173.魔鉱石と予定外の客
マジックストーンゴーレムの採取? はまあまあ順調だった。
真面目に【属性看破】上げていてよかった。幸い時魔法や星魔法はないようだ。闇もなかった。基本火、氷、風、雷と土。たまに水がくるくらいだ。
俺が【属性看破】して、すぐその属性魔法を打つ。するとだいたい10秒ほど動きを止めるのだ。その間に職人と、騎士たちがゴーレムの動きを制限するために足の関節を狙う。
職人は矢を穿ち、騎士はスキルを打つ。
問題は同時に4体を相手していることだ。
なんでか増えていた。最初2体だったのに。
結論。俺、大忙し。矢穿つ暇なんてないから、石材が積まれたちょっと高い位置から俯瞰して状況を見ていた。
動けなくなって10秒。動き出して30秒ほどで属性を変化させようとする。
属性変化から、魔法攻撃が飛ぶのだ。俺の魔法でそれを防ぐようになっているが、1人じゃとうてい回らなかった。
そこは親方たちも考えていたのだろう。
騎士の中に2人、魔法を使える者がいた。火と雷。その属性が出てきたときは俺が指示して打ってもらうこととなる。それぞれ1属性だから喧嘩をすることもない。
騎士もそこら辺は割り切っているらしく、俺の指示に素直に従ってくれた。
「1つ目落ちた!!」
職人たちが早々に右膝をもいだやつが動いて攻撃を躱すことができなくなり、属性変更しようとするたびに関節をやられていき、とうとう頭部まで解体された。
そして4体から3体になれば、さらに討伐スピードは加速する。
足下をぬかるみにする魔法で動けなくなったゴーレムの頭部を、騎士が切り離し、以前と同じく糸を使う職人が拘束したゴーレムが解体を待つのみとなる。
騎士は本当に素晴らしい動きをしていた。
あんなのとは戦いたくない。まあ、そうそう騎士と対立することなんてないだろうけど。
日が暮れる前にマジックストーンゴーレムの討伐が完了した。
「いや、やっぱり騎士様がいると早いな!」
「ハザック親方の職人たちの動きもさすがですね」
彼らも満足いくものだったようだ。
「セツナは【属性看破】ほぼ外してなかったな」
「ほぼ、ではありませんよ、親方。すべてきちんと当てていました。良い魔法使いですね」
一緒に魔法を放っていた騎士に手放しで褒められると照れる。
「魔法使い……なのか?」
フェリックスは首を傾げている。
「魔法使いをやるにはちょっとお勉強が足りないと言われ続けていて、俺はどちらかというと付与をして素早さを求めて戦う感じですね。魔鉱石で新しく付与用の武器を作るつもりです」
「ああ、付与師を目指しているんだな。ならこの魔鉱石は必要なアイテムだ」
「今回はそれが報酬だ。細剣を作るらしい」
「まだ材料もお金も全然集まっていないですけどね~」
なんてほのぼの話していると、俺の【気配察知】が仕事をする。
「何か近づいてます……10、いや、30?」
すぐさま騎士が臨戦態勢を取る。大きさが、人? そう、最近小型、中型、大型とわかるようになりました。それ以外に、人型がわかる。
「人のようです」
「【MP譲渡】」
雷魔法の騎士さんが俺に魔力をくれた。あ、あざっす。
一番位の高い騎士が、大きな声で問う。
「何者だ!!」
このあたりは、岩山が多いのだ。物陰が多い。マジックストーンゴーレムは、人めがけてやってくるので、広い場所で待っていればよかったが、物陰に隠れて近づいてくるのは物騒だ。
「今すぐ答えない場合、問答無用で攻撃をする!」
魔法使い2人が詠唱を始めた。
ほうほう、威嚇か。なら、俺も参戦。
「【火付与】」
抜き身の剣を持つフェリックスに、俺が付与を施す。
人型には火でしょ、やっぱり。強そうなのが多かったらこの後氷にしてもいいですけども。
「これはこれは、申し訳ない」
こちらのヤル気を察知したのか、声が上がる。
声の主が、奥の岩山から現れる。
「手前に数人潜んでいます」
俺がぼそりと告げると、フェリックスは頷いた。
「お前、ヨーラン商会長!! ……街を追放されたはずだが?」
「ふんっ、ここはアランブレではない」
「だが、この採掘場は国の持ち物だ。許可を得ていない者は立ち入ることは許されていない」
ハザックとフェリックスの言葉に、ヨーラン商会長は唇をゆがめる。
「船で道に迷っていたらたまたま辿り着いただけです。いえね、少し懐が心許ないので、魔鉱石でも土産に持って帰ろうと思っていたんですよ」
《ミッション! ヨーラン商会の者たちを打ち倒せ!》
おー、久しぶりのミッション。というか、船で旅するとミッションに出会う法則か?
紙装甲の俺は何をしよう。
「セツナ、付与くれ。できれば氷を」
「【氷付与】」
モランさんだ。職人のみんなも、先ほどまでの対ストーンゴーレム武器、矢をしまって、おのおの得物を構えていた。
モランも長剣だった。
後から後からみんな付与もらいに来るんだ。そしてすかさず【MP譲渡】。ありがたや……。
NPCがパーティーの概念をどう思ってるのか知らないが、すでに事前にパーティーは組んでいて、アライアンスもばっちりだ。ということは。
「【シードウィップ】」
とりあえず自衛に木を生やすぞー。
「そういえば木魔法も使えるって言ってたね」
「はい、まだ習いたてであまりわかってないですけど。【ブランチウィップ】」
定期的にかけ直すだけで、多少守ってくれるのが嬉しい木魔法だ。
「ならこれがいいよ【グローイングアップ】」
雷魔法の騎士さんは、木魔法使いでした。
わあああ。うちの若木が、こんなに大きくなっちゃって……。
俺の背の三倍、幹は両手がギリギリ握れるぐらいの太さ。
そしてそれを見せてもらった俺のスキルツリーに生えるという最高のおまけ付き。
「オークか。いいな」
樫の木、かな?
今までのブランチウィップとはまったく違うというか、どんだけ幹やらかいんだよ。根を地面に生やしたまま、わさわさなっている葉っぱごとべちーんて敵の密集地に突っ込む。遠いと【ブランチウィップ】のような伸びる枝でひっぱたいている。
数で優勢だったはずのヨーラン商会の人間たちを、あっという間に減らしていった。
「く、くそっ! 撤退だ! 撤退するぞ!!」
トップが逃げ出せば他も続く。騎士たちは追いかけはしなかった。
「今は君たちを無事王都まで守る方が優先だからな」
だってさ。
かっこいいね。
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木魔法が完成した!!とりま基本の木魔法です。




