191.情報ギルド解禁
「うわーごめんなさい、なんか、ごめんなさい……」
「いや、まあいいんだが……お前ならそんな吹聴するとは思わないしな。しかし、【翻訳】を持っているとは思いも寄らなかった」
「ちょっとこの間……色々あって」
監禁されてと言おうとして、やめた。
オルロはどこか面白そうな顔をしているが、こちらは騙してしまったみたいで少々気が咎める。
「【鑑定】だけだとどう読めたんですか?」
「そうだな、今どう書いてある?」
【翻訳】さんが働いてしまって、そこには『情報ギルドから情報を得たい場合はアランブレのここへ、酒を届けろ』とある。ここ、は地図を開くとポイントが置かれていた。
「正しく読み取ってるんだな。来訪者の【翻訳】は恐ろしいな。【鑑定】だと、情報ギルドとまでは読み取れないはずだ。そうやって書いてある。ここの本にある多言語の本から、辛うじて店の名前と、酒を持ち込むというところまでは読み取れるはずだ」
どうやら共通言語では書かれていないようだ。
「俺は辞書の案内までをするのが仕事なんだよ。で、本当に情報を求めてるなら必死に読み取ってアランブレの『ノティーティア』という店に酒を持ち込むところから始まる。で、そいつの欲しい情報を得られるところを紹介するって流れなんだが……」
ふっ、と笑った。
「お前さんが欲しい情報なら俺が都合してやるから、いつでも来な」
「ありがとうございます……しかしどうしようかなぁ」
あちらのクエストのことだ。
《情報ギルド解禁クエストをクリアしました》
《貢献ポイントが150ptプラスされます》
おおっ!?
《すべてのワールドに情報ギルドの存在が認識されました》
うおっ、ワールドアナウンス。わあ……これ俺じゃん。
「俺たちに相談してきたお貴族様は、なんかお宝を手に入れる鍵だとか言ってました」
「ある程度金のある貴族なんだろうな。そんなやつらにとったら情報はお宝だろう?」
「確かに」
情報は宝だ。アンジェリーナさんを知らぬ奴ら人生の半分を損しているが損したままでいるがいい!!
「どこまで伝えていいですか?」
「【鑑定】結果なら大丈夫だ。アランブレの『ノティーティア』は、いわば選別の門だ。情報を与えちゃならねえやつはそこではじかれる。次へのつなぎができないんだ。とはいえ、情報ギルドは金を積まれたら基本なんでもやるがな」
にやりと笑う。
「オルロさんも、情報ギルド員ってことでいいんですよね?」
「ああ、そうだ。お前さんもなるか?」
「いや、俺は本屋さんになりたいので!!」
即お断りだ。
オルロさんはきょとんとしたあと大笑いする。
結構お年な人なので呼吸困難にならないかと、心配になるくらい笑ってる。
「まあ、やりたいことをやるのが1番だな。お前と、ほら、お前の友人でここでちょこちょこ本読んでるちびっこいのがいるだろう? あれなら困ったことがあったらいつでも来るといい。店の方は通さなくていいぞ」
柚子のことだ。本を読んでると、好感度あがる? つまり、アンジェリーナさんの好感度上がってる!?
「ありがとうございます」
柚子にまでは情報ギルドの話をしてOKもらえた。クエスト一緒にしているからよかった。
ということで今日はもう終わりだ。残りはギリギリまでせっかくだから本を読んでいた。宵っ張り店主の店はリアル時間朝六時までいられるから助かる。
『柚子さん、イェーメールの貸本屋店主さんは情報ギルド員でした。あのお貴族様が知りたかったのは、情報ギルドへのつなぎの方法で、教えてしまっていいって言われたから明日会って話そうと思います』
『さっき流れてきたワールドアナウンスじゃな』
『オルロさんが、柚子さんなら直接オルロさんのところに来ていいよって言ってましたよ~。本読んでるからたぶん親密度高いのかな?』
『情報ギルドか。何か世話になることも在るかもしれんな。言い方から察するに、ソーダたちには一応内緒にしておいた方がよさげじゃな!』
『ですね。その方向で行きましょう』
ログインして俺はイェーメールからアランブレへ。クランハウス経由でなく、普通に徒歩。途中牛さんを風付与で【ひと突き】の刑に処しながら進む。さらにはミュス。俺のお友だちを狩りまくった。
ミュスは付与もいらないし、結局ダガーを使うことにしている。その方が早い。
昨日仕事の合間に細剣の戦い方動画を見ていたんだが、巻いていなして、突くのが基本のようだ。あとは固有スキルに期待。また色々と調べないといけないなと思う。
で、思ったのが餅は餅屋で戦士ギルドで聞いてみるのはどうだろう? ということで、久しぶりの赤い屋根の戦士ギルドだ。
「すみませーん」
「はい、どういったご用件でしょうか?」
「実は、細剣を使い始めたんですけど、固有スキルを教えてくれるような人に心当たりがまったくなくて。誰か紹介していただけたりしませんか?」
受付のお姉さんが目を白黒させて後ろを振り返ると、1番最初に会ったギルド長が奥から出てきた。
「細剣か……細剣は貴族がよく使うものだが、ほう、付与剣なのか。うーん。騎士になるとだいたいが長剣や大剣、弓などになるからな。なかなか細剣で戦いに挑む者は少ない。だが、貴族のたしなみとしての剣術で、細剣はよく学ばれるものなんだ。誰か貴族に知り合いはいないのか? 自身の伝手があるならそこから聞いてみたほうが、俺の伝手よりは足下を見られたり、侮られたりしないだろう」
あー、信頼関係値が高い方がしっかり教えてくれるよってことか。
ぱっと思いつくのはヴァージルだが、聖騎士団の中にいたかなぁと考え込んでいたから、そこまでスキルを知らないのかもしれない。
あとは、ウロブルか。もう隠居の身とか言ってたけど、騎士への叱責を見るにまだまだ現役っぽいしなぁ。ありよりのありかもしれない。
「ちょっと知り合いをあたってみます。ありがとうございました」
「いや、来訪者が楽しく生活しているならなによりだ」
ギルド長いいやつじゃん。つい、あめちゃん代わりに牛丼差し出したくなるけどやめておきました。普通に考えて、そこら辺のやつから突然ご飯もらっても怖いだけだろ。
柚子がログインしてきたので待ち合わせの時間を決めた。時間までは、夜中だからミュス狩りだ~。
一応朝になってもアンジェリーナさんのところには行くのをやめておく。バレるようなことはしない!!
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
貸本屋はけっこう重要ポジションになりますね〜
そして、考える人も多かろうかと思いますが、セツナくんのメガネは曇ってます。




