184.レイピア用触媒
クランメンバーのおかげで貝をたくさん手に入れた。
お礼ができないんだけど、真珠出たらクラン資金になる予定のクラン狩りみたいなものだからOKと言われる。
もらってばっかりだとなぁ~とこぼしたら、柚子に肩を叩かれる。
「ぶっちゃけせっちゃんが注目されたことにより、私のチャンネル視聴数爆上がりじゃよ」
柚子はただひたすらガラス工関連を流してるらしいが、先日の風鈴クエストで登録者数も増えているらしい。
「もともとここのクラン入ったらごりっと登録者数上がったのじゃ。おかげで扶養外れてるのじゃよ。確定申告大変なのじゃ……」
「私も自分のチャンネルあるしね~」
「無いのは八海山と半蔵門線くらいだよッ」
「拙者は贈与は受け付けぬ……金品は受け取れぬのでござる」
「俺は誕プレもらってるから」
「110万までOKだしな」
ガチマネーの話になってて。
そうか、半蔵門線、公の人か。
「ゲーム楽しいし、実生活潤うし、セツナくんのおかげでそれが加速してるし~win-winよ~」
まあそれならそれで。
「付与に必要ならまた採りに来よう。ってか武器専用ってあるんだな」
「あー、この間から使ってたヤツは、汎用触媒みたいな感じらしい」
「錬金術師が作った?」
「そう、前に集めた花びらが基本で、そこに木の枝を加えて錬金すると、強い付与の触媒になる」
もうみんな錬金術師のことを知ってるから、こうやって話しても問題ないらしい。
「付与武器みんなで揃えるのも楽しいだろうなぁ。ちょっと検討しよう」
「レインボータートルエッグの無属性が欲しいならヴァージルにお願いして一緒に行ってくるよ」
「2人で行った方がドロップ率上がるから頼むかもしれん」
それなんだよねー。
その日は1日貝採りに付き合ってもらって、翌日お花摘みからの、ローレンガで触媒をお願いする。花摘みは全部じゃない。とりあえず1つだけ。本当に普通の花。たぶん貝採りが大変だから、花は簡単なんだろう。場所はあちこちだったけど。
「こんにちは~」
ローレンガでログアウトしていたので、そのままカクさんのところへ来た。
お、知らない人いる。
「はっ!? セツナ氏!?」
「誰っ!?」
「なんだ知り合いか?」
話してみると、カクさんに弟子入りしたプレイヤーだった。薬師をしていた完全生産職らしい。
「ちょうどいい。付与の触媒の作り方を教えてやろう。まあ、まだ作れるレベルではなさそうだが、一応見ておけ」
とそろって奥の釜部屋に案内された。
「これがっ!! 噂の強化触媒!」
こうやって、レシピが掲示板に乗るんだな。
エルフタイプの銀髪後ろで三つ編みイケメンだが、仕草がオーバーで、ファマルソアンを彷彿とさせます。
「これ、その、書いて平気なの?」
カクへのバレを気遣いながら聞いてみる。
「隠されていたのは錬金術師なのでOKですね」
そっか~。
「釜の錬金術師以外知ってる?」
「秤ももう何人も。セツナ氏、読まないって聞いてるんですけど」
「うん、読まないで楽しんでるから」
「てことは秤とも会ってるんですね、羨ましい……」
「俺の付与武器触媒作れるように頑張ってください」
「おおお……」
俺は錬金術師にはならないのでぼけーっと眺めてたけど、お弟子さんはめちゃくちゃガン見してた。新しいレシピとか、まあ楽しいだろうなぁ~。
「他にもポーションとかも強化版を今習ってるところなんで、もし必要になったらお声がけを。薬師クラン入ってたんだけど、錬金術師クランになりつつある。マスターさんのところ薬師いませんでしたよね? 必要なもの、お声がけいただけるとみんな喜びます」
うーん、たぶんソーダとか普通に友だちいると思うけどね。
まあ袖振り合うも~なのでフレンド交換しておいた。管ブラウンさん。名字つき、なのかな?
そしてとうとうこの日がやって参りました!
「セツナ! できてるらしいな」
「はい。連絡いただきました」
そう、細剣、出来上がったそうです。
ぎょろちゃんで飛んできた。昼間なので、鍛冶屋はそこら中トンテンカンと音がする。なのに、その仕事を放り投げてついてくるのだ。
「みなさんお仕事してくださいよ」
「いや、ローロが仕事途中見せてくれねえんだよ。ハールも。あれだけ質のいい材料で作るなんて羨ましい。俺たちも出来が気になる」
ソーダが言っていた。
プレイヤーが作る武器や防具は、たまにとんでもない物が生まれる。さらに強化することもできる。
だが、NPCが作る物は、素材とNPCの腕で上限が設定されてしまうそうだ。
つまり、いい素材を持って行けばいい武器ができる。ただ、さらにその上、エピック級と呼ばれるような偶然で現れるとんでもない物にはならない。
反対にプレイヤーには失敗判定がつきものだ。念入りに準備した素材でも、下振れが過ぎると、言い方は悪いが、クソ性能になることがある。
レベルの高い武器になればなるほど、このクソ性能確率が上がってしまうそうだ。
一発当てたいなら、レベルの高いプレイヤーに。確実に品物が欲しいならNPCにと言われている。
なので、初めはみんなNPCに頼むらしい。そこで重要になってくるのがNPCとの親密度。腕のいい職人にはなかなか辿り着けない。
その点イェーメールは、我がクランに対して絶大なる信頼と好意を持っている。
柚子なんか定期的に酒盛り参加してるらしいです。杖新調するときのためにと言ってるが、絶対違う。
ソーダが新しい盾を作ってもらえたのもここだ。
「こんにちは~」
ハールの店につくと、すぐローロと2人でお出迎えしてくれた。
「待たせたな、セツナ!」
「セツナさん、私の最高傑作が出来上がりました!!」
そう言って中に通され、テーブルの上に鎮座している細剣を見せられる。
「おおお!!」
という俺の声がかき消され、外野から地鳴りが起こる。
魔鉱石は仄かに青く光る銀色の鉱石だ。細剣の鞘の先と縁は 魔鉱石で作られているらしく、さらに細かい装飾がとても綺麗だった。皮の色は黒だ。
「良いブラックタイガーが手に入ったんです。さあ、抜いてください」
ローロに言われて俺は細剣のグリップを握った。
柄の部分にも同じく黒い皮が使われていた。
鞘を左手で握り、引き抜く。手にしっくり馴染みすぎて怖いぐらいだ。
ガード、つまり柄の部分に、透明な石が嵌まっている。
「誤解がないよう申し上げますが、レインボータートルエッグは武器や防具に加工するとぐっと濃縮されその大きさになります。付与をした際に、その能力をため込むのがエッグ部分で、刀身に送られるんです」
宝珠と同じようなものか。それに合わせて大きさが変わる。
「曇りの無い良い刀身だなぁ」
小人族の誰かがぽつりと漏らし、周囲がそれに同意する。
細剣は片手で扱う物だ。さらに調べたところ突き刺す武器。素早さが必要になる武器だ。手に吸いついて、軽く振ってみても、違和感がない。軽すぎず、かといって重すぎず、すごく、いい!
「ローロさん、素晴らしい細剣をありがとうございます」
またおどおどとした様子だったローロが、俺の言葉ににっこりと笑った。
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ユーザーの鍛冶
→材料最高レベル最高でも武器レベルが高いと失敗率が上がる。たまにすんごいやつできる。
NPCの鍛冶
→材料最高で、職人レベル高ければ(出会うのに一苦労)、武器レベル相応のものはできる。下振れなし。上振れもない。
ゲームが何年も進むと廃人が、武器作っては材料を溶かしてしまうやつです。




