170.ほんとうにちょっとしたおつかい
半蔵門線と一緒にウロブルの図書館へ向かう。
『忍者になって何が変わりました?』
『魔法ツリーと別に、遁術ツリーが出来たでござる。ベースは、拙者魔法を覚えていたからか、属性はある程度揃ってる感じでござるよ』
いつも忍者装束で、口元も隠しているのでわからないが、今日はそれを突き抜けてウキウキしているのがわかる。半年追い求めていた職があったんだから嬉しいよね。
『無理を言った忍者装束作家さんにも報いれた気がするでござるよ』
無理言ったんだ。まあでも、ニッチな衣装だよね。
司書さんを捕まえて、草の本をお願いする。せっかくなので今回はそれがある棚を聞くと、案内してくれた。見事に植物学のあたりにある。
『これを見つけるのは至難の業……』
『俺が木魔法で、木や草の本探してたって流れにしたらいいですよ。それで、草の本てのを見つけて~って』
『そうさせてもらうでござる』
ややわざとらしい演技を交えつつ、本に書かれた手がかりを辿る、ところまででカットっ!
『あとは録画をソーダにぶん投げでござるよ。同志たちに、連絡してこの後とっかかりを終わらせるつもりでござる。セツナ殿ありがとうでござる~』
『いえいえどういたしまして。楽しい忍者ライフをお過ごしください』
せっかくなのでそのままウロブルの貸本屋に行くことにした。ここは何時までだろうな。アンジェリーナさんじゃないし、多少遅くてもいいだろう!!
「こんにちは」
「いらっしゃい、確か、セツナさんね」
にっこり笑う。エルフさんだ。
今日は何を読もうかなと考えて、特に決まらず魔法関係、木関係の本を漁る。木魔法絶対楽しくなりそうなんだって。
そんなことをして気付けばあたりはすっかり日が暮れていた。
「すみません、夜遅くまで」
「私はショートスリーパーだから大丈夫よ♪ それより本当に本好きなのねえ。アンジェリーナとこの間手紙のやりとりしたんだけど、セツナさんって親切だってきいたわ~私のお願い聞いてくれる?」
アンジェリーナさんだから聞いてるんだけどなぁ。
「まあ、急ぎじゃなければ。俺もうすぐ寝る時間なんですよ」
「全然急ぎじゃないわよ。来訪者って3日とか、長いと1ヶ月寝ちゃう人がいるんでしょう? 本当になんの含みもナシに、暇なときでいいわ」
そう言って一通の手紙を渡された。
「学院の、入り口のところにいる青い髪の青年に渡してくれる?」
「名前とかなしでいいんですか? 違う人に渡るかも……」
「大丈夫。彼以外に渡っても意味ないから」
そんな簡単なことでいいなら、寝る前に行っておくか。もうすぐ0時。起きる時間だが、それくらいなら間に合うだろう。
入り口のところにいる、というのは、俺に来訪目的を聞いた青年だった。そういえば濃い青い髪をしている。
「こんばんは、セツナさん。随分遅い時間ですね。今から学院内へ?」
「いいえ、今日はこちらをお届けに来ました。貸本屋さんからです」
そういえば名前をまだ聞いていない。彼女、頭の上に名前見えてなかった。それを言うならこの受付の人もだ。
「これはっ!! あのなかなか手に入らなかった本が入荷っ!!!」
めちゃめちゃ興奮しだした。そりゃ、彼以外には意味のないものだな。
「ありがとうございます。そろそろシフト交代なんで駆け込みます」
お仕事お疲れ様。
さて、俺が今度はお仕事です。ログアウトだ。
さて、今日も今日とてアンジェリーナさんの本屋でゆったり読書会なのだが、そんなことをしながらも今後の方向性に考えを巡らせる。
まず、細剣資金。作るのにも金がいるが、材料費がすごそう。調達出来るものは調達したい。
レインボータートルエッグは、無属性のものがいいらしい。大きければ大きいほど良い剣の伝魔材となるそうだ。魔力を伝える?
ヴァージルに頼むにしても、まずは魔鉱石の方だよなぁ。
マジックストーンゴーレムと言っていた。
甦る暑苦しい船旅……。
今一歩踏み切れないが、親方にハトメールはしてみた。
将来的に付与剣が欲しい。資金がまだまだ貯まっていないのだが、マジックストーンゴーレムから採れる魔鉱石とやらが必要らしいが、伝手はないかと。
まあそうしたら、本を5冊読んだところでハトが来た。ハト、俺の中に吸い込まれるんだよね~。
『マジックストーンゴーレムはかなりの強敵だ! なんかつまみ持って俺の家に来い!』
強制連行かなぁこれ……。
案山子に断りを入れて、ストレージから拝借する。筑前煮、若竹煮、炊き込みご飯のおにぎり、土佐煮、そして定番トンカツ。なんかタケノコ多いなぁ。タケノコ狩りとかあるのかな。
扉をノックすると、すでに赤ら顔のハザック親方の登場だ。なぜかフレンドになっているモランさんもいる。
「よお! 入れ入れ」
「親方、こんな時間から飲んでるんですか?」
「ひと仕事終わったあとなんだよ。それにもう夜だから」
「絶対ついさっき飲み始めた感じじゃない」
テーブルに並ぶたくさんの酒。
「結構な大仕事だったんだ」
モランさんからフォローが入る。
No.2風の兄貴とはまた別の人だ。あっちは元気系、こっちは穏やか系。ヒューマンタイプだから、親方の酒飲みに付き合うの大変だろうなぁ。
俺がひょいひょいとつまみを出すと、旨い旨いと食べ始める。
「それで? マジックストーンゴーレムだろ? 俺んところでもたまに狩りに行くよ。あれはな、大きな家の核になるんだ。平民の小さなとこじゃ入れないが……そうだな、この間、酒屋作ったろ? あれくらいじゃ入れないが、貴族様の屋敷や、大きな商人の倉庫なんかには作るときに埋め込む。埋め込むことで、耐性が強くなるんだよ。何か大きな力でもそれこそ魔法ぶち込まれても、ある程度なら耐える」
「そんな使い方をするんですね」
「面白い石だな。それがマジックストーンの採石場でゴーレム化しているんだ。こいつはなあ、なかなか手強い。魔法を使うんだよ。専用業者もいるが、おい、一番直近で捕まえに行ったのはいつだ?」
「確か、2年前ですね。死者は出なかったですが、怪我人は山ほど出ました」
「おお……命がけ」
「捕まえ方があってなぁ。あいつは自分で属性を次々変えるから、そうなったときにすぐさま同じ属性魔法で打つんだ。そうすると、しばらく黙る」
んん?
「山ほど属性持ってる魔法使いを連れてくるか、山ほど魔法使いを連れて行かにゃならんのよ。後者はそれぞれが主張してくるからめんどくせえ。前者はそういない」
呼んだ?
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呼んだ?
呼んだ呼んだ!
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