175.レイピア製作依頼
これ、俺がもうとっとと細剣作るのがいいと思うんですよ。
そうしないと新しい付与属性専用スキル覚えるのもダガーしかできないし。てことでヴァージルにレインボータートルエッグ狩りをお願いした。
土下座の勢いで、俺に、金を稼がせてくださいと。
そのためなら多少、アンジェリーナさんも我慢します……。
ということで、何度か二人っきりのレインボーシータートルをこなし、俺はとうとう金を手に入れた。ファマルソアンに、あんまり持ってくると価値が下がるか聞いたが、これだけの大きさなら下がりようがないということで、無属性1つは置いておいて、他をぜーんぶ引き取ってもらう。
札束(イメージ)握りしめてやってきました、イェーメール。
「たのもーっ!!」
鍛冶通りは今日も小人族たちがその日の酒を楽しみに仕事に勤しんでいた。
「よお、セツナか」
「ウラルさん。お金と材料貯めてきましたー!! 付与の剣作ってください」
「ああ……そうか。うーん、確か細剣だったよな」
「はい。そのつもりです」
店先でそんな話をしていると、わらわらと小人族たちが集まってくる。
「なんだ、金貯めてきたのか」
「お金だけじゃないですよ。無属性のレインボータートルエッグと、魔鉱石もきっちり持ってきました!」
「なら、あとは誰が引き受けるか、だなあ」
正直誰でもいいのだが、そういったら失礼なので黙っている。
「細剣ならハールのところじゃねえか?」
「そうだなぁ。でもあいつは今、他の作成に携わってるだろ?」
「ハールの弟子に1人いたろ、細剣作りが上手いヤツ」
「ああ、ローロだったかな? ちょっと聞いてきてやろう」
そう言って小人族の1人が駆けていく。
正直鍛冶職人小人族たち、名前覚えきれないから関わりがある人だけ覚えていくことにした。多すぎるし、特徴が飲兵衛で共通しててわからん。
そしてしばらくして、呼んでくると言った小人族が2人連れて帰ってきた。
「よお、セツナ。悪いなぁ。お前さんの得物なら喜んでと言いたいところなんだが、3本先まで予約が入っちまってるんだよ。で、俺の弟子なんだが腕は保証する。俺の技術をきちんと受け継いでいる。ローロってんだが、こいつに任せてみないか?」
ローロ……女の子の小人族さん? うーん……。
「俺は構いませんよ」
女だろうが、男だろうが、かっこいいの作ってくれたら嬉しいな!!
「一応弟子の仕事を見守るのは俺の役目だ。今後のメンテナンスのこともあるだろうし、渡しておくぜ」
ぽいっと来ました。久しぶり。
《ハールからフレンド申請が届きました》
ローロからじゃなくてよかった。お断りしないといけないところだからな。
「よろしくお願いします……」
なんかすごく小さい声で言われた。おどおどしている。え、別に俺怖くないよ?
「こちらこそよろしくお願いします」
「ローロはこんな感じでなぁ。小人族らしからぬとか言われがちだが、腕はいいし、材料の扱いも上手い。色眼鏡で見ないでもらえると助かるな」
「できあがりを楽しみにしてます」
ローロも酒飲みなのだろうか……? なんか好きなものがあるなら賄賂を渡すのだが。
「それじゃあ材料渡しますね」
「おう、俺んところの工房で頼む」
ハールとローロの後をついて行くのだが、なぜか後ろにもぞろぞろと。
「え、ウラルさんたちなんで来るんですか?」
「いいじゃねえかよ。セツナが持ってきたレインボータートルエッグの出来も気になるし、魔鉱石の質も気になる」
「ええ-、レインボータートルエッグは手伝ってもらったから、かなり高品質ですよ」
「ほお……ならやっぱり見たい」
うちのヴァージル先生の一撃必殺の成果を、ハールの工房でどんと出したら、地鳴りのようなおおお! をいただきました。
「こいつはすげえ大きさだな」
「セツナが仕留めたんじゃぁ、ねえよな? さすがに」
「へへっ……イェーメール聖騎士団の騎士団長様ですよ」
「おお!? ヴァージル様かっ!?」
「なんつうところに伝手持ってんだよお前さん」
「あの人は平民も分け隔てなく扱うからな」
「分け隔てなく、やらかしたら厳しい」
「飲み過ぎ見つかって絡んだら一晩ぶち込まれたらしいな」
何やってるの小人族たちよ……。
外野がそうやってざわついていると、ローロがうううと呻き出す。何事、と思ったら、上を向いた目がキラキラしていた。先ほどのおどおどした感じが消えている。震える手で作業台の上のレインボータートルエッグを掲げた。
「なんて、なんて美しい。最大の大きさの無属性なんて、そうそうお目にかかれるものじゃない!!」
宝石好きだったのかな? まあ確かに綺麗だよね~大きいし。
「これが魔鉱石です」
どんっとこちらは床に置く。だって大きいんだもん。四角に切ってくれたというか、なんか特別だって頭くれたんだよね~。
「きゃああああ!! まさかこれはっ!! 頭部っ!!!」
「おお、頭部は一番価値が高いんだぞ。すごいなセツナ」
「採りに行くの一緒に行ったんですよ。魔法使い役として」
「ああ、来訪者だから多属性持ちだったのか。貢献料だな」
なめ回しそうな勢いでローロが頬ずりしてる。
ギャップが。
「素材を見る目が一流過ぎてな、まあ、仕事は出来る」
「ちょっと素材狂いなだけだよな」
「てか、本当にいい品質だなぁ、セツナ」
「頑張りました」
ヴァージルがね。魔鉱石は俺も頑張ったけど。
「それじゃあ契約しちまおう。ほら、ローロ、いったん置いておけ。セツナの採寸もしないといかんだろ」
「採寸?」
腕の長さとか身長体重計るらしい。へー。
ハールが持ってきた契約書に名前を書き、メジャーで指の長さまで細かく採寸された。
「こんなに良い品質のものを与えてくださったのですから、私、全力で頑張りますっ!!」
出来上がるのは1ヶ月後。リアルで10日後だ。
よろしく頼むとお願いして、俺は本屋に向かった。
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付与剣手に入れるぞー!




