーション代請求したいッ!


ピロリ∶

まあこちらもそろそろ撤収よ〜!

家具代は取り返したと思う。

というか、クエスト名何だったの? 獅子座の宝珠、けっこう先のクエストだった気がしたんだけど……。


セツナ∶

えーと、『獅子の神の遊戯』ですねー。獅子座の神様とミュス狩り対決しました。


半蔵門線∶

www セツナ殿ブレて無くて良きでござるwww


 ござるに褒められた。


八海山∶

あまり宝珠を持ってることは触れ回らないほうがいいよ。変なのにまとわりつかれることも多いし。


 との忠告をいただいた。

 クランハウスに戻る前に、神殿を覗いてみる。

 夜も一応開かれているが、NPCが少ないので人の数はぐんと減っている。

 獅子の彫像のところまできたら、確かにあのお婆さんの言葉が理解できる。

 獅子の青い瞳は、薄暗い神殿の中で仄かに光をまとっていた。




 最近睡眠時間が伸びてきた俺氏です。

 いや、つい……。

 帰宅→10分で食事→15分でシャワー→歯磨きドライヤー5分→寝る=ゲーム。

 よくない!

 運動を何処かに入れないとヤバイ!!

 ということで、3駅前で降りて歩いて帰宅してみた。

 あと、15分筋トレすることにした。

 睡眠時間10時間とか、幼稚園児かと!!


 あのCMもあながち嘘ではないな。

 睡眠は健康の第一歩だし?

 睡眠導入が少しあるらしく、不眠症にも良い。寝ている間に世界激変してても気づかんなこれ。


 まあ、今日も今日とて、アンジェリーナさんだ!!


 きちんとクランハウスでログアウトをしたので、そこから始まる。

 まず、案山子から伝言があった。これはフレンドチャットが残ってる、というやつ。ストレージにカツサンドがあって、良い出来なので持っていってくれとのことだ。

 ありがたくいただく。

 ただ、荷物が多いので、カニ爪グラタンをそっと戻しておいた。


 次は八海山から。

 みんながよく『獅子座の宝珠』を手に入れるのは、クエスト名『獅子の神の憂鬱』からだそうだ。各地で出会う獅子の神が、退屈だ、何か見せてみろとユーザーに求めるらしい。そこで、手合わせをするとたまにもらえるという。その基準が分からず、獅子座の宝珠はなかなかに貴重。

 セツナのクエスト名は初めてのものなので、どういった経路をたどればいいかも分からないし、あまり吹聴しないほうがいいかもしれない、とのことだ。

 どこの世界にも、面倒なやつはいるそうで、トップランカーにもなると、妨害しようとしたり、何が目的かわからないがずっとついてくるような奴らもいるらしい。

 俺がレアルートを引いているのは確かだし、恩恵にあやかろうとしたり、情報をリアルマネーで取引したりする輩もいるので、警戒するに越したことはないそうだ。

 先人の忠告はありがたく受け取ろう。


 


 そんなわけでウキウキでクランハウスからアンジェリーナの貸本屋へ向かう途中、おお、久しぶりのおっちゃんだ!

「あ、おはようございます!」

「おう! この間の兄ちゃんか」

「なんだかタイミングが合わなくてご無沙汰してました」

 かなり最初に出会った、建築家の人だ。

「冒険者は忙しいからなぁ……そうだ、これから家造りに行くが、見に来るか?」

 んんん? NPCってそんなにお誘いしてくれるもんなの?

 ただ、家造りちょっと見てみたい。

 ということでついて行くことにした。

 それがまさか、あんなとんでもないことになるとは予想だにしていなかった。

 

ブックマーク、評価、いいね、誤字報告ありがとうございます。



クランハウスに、ぽちっとなをすればいいことを忘れているセツナ氏。

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