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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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20.家具は木材選びから

 マルスに誘われゴワン商会へ。

 ユリアさんと親父さんが出迎えてくれた。

「先日は世話になったな。ディックだ」

 手を差し出されたので握り返すと、握力チェックされる。そのムキムキの腕に敵うわけないからやめてくれ。ダメージ判定出そうなレベル。


「こちらは俺の友人です」

「おう、テーブル用の材木だろ? いいのが揃ってるから選ぶといい」

 川で運んだ木材を引き上げ、並べて乾かしている作業場だ。種類で別れているらしく、断面に色々とマークが付いている。


「色は? まあ、床材とかと合わせておくのが無難だが」

 となると明るめの色になる。

「テーブルクロスかけるつもりだし、その方がいいかもな」

 とはソーダ。

「テーブルクロスは、話し合った結果黄緑とか、グリーンオレンジのこー、ボタニカルな感じがいいわねって話になってるの」

 ピロリが完全女性の仕草でウキウキと話してる。

 今まで倉庫としてしか使ってなかったが、テーブルを買うことになって、急に充実させたい欲が出てきたそうだ。

 ここに来る道中かなり盛り上がって話していた。


「帰った時温かみがあると落ち着きますからね」

「同意でござる。だから、床材と同じ明るめの色がいいと思うでござる」

「ならこっちの方だな!」

 ディックが俺たちを引き連れて行った先には、いくつかの丸太の塊があった。


「一枚板は高ぇからな。ラバーウッドの集成材は柔らかい印象だしオススメだが。おい、マルス! どんなテーブルにするんだ? 一枚板のいいやつにするのか?」

「二つのテーブルをつなげて使用するし、テーブルクロスをかけるから木目にこだわりはない。集成材でも構わない。脚部分の彫りなんかにはこだわるつもりだが」

「それならラバーウッドは加工もしやすいんだが……少し金をかけてもいいなら、こっちのクルミ材もいいぞ。特に今回のは明るめの色でいいのが入ってる」

 隣の木材の山を指すディック。手前に見本の板が置いてあった。


「これ! 俺、これがいいッ!!」

 案山子が飛びつく。

「絶対絶対これがいいッ!!」

 案山子の勢いに、ソーダはディックとマルスとコソコソ話し合っている。

 しばらくしてこちらを向き直ると、宣言した。


「予算オーバー! しばらくクラン狩りの八割をクラン費用に回すならなんとか」

「なんなら一日ぶどう狩り、全ドロップ回すとかでも良き!」

「異議なしでござる。ぶどう狩りなら拙者も頑張れるし?」

「ぶどう狩れるの?」

 俺が尋ねると八海山が首を振る。

「ブーディという豚のようなモンスターが大量に発生して、ドロップが肉でNPC売りでもそれなりの金銭効率を叩き出せる狩場があるんです。激しいのでセツナ君はまだ出入り禁止です」

 先行プレイヤーの八海山が言うのだ、さぞかしとんでもない狩りになるのだろう……。


「たまに拙者轢かれるwww」

「半ちゃん紙装甲だからねwww」

「ソーダのHP管理間違うと決壊だ」

「魔法連打ぼったちウマー」

「胆石出たら儲けになるしな、じゃあぶどう狩りして金稼ぐか!」

 おーっ! とやる気にみなぎるクランのみなさんだ。


 ということで、クルミ材でテーブル2つに、椅子が8脚。さらに2人掛け長椅子を2つということになった。


「それで、布屋に当てはあるのか?」

 まったくないです。俺が首を振ると、ディックが地図を取り出しいくつか指差す。これ、俺の方の地図にマーキングされるためのひと手間のようだ。


「まあ、知り合いなんかに作っているやつがいればいいが、値段の参考にもなるし一度見に行くと良い」

「何から何までありがとうございます」

「こっちこそ、とんだ誤解で、未来ある若手の人生棒に振らせるところだった。感謝してる」

 そして再び握力測定。

 ヤメテー!!

 値段もかなり勉強してくれたようだ。というか、ユリアが横からめちゃくちゃ口を出してきた。親父さんタジタジになってたが、割引たくさんしてもらって助かる。


 挨拶を交わして、5人はそのまま狩りに行くらしい。

「マイナスは早めに回収しておかないといけない」

 ソーダの言葉にみんなが頷く。

「ぶどう狩りしたら、カツサンド大量生産するッ。セツナっちもストレージに入ってる分は使っていいからッ!」

「けっこういただいてます。ごちそうさまです」

 美味しいもの嬉しい。【持ち物】には、かに爪グラタンがまだ入っている。





 大通りで分かれて、俺は神殿へと向かう。半蔵門線から、チュートリアルの終わりに、ギルドの依頼掲示板を勧められることはあっても、神殿へ行くことを勧められたという話は拾えなかったと言われた。

 「まあ、セツナ殿の情報だから、こちらから聞くことはしていないでござるけどね」とのこと。

 またもや、何か起こったら教えて案件だった。

 レアルートを引いたんだから、何かしらあっていいはずとも言われた。


 我ながら、そうそう普通辿らない結果を引いたとは思う。

 トムを泣かせるのは初期ではよくあるらしい。でもだいたい門の外のおじさんに連れられ、次の街でチュートリアルの続きをこなす。

 そのおじさんに連れて行ってもらえるルートがわからず、執念で始まりの平原で過ごすルートを辿った人もいたらしいが、だいたい迎えに来た時にめちゃくちゃ怒る、または良い人を装うなどして、補填にポーションなどを貰う。そして、トムからお詫びの根付も貰う。

 俺は、根付を貰っていない。

 たぶん、ミュスの尻尾見せたから。それも大量の。

 アンジェリーナさんに会えない怒りを子どもにぶつけた悪い大人です。


 神殿は、街の南門から入ってすぐ右手の方に道があり、その道をまっすぐ行けば大きな白と青の建物がある。 

 丸い屋根が鮮やかな青で、モスクに似ている。

 以前アランブレの神殿は獅子の神だとアンジェリーナさんから聞いた。つまり獅子座。

 都市ごとに違う星座なのかな?

 街の人が祈りを捧げに来ている。扉はなくて、柱がいくつもあり、そこを抜けると一番大きな丸い屋根の下。奥に立派な獅子の白い彫像があった。かなり大きく、目には青い宝石がはまっている。その下で人々が祈りを捧げていた。


 一般人立ち入り禁止って怒られるところまでウロウロしてみることにする。


 獅子の彫像の左手に出入口があるのでそちらへ行くと、中庭のようなところへ出た。

 大きな木と、薬草園と書かれた看板の向こう側に、青々とした葉っぱが生えている。これはさすがに踏んでも採ってもダメなヤツ。神殿で育ててるのかな?

 と、真っ白円筒状の服に、青いタスキのようなものを掛けた人々がバタバタと、先ほどセツナが来た出入口を行き来している。


「やはり、いない」

「空っぽだ」

「ああ……またか。獅子神様は本当に……!」

「あのお方の好奇心にも困ったものよ……」

 獅子神様?

 

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こーゆうゲーム上のモンスターのあだ名って、ほんと色々あって、名前つけられてて面白いなって思った過去……気の利いた名前が付けられない。

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