167.【鑑定】を手に入れるために
夜も遅くなってきた。つまり、俺はそろそろログアウト時間だ。
「しばらく眠るし、次起きたらちょっと予定があるんですよね~」
「いえいえ、セツナさんには十二分に働いていただきました。本当にありがとうございます。気になるでしょうし、また連絡させてもらいますね」
そう言って去って行った。
フレンドも来なかったのにどうやって連絡とるんだろう……店の前うろつく方式かな?
まあそんなこんなでどこをどうしたら【鑑定】になるのかと思いつつ、ログアウト。
ログインしたらまだゲーム内時間15時! 日が暮れる前にお花をしばきに行かねば。
届け、ハトメーーーーール!!!
アランブレとイェーメールの中間で待ち合わせした。マップで待ち合わせは新しいな。大急ぎで夜になる前に行かねば。
『セツナも夜は攻撃に回ろう。昼のうちに片っ端からつぼみを落とすぞ』
『はーい』
久しぶりだとやる気に満ちあふれている。
俺も木と毒がちょっと楽しみなのだ。
『木魔法はかなり使いどころが難しいが、はまるととても強いらしいな。木魔法の属性剣は、見たことがない』
『アランさんは?』
『アランは木魔法は持っていないんだ』
へえー!!
全部取りそろえているのかと思っていた。
『さあ、セツナ、始めよう』
ぎょろちゃんとシュヴァルツが仲良く降り立つ。遠くから花がよたよたやってきた。【属性看破】がかなり育ってきているので、属性はすぐわかる。
「【アイスアロー】、【ファイアーボルト】! 【ウォーターボール】」
「【MP譲渡】」
昼間は楽勝。夜は……またギリギリまでスパルタヴァージルは俺に全部やってみろと言う。えええー。基本物理しか効かない。ただもしやと思って、【シードウィップ】を出してみた。あ、やっぱりちょい効く。物理寄りなんだろうな。
若木になったところで、【ブランチウィップ】をこまめに唱えると、そばに来た花をべちんとのしていた。
『木魔法は面白いな』
『なんか珍しい種見つけたらぜひ。種がないと始まらない魔法なんで』
『心に留めておくよ』
数が多くなりすぎたら、ヴァージルの【なぎ払い】。炎を纏っていなくても、強すぎた。
『いやーいっぱいでしたね。ありがとうございました』
『この後触媒にしに行くか?』
『それがちょっと知り合いが気になるのでそちらの用事を終わらせてからにします。半分アランさんに持って行ってください』
『いや、いらないだろう。アランの触媒は花以外なことが多いし』
そういえば、触媒の素、たくさんあるんだった。
『俺ももう少し勉強しないとですね』
一覧表作っていかねば。
『花は、わりと何にでも使える触媒だと言われてる。細剣にも使えるそうだ。ただ、実際は使ってみて比べた方がいいとアランも言っていた』
『研究あるのみですね』
『また別の触媒の素もそのうち採りに行こう』
『よろしくお願いします』
途中ヴァージルと分かれて、そこからクランハウス帰還。ストレージを漁ってEP回復だ。そろそろヴァージルにも新しいご飯を与えてみたい。案山子に聞いてみよう。
自室で【持ち物】の整理をして、アーロンの店の方へ向かう。
あ、店の前をうろついている姿発見。俺の姿を見つけていい笑顔になる。
「こんにちはセツナさん!!」
「アーロンさんこんにちは~」
店の前には荷馬車。お店の中から人がひっきりなしに出入りして、荷物を積んでいる。
「おかげさまでイェーメールに店を持てることになりました。店舗も今後改装する予定です」
「この荷物は?」
「店舗が決まりましたので方々へのご挨拶の品ですね。どうですか? お時間があるならイェーメールへご一緒しませんか?」
これは、お断りしたらいけないやつな気がする。
「店舗の場所も知っておきたいので、お邪魔していいですか?」
「ぜひぜひ。参りましょう」
ということで御者席にお邪魔する。
そして現れる山賊ども。
「ひ、ひぃぃ~」
「騎士団が根城を始末したんじゃなかったんですかね」
俺はぴょいっと飛び降りて、戦闘準備。
「【氷付与】」
なんだかんだで氷便利だ。相手を一時的に留めることができるからね。さらにもういっちょ。
「【シードウィップ】」
木魔法楽しいんだもん。召喚獣……いや、召喚樹木です。
俺が固めた盗賊に【ブランチウィップ】伸ばしてべっちんべっちんやってくれる。
と、騎馬がものすごい勢いでやってきた。馬に乗っているのはこの間門のところで見た騎士様です。
加勢……て、うちの木ちゃんがすみません。乱入した騎士に手を出そうとするので慌てて止め……止まらんっ!!
「木に近づかないでくださーい!! 魔法で出した木ですからぁ!!」
とりま【ブランチウィップ】をこれ以上かけなければそのうち枯れるので近づかないでー!
「申し訳ない、取りこぼした」
「いえいえ、セツナさんがいてくださったので私は無傷ですよ」
「うちの木が騎士様に手を出してすみませんでした」
やられた騎士は笑ってるので許してもらっていると思いたい。
「貴殿には先のことと言い、世話を掛けてばかりだな」
「たまたま行きがかっただけですので。俺でも倒せるレベルでよかったです」
これは、山賊よりレベル低くても助けてもらえるやつかな? 俺は結構レベル上がってから出会ったから倒せちゃっただけで。
無事イェーメールについて、店舗へ向かう。店はまだ閉店の看板がぶら下げてあった。アランブレの店もそれなりの大きさだったが、こちらも結構大きい。
「よい立地に店を持つことができました。何かお礼をしたいのですが、何がいいでしょうかねえ」
「いや、別に気にしないでください」
しかし、うーんと頭を悩ませていた。
そして思いついたと手を打つ。古典的だな。
「セツナさんは来訪者ですよね。来訪者の方々には特有のスキルを習得する術があると。私が知っているのが、このイェーメール近くの鉱石がとれるダンジョンで、鉄鉱石を割る時に、その中を見通す力を得ることができる、というものです。いくつも割っていると不思議と何が出てくるかわかるようになるらしいですよ。是非試してください」
《クエスト:アーロンの新店舗をクリアしました》
《ダンジョンで【鑑定】スキルを習得することができます》
スキルツリーの【鑑定】はまだグレーだが、そこをぽちっと押すとナビゲーションが出る。
おお!! これで、念願の【鑑定】がっ!!
「商人としては是非とも欲しいスキルですが、悲しいかな私は来訪者ではないので。もし習得出来たときは教えてください。お願いすることもございます」
これはクエストが続くやつか。
まあとにかく、【鑑定】だ!!
それでも100個以上割りました。
たしかに、クエストは長くて面倒と思うかもしれない。
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やっとこさ鑑定ゲットだぜー!




