214.レイスダンジョン
まあ、後から考えたらソーダたちが聖騎士団に駆け込んで伝えるという手もあったわけですが、プレイヤーは新しいイベント大喜びで駆けつけちゃうよね~。
到着は30分後。クランチャットがきゃっきゃしてる。
ミッション、時間出なくて良かったと思いつつ、多分これ、朝までにとかあるんだろうな。
さて、今のうちに出来ることをしようと、洞窟の話をヴァージルが聞き出している。
八海山のソロ狩り場だからよく知ってるだろうけどまあ、手順だよね。
で、ふと気付いた。
「そういえば、山頂は来ないってことは、レイスはそこに何か嫌うものがあるってことですかね?」
「……そうだな。ダークレイスはまだ復活はしないだろうし、騎獣で駆け上がってみようか。何か見つかるかもしれない」
30分を有効に使うべく、俺はヴァージルとアランと一緒にぎょろちゃんで山を登り切る。
逃げてきた村人たちが身を寄せ合ってアネモネが群生する中にいた。
「ちょうどいいからアネモネ持っていこっと」
採取しちゃいますよ。
「特段何があるというわけでもないな」
「アネモネの花が嫌なのかな?」
アネモネに関してはなんか聞いたことがあると調べたのだ。風の花になっているのもギリシア語で風を意味するからだった。アドニスの血から生えたとか、アドニスが死んで悲しんだヴィーナスの涙から生えたとか、諸説あるらしい。
「ヴァージルたちも一応持って行ったら?」
「……そうだな。一輪いただこうか」
手折ったアネモネの花を、そっと胸元に挿すのは反則だな。スクショスクショ~!!
いやー、今回は親衛隊の皆さんの期待に応えられる回になりますな!!
みんなが来るまでネットでアネモネ調べてたけど、うーん、関わりのありそうな神話は、ヴィーナスもとい、アフロディーテとのことかなぁやっぱり。
大地に落ちた血から……なかなかにすごい花だな。
そんなことをしていると、ソーダから入電。風の村に入ることが出来たらしい。俺たちも慌てて山を下りる。多分連絡をとって、やりとりしてから、ヴァージルの許可を得てからなので無事合流出来た。
「パーティーこっちに組み込む」
吸収合併されて、再びやんちゃパーティーが結成された。
「巻き込んですまないね」
「いえいえ、ちょうど暇してたし、道中レイスがいるのなら八海山がかなり戦えるので。退魔師なんですよ」
「レイスなら1人でも始末できます」
それは頼もしいなと聖騎士2人が笑う。
「さあ、腹が減っては戦は出来ぬだよッ!」
がっつり丼系が並べられる。親子丼も出てきた。美味しい。
「セツナ、聖付与どんくらいあるの?」
「えーと、30はあるから大丈夫かと」
今まで聖付与使うことがなかったからしっかり残ってる。
「なら、半蔵門線とピロリの武器を頼む。俺は基本最前線でタンクやるから」
「仕方ないから、俺が今日はヒーラーやるッ!」
なんと、案山子は聖職者の回復系は持っているらしい。
案山子:
魔法使いと聖職者で、賢者ってルートが基本ありそうだったからねッ!
「私も持ってるのじゃ~ただ、【ホーリーライト】は私もあるから、様子見つつなのじゃ。アタッカーが多かったら私も回復に回るのじゃ」
「とはいえ補助系は八海山だからなぁ」
「基本のキしか覚えてないのじゃ。まあそこら辺は臨機応変で!」
だいたい、聖騎士団、どう考えてもレイス無双できる。
みんなの腹も満タンになったので、村長たちに見送られていざ参らん!
「先ほどのダークレイスは、そのうちまた復活するのであなたたちも山頂に避難していてください」
ヴァージルの言葉に、村長はただただひれ伏すばかりだった。
さあ、レイス狩りだよ~!
八海山:
洞窟の中はレイスしかいない。
レイスオンリー洞窟だからこそ、八海山たち退魔師の最高の狩り場だそうだ。【悪霊退散】で霧散するらしい。
ということで、基本道中は八海山が前線に出ることになった。触媒の節約だ。
八海山無双すぎて、ヴァージルとアランが本当に驚いていた。
「我が牡牛神よ、聖なるその気で迷える者を導け! 【悪霊退散】」
しかも微妙に範囲攻撃。狭いけどね。接敵からの一瞬だよ。【気配察知】で引っかかったらすぐに教えてどーんみたいな。
『退魔師とは、すごい職だな』
『聖騎士真っ青だよ!』
ちょっとルーツが違うもんな、そこ2つ。
しかも、マップを熟知しているので、クランチャットで半蔵門線に進む先を指示していた。勝手知ったる庭とのこと。
このレイスダンジョンは、3階構造で、階が進むごとにレイスの数が多くなるそうだ。八海山もソロの時はMP切れを懸念して2階までしかいかないという。ただ、今回は【MP譲渡】がなされるので余裕だそうだ。
『皆さんには最奥まで温存してもらいたいと思います』
優しげヒーラーわんこがキリッとしてる。
『頼もしい限りだね』
『んじゃ、本命までは休ませてもらうよー』
聖騎士2人もそんな感じ。
そして3階。マップはもう共有されているらしく、さすがに数が多くなってきてピロリと魔法使い組が働き出している。
《隠しダンジョンボス『堕落した苦痛』と対戦しますか?》
今まで見つかってないという、3階のさらに奥の部屋に足を踏み入れようとしたところでアナウンスだ。もちろん、進む!
そこに現れたのは、真っ黒いデロデロしたうごめくものだった。
いやーっ!! 人の手とか足とか生えてるぅぅぅ!!!
「おぞましい姿だな……」
ヴァージルが鼻にしわを寄せる。
「俺のスキルは滅するスキル。だが、あの状態では滅するまではいけない。弱らせなければ」
と八海山。そういや【悪鬼退散】のときも弱らせてたな。相手のHP下がらないと発動できないとかあるのかもしれない。
「なら、やりましょう」
ピロリの剣にはすでに付与がなされているので、俺は半蔵門線に。
「【聖付与】」
もちろん自分の分にも。基本魔法使い組を守るつもりだ。
ヴァージルはアランに付与してもらい、アランの魔弓も登場だ。
弓師目指す者たちが増えたそうですよ。かっこいいもんなぁ、弓。あと、付与覚えちゃえば矢がいらないってのはでかい。その代わりMPめっちゃいるらしいけど。
やる気満々でみんなが準備万端。戦闘開始だ。
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