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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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19.オーダーメイド家具

 なんか結局周囲の露店商たちと立ち話が始まる。みんな露店からは離れられないらしく、等間隔に広がっての会議みたいになっていて面白い。

「セツナくん、生産はなにやるの?」

「まだ決めかねてます。そんなに狩りもしてないので」

「メインストーリーは?」

「まだ一つも。チュートリアルが終わったところですね」

「わー、本当に本当の駆け出しか。楽しい時だね~ま、今も楽しいけど、私。日々陶芸用粘土に金を注いでるわ。生産施設料金も馬鹿にならないし、狩りしてそれを全部この子たちにつぎ込んでる感じ」

 生産ガチ勢だ。


「俺も、アクセの石たっかいからビミョーな付与ばっかり増えてくやつ。でもこのゲームアクセの形も自由だからさぁ。狩りした金注いでる」

「アクセ可愛いよねーわかる」

 ガチ勢仲よさそう。

 

「っていうかセツナくん、生産何があるか知ってる?」

「知らないですね」

「だよねー! まあ、私も全部は知らない。それだけこまっかく職業があるの」

 最初の小人族さんが知ってる限りの職を並べてくれた。


 衣服系、帽子系、靴系、鞄にアクセサリ、これらの中にも分類があるそうだ。例えばアクセサリは、ネックレス、指輪、ブローチ、イヤリング。どれも最初に一つ選んで習熟していくのだが、もちろん他も扱える。ただ、一番最初に選んだ物がどうしたって習熟度が高く、今は一つをひたすら極めるのがベストと言われているらしい。身につける物は戦闘に関わってくるから特に。

 ブローチのお兄さんは自分の物が欲しかったが、指輪はモンスターを殴ったときに壊れそうだし、イヤリングは苦手とかで、自分がつけるならブローチだったそうだ。実際つけているのはなかなかおしゃれでキマってる。


 次に木工系。ソーダが言っていたテーブルを作ってるユーザーもいるというやつだ。

 小さな細工物、大きな家具。だいたいこの二つにわかれる。


 そして案山子さんとやらが熱心にやっている料理系。料理は、料理というひとくくり。それこそ種類がありすぎて日々メニューが増えているという。


「あとは、ガラス細工も多いね。綺麗だからな。ポーション瓶に必要だし、薬師と、ガラス細工職人はクラン内で役割分担して取ってるところも多いなぁ」

「思わぬところで生産スキル習得したりがあるらしいし、レアな生産職隠してるやつもいるって噂だよ」

「あー、聞いたことある! 音楽家とか?」

「それがどんな生産なのかホントに分からない」

「まあ、生産職はよっぽどやりたいのがない限り、後回しでも構わないよ。今メインストーリー停滞中らしいし」

「トップクランが行き詰まったって言ってるよね」

「他鯖でも同じような状態らしいよ」

 やがてはみんなの雑談に流れたところでメインストーリーの話になっていった。

 このトップクランというのがソーダたちのことだ。ほかにもいくつかあるらしいが、どうにも前に進めないという。

 サーバー全体の隠されているポイントが足りないんじゃないかという話だ。


「そろそろミュス大行進の時期だしなぁ……」

「ァーーーあれ面倒だわぁ」

「ミュス?」

 聞き捨てならない単語! 我が宿敵!


「あー、一月に二日間。つまり、こちらの世界で六日間。街の中にミュスが大量発生するの! その間はすべての生産もなにもかもストップ! 総出でミュス退治をしないといけなくなるのよ」

「それは……」

 祭りだ。


「一定量始まりの平原で狩ればいいらしいんだけど、それこそ新規参入者でないとミュス狩りなんてもうしないのよ。接敵しても無視して突き進む感じ」

「一人のプレイヤーが1匹狩ればいいんじゃないかって試してみるよう呼びかけがあって、たくさんの人がやったらしいけど、それでもダメだったからね」

「二日間お休みする人も多いみたいよ」

 せっかくの祭りがもったいない。


「まあ長々引き止めてごめんね。良い生産との出会いがありますように〜」

「稼いだ金を何に溶かすかですよ」

「注ぎ込むのです!!」

 本……かな?


 彼らと別れて今日はログアウトだ。

 生産職の話は聞けて良かった。掲示板は余計な情報まで拾ってしまいそうで見る気はなかったが、ああいったプレイヤーから直に聞く情報は面白いと思う。

 




 ソーダたちとクランハウスで待ち合わせ。

 欲しいサイズがまさかのわからなかったので、みんなで両手を広げて計測。

「そうなると絨毯も欲しいよなぁ〜」

「壁際にソファも欲しいわ!」

 今日は案山子も一緒だ。

 案山子は、エルフの男性だ。青い長い髪をポニーテールにしている儚げイケメン。背も高い。

「俺ッ食器棚ッ!! そんでもって、食器揃える!!」

 外見からは到底想像のつかない元気系のお兄さん。

 みんな欲しいものが増えている。


「クラン費用から足が出そうだから、まあ絨毯とテーブルセットまで」

 ピロリと案山子がぶーたれる。

「クラン狩りしてまたどかっと稼げばいいだろう。ただ、きちんと資産は残しておきたいから、使える額は決まってる」

「なら、テーブル決めたあと狩りに行きましょうか」

 八海山の言葉にみんなは頷いた。

 俺は行っても蘇生の手間がかかるだろうから待機だな。


 そしてマルスの店。今日は扉が開いていた。

「こんにちはー! セツナです」

 奥へ声を掛けると、マルスが顔を出す。

「こちらが友人たちです」

 一通り挨拶を済ませ、大きさをこれくらいでなどと手を広げて説明し、マルスが正確な寸法を測ってくれる。


 相談した結果、人が増えたり客が来た時用に、長方形の6人がけを2つ、普段は縦につけて両側に4人ずつ座れるスタイルにしてくれるそう。

 分ければ2人ずつ追加で12人。

 そして、普段は壁際に長椅子を2つ置いておく。クッションなどを使ってソファ代わりにしようと言うことになった。


「素敵な提案だわ〜」

 ピロリがウキウキしてる。みんなも楽しそうだ。


「これならテーブルクロスも欲しいですね。それとカーテン。クッションとともに色をそろえましょう」

「出稼ぎに行かないとだねッ!!」

 案山子は魔法を使うらしい。ちょっと見たい。



ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


生産のみで生きる道もあるらしい。

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