205.火の花
今日はみんなが付き合ってくれるクラン狩り。汎用触媒でもあの効果を得られるのだ。細剣専用の火の触媒を手に入れたらどうなるか、今からわくわくしかない。
火の花は、暑さがかなり激しいマップでの狩りとなるらしい。
『火ネズミの皮衣ってのが暑さ耐性付きローブの材料で、かなりいい値段で取引されてるんだ。セツナ【暑さ耐性】は?』
『出るのは出たけど、熟練度は皆無だと思う』
『なら、耐性ポーションを飲んでおいた方がいいな』
そんな大変な狩り場なのか。
『育ちは遅くなるけど、ダメージの方がキツいもんね』
『この中で耐性が上がってるのは柚子殿くらいでござるね』
『ガラス工やってるとどうしたって上がるのじゃよ』
炉の前は本当に暑かった。
騎獣で一気に駆け抜けて、問題の火ネズミマップへやってくる。
『セツナは氷付与をピロリと半蔵門線に。今日は半蔵門線も攻撃側に回る。セツナの仕事は【気配察知】。大型と中型がいる。中型が火ネズミだ。火ネズミは【フロストサークル】に入れるんだが……どうなるかなぁ……』
『ベストは水魔法だけどね』
『水もこっちが優位に立たないとだしな』
『付与を水にする?』
『固有スキル知らないし、発動できないから無理だと思う。普通の水付与の剣よりは、柚子の【フロストサークル】の方が凍結ダメも入るし攻撃力が全部乗るからまだましな気がするわ。私たちの攻撃もかなり低い確率だけど凍結ダメ入る【氷付与】の方がまし』
細剣の氷スキルはまだ知らないし、細剣用の氷触媒も花をとっただけでまだ作っていなかった。
『火ネズミはわりと群れで行動している上に、1匹の体力が結構あるんだ。凍結状態からの【一刀両断】で倒せるかどうか……』
『使っているうちにスキルを閃くこともあるみたいだし、ピロリは【水付与】試してみる? それとも閃くなら【氷付与】の方が今後も使いやすいっていうなら氷にするけど。【ひと突き】で遊んでたら風で【突風】が出たから、そういったルートは必ずあると思う』
一応提案してみたら、悩んで結局氷にした。氷使いやすいのはわかる。ちなみにあれはダガーで、細剣では出なかった。【青嵐】とかあるもんな。
『問題は大型だな。大型が来たら、セツナ、幸運低くてもいいから【フロストダイス】で氷漬けにしてくれ。火ヤマアラシっていうやつなんだけど、針飛ばすんだよ。それが結構なダメージでキツい。他の火ネズミを倒すまで張り付いておいてくれ。マップに3体出るから、【気配察知】で絶対に1体までしか合わないよう誘導して欲しい』
『了解』
『てことでセツナ先頭ね!』
今まで半蔵門線がやっていたポジションを取ることになってちょっとドキドキする。頑張ろう。
マップに踏み入れる前に暑さ耐性ポーションをもらった。クラン費用かららしい。
【気配察知】を常に使い進む。
『中型3匹、左の道』
このマップは山道だ。そう、火山に登っております。とても暑い。
道に木が立っているが、葉や実はない、枯れ木だった。それでも全部は燃えていない。大きな岩がゴロゴロしており、この岩のせいで視界が途切れる。
火ネズミの姿が見える。
『ミュス……』
『違う、火ネズミだ。アレはお前の宿敵じゃない』
始まりの平原にいるやつより少し一回り大きい。でも、ほら、ミュスだよ!! ちょっと身体の周りめらってるだけで。始末しないと!!!
『お前の仕事忘れんなーっ!』
『セツナっち、目の色変わったねッ!!』
案山子は今日は【ウォーターボール】係だった。凍結からの【ウォーターボール】は即死だそうだ。
「【フロストサークル】なのじゃ~」
展開されるが少し遠いので、円陣の脇にいた半蔵門線が石を投げる。ソーダと半蔵門線とピロリには【氷耐性】のバフも掛かっていた。【フロストサークル】に突っ込んでスキルを放つためだ。
「【一身集中】」
サークルの真ん中で叫ぶと、ヘイトがソーダに向かった。さすがのタイミングで火ネズミが突っ込んで行く。
『右斜め前方の道から4体来ます』
『ドロップ集めならこのまま固定でもいいんだけど、花探しなんだよなぁ。柚子、ちょっとずつ前進するからよろしく』
『了解じゃ~』
そうやって進むこと3時間。安定して狩り続けたところで、花を見つけた。群生系だ。助かる。
『採取する~』
『ならその間は拙者が気配察知でござるね』
水遁はまだ覚えてないそうで、【切り捨て】などで止めをさしていた。日本刀も楽しそうだ。絶対切り捨て御免からだよな。
『めちゃくちゃ集まった。ありがとうございます!』
風氷火は群生系、と。ベラドンナはこまめにクランハウスで採取しておこう。毒はやっぱり便利な気がする。
『それじゃあ帰るか~火ネズミも結構集まったし、いい金になりそう』
『セツナくんもこれ使ってローブ作ってもらったら? 今日も耐性伸びてきたとは言え、ローブがあったほうがポーションの効きもいいし、他の火マップでも使えるから』
『そうだな。セツナもそろそろ装備も考えないとなぁ。初期から変わってないだろ、それ』
『基本攻撃食らわないから、耐久も全然問題なしなんだけど、そうだなぁ、少しずつ揃えないとだね』
モヤシラに聞いてみようかな。この間のお友だちのジャンドゥーヤさんとか。
『皆の衆、まずいでござる。前門のヤマアラシ、後門のヤマアラシ』
『げっ……やるしかないのかぁ……』
『どっち行くでござるか? 早めに動いたほうが。ヤマアラシバッティングは悲劇でござる』
『出口方面へ!』
ということで、【フロストダイス】準備。
みんなで走り、接敵。一緒にいる火ネズミからだ。
「【フロストサークル】なのじゃっ!!」
「【投擲】」
「【一心集中】」
投擲で呼び込んで、俺はさらに火ヤマアラシへダイスをぶつけた。
2✕4! 俺にしては最高値ですよ!!
火ヤマアラシをついでに【鑑定】しておく。火に耐性があり、苦手属性は水とあった。水のスキル欲しいなぁ。あー付与して切って【フロストダイス】繰り返してようかな?
と思ったが今回はやめておいた。
下手なことして崩壊したらなぁ。固有スキルあれば一発KOもあるかもしれないが。【業火】みたいなスキルがほしい。
5回ほどダイスで足止めして、ようやく火ネズミを倒す。本当に、HPのあるネズミどもだ。
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少しずつ戦闘で役に立てるのは嬉しいなと思うセツナくんでありました。




