207.他の専用触媒
アンジェリーナさんに器用さを上げるよう言われ、ハロルドに筋力を上げるよう言われている俺は、真面目にレベル上げを考えていた。
なので今日はビッグキラービーを汎用触媒の方で始末している。筋力いくつあげたらいいのかなぁ。あとほんの少しと言われたし、1Lv分つぎ込めばOKかな。
他の宝珠で底上げ出来たらいいんだが、手に入る予定はない。
ビッグビーは数が多いので、【突き刺し】で細剣に蜂さんを次々刺していく。延々同じことをするのが苦痛な人もいるだろうが、俺はわりと平気な方だ。余所事を考えながら、スキルを発動し続ける。腹が減ったら少し離れて座ってモグモグ。
さすがに1日で1Lv上げる気はないが、夜の間狩りを続けるくらいでちょうどよかった。移動がちょっとかかるかなといった程度。
【持ち物】が針と蜂蜜で溢れてきたところで夜が明けた。クランハウスへ帰り、蜂蜜は全部ストレージの中に突っ込む。さて、アンジェリーナさんのところへ行く前に、針を売りに行こう。冒険者ギルドで売ってもいいが、イェーメール行ってみようかな。
朝一、かなり早い時間だ。
みんな夜飲んでいたのか人っ子一人いない。これはだめか。と思ったら、ローロだ。
「おはようございます、セツナさん」
蚊の鳴くような声での挨拶。二日酔いで死にそう?
「おはようございます、ローロさん。みなさん、まだ起きてこないですよね~」
「そうですね、昼前から働き始める感じですね」
小さい声ではあるが答えてくれるから、嫌がられてはなさそうだ。【持ち物】からビッグキラービーの針を取り出した。
「これって武器の材料になるんですか?」
「まあ! そうですね。槍系のものによく使われます」
「必要なら渡そうと思って持ってきたんですけど……」
「槍やランス、ジャベリンなどですから、モロンの親方あたりかな……聞いてみますか?」
「そうですね~、お世話になってるし必要ならお渡ししようかなって」
「ふふ、本当に必要なら買ってくださると思いますよ」
ローロの後についていく。扉を叩く音には遠慮がなかった。
かなりしつこく叩くと、ようやく奥からうなり声が聞こえてきて、扉が開く。
「どうした……セツナか。何か用か??」
「朝早くからすみません、時間がなくて。このビッグキラービーの針って必要ですか?」
眠たそうな目が、俺が手のひらで握りきれないような大きな針を見せると、見開かれる。
「いいもん持ってるじゃねえか! ちょうど投げ槍の大量注文がきたところなんだよ。全部寄越せ。買い取る!」
わーい。
ギルド売りもいいけど、こっちに恩売っておきたいからね。
針のドロップ率はそこまで高くない。結構長時間狩りをしたが、手に入ったのは30本だ。それを全部買ってくれた。
「まいどあり~!」
「いや、助かる。槍の材料としてかなり優秀なんだよ。またとれたら持ってきてくれ。買い取るぞ」
こちらこそ喜んで、だ。
そのままイェーメールの薬師の皮を被った錬金術師の店に。前回から頭の上に名前出るようになったんだよ。ガーズさん。双剣と日本刀の付与素材を聞きたい。細剣の他の素材もあるなら是非。
「こんにちはガーズさん」
「いらっしゃい。お、付与剣持ったのか! 細剣かぁ~、細剣は釜の担当だな。色が通ってるってことは正式に付与師だな、おめでとう。付与は花びらでやったのか?」
「いえ、細剣専用の触媒で」
俺の言葉にガーズは眉を上げる。
「はい。実はそちらに先に会ってました」
へへっと笑うと、ガーズはにやりと笑った。
「口が堅いのはいいことだ」
「それで、相談なんですけど……」
日本刀と双剣、カクさんに聞くの忘れたからまた行くのだが、こっちでも聞いてみよう。
「友人の付与ができるようになりたいんです。付与用の剣ではないんですが、日本刀と双剣使いで、普通の武器でも専用触媒の方が効果が出るかなと。それに将来的に付与剣を作るかもしれないですし」
「ほうほう。双剣は秤で出来る。素材もある程度知ってる。日本刀という武器は俺は知らないな」
「ローレンガで作られているものらしいですね」
たぶん? 半蔵門線の以外見てないけど。
「双剣用の必要素材なら教えてやるよ」
わーい。
そう言って並べられたのが、
火 ヒメモノアラガイ
氷 コタマガイ シジミ
風 ホラ貝
雷 カミナリサザエ
地 ツメタガイ
聖 ホタテガイ
闇 オウムガイ
水 カキ
時 タカラガイ
毒 イモガイ
貝シリーズだった。海辺で全部見つかるのかな? それならかなり楽……なんて考えるのはまた違いそうだ。
「双剣に使う枝のような効果を増やす触媒の素は、ブルーイーグルの羽根だな。これがかなり大変だとは思うが」
「ありがとうございました。また採ってきたら作るのをお願いします」
「おう、待ってるよ」
ローレンガにまた行くのは面倒なので今度だ。
あー、管さんに聞いておいてもらうのもいいな。そうしよう。日本刀、出回ってるのかなぁ?
午前中を潰してしまったが、やっとアンジェリーナさんのところだ。今日は残りの明るいうちは本を読んですごそう。夜はまたソロ狩りしにいこうかな~。針が高く売れると言うのもあるがそれ以上に器用さまで上げねば!
「こんにちは~」
「セツナくん、ちょうど良いところに。8時間くらい時間ある?」
今ゲーム内11時。余裕である。
「大丈夫です」
返事をすると足下にあったのか鞄を持ってカウンターから出てくる。
「図書館に行きましょう。修復の依頼が来たのよ」
「はい! 行きます!!」
いやったー! とうとう本業のお仕事だ。
二人で歩いているところを見られるという不安はあったが、仕方ない。むしろ並んで歩けるご褒美。幸せ-!!
「少しずつ道具も揃えないとね。特別な物も多いし、必要だなと思ったら材料を教えるわね」
採りに行くやつか。
「ありがとうございます」
そして久しぶりの図書館裏口だ。
「こんにちはアンジェリーナさん、そしておめでとうセツナ君。彼女から聞いているよ、これ、入館証。返さなくて良いよ。その代わり図書館に来るときは持っておいてね」
「はい!」
ウキウキしかないお仕事の始まりだ。
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
お仕事依頼がやっと来た!!
梅雨が明けたと思ったら雨が降るのはいつものことですね〜
気候もかなり変わってきているし、熱中症にお気をつけください。




