165.【鑑定】ゲットクエスト開始
【鑑定】スキル入手クエストは、おつかいクエストの面倒くささトップ5に入るものだそうだ。なんというか、回数が多い。
『アランブレとイェーメールを行ったり来たりするから付き合おう』
『あー、別に今日で全部終わらせる気はないので、俺のレベルで入手が難しいアイテムがあるならそこは頼むかもしれないけど、のんびりやるんでいいですよ』
『じゃあ、最初だけ行こうか。そこからはナビが出るから場所はわかるはずだ』
【鑑定】おつかいクエストの始まりは、やはり宝飾店だった。【鑑定】って聞くとそうだよね。アランブレ西のこじんまりとした店。その店の前で困った顔をしたおじさんがいた。つるりとした頭にでっぷり太ったお腹。うーん、うーんと悩んでいる。
『彼に話しかければ始まるし、たぶんセツナ君ならおかしな選択はしないから大丈夫だと思うよ』
『ありがとうございます』
ここで八海山とはお別れだ。
「こんばんは。どうかされましたか?」
すでに夕闇が迫っている。街頭に明かりが点るころだ。
「ああ、こんばんは。いや、特に問題ないよ」
最後にため息をついてたらまったく意味がない。
「僕は来訪者なんですが、この後も暇なんで、何かお困りごとがあるならお手伝いしますよ」
来訪者なんでと言ったのは、ようは夜中も動きますってことだね。
そこでようやく彼は顔を上げた。
ふさふさ眉毛が八の字になってる。
「そうかい……実は明日の朝必要な物があるんだが、引取先がイェーメールなんだよ。ただ、今夜は私はこちらで会合があって、夜中まで動けないんだ。そうなると間に合うか不安で」
「騎獣もいますので、俺が代わりに行きましょうか?」
「見ず知らずの人に……」
「セツナといいます。まあ、信用できないかもしれないですけど……」
「いや……よし、すみませんがお願いできますか?」
ということで、ぎょろちゃんでGOだ。早い早い。
イェーメールの商業ギルドに証明書をもらってくるお仕事。お手紙を預かる。冒険ギルドにはミュスの尻尾納品でちょいちょい行くけど、商業ギルドは初めてだな。
クエストを受けたとの判定が出たようで、ナビゲーションを出すことができる。商業ギルドへも真っ直ぐたどり着いた。ギルドは夜中もやっているから助かる。
ガラの悪そうな冒険者がうろついておらず、カウンターで金のやりとりをしている人が多かった。
壁に、『1シェルを笑う者は1シェルに泣く』と書いてある。スローガン? 金言?
「こんばんは。こちらをお願いします」
手紙を渡すと受付のお姉さんは何度か頷いて少々お待ちくださいと奥の扉に引っ込む。そして、再び手紙を持ってやってきた。
「こちらを商人のアーロン様にお渡しください」
そこから、アーロン→商業ギルド→アーロン→商業ギルド→のエンドレスを繰り返す。途中お金の袋も渡された。
いやーこれは、省略したくなるのもわかる。そして、ようやく5往復くらいしたところで進展があった。
「これを、アランブレの商業ギルドへ持っていってもらえますか? 私も準備したらすぐ参ります」
アランブレは初めて。
八海山:
セツナ君、どこまで行った?
パーティーがいつの間にか解散されていて、クランチャットでの質問。
セツナ:
これからアランブレの商業ギルドへ行くところです。
八海山:
順調だね。だいたい1/3くらいまで来てるよ。頑張れ。
1/3かーいっ!! まだまだじゃん。
明日ログインしたらヴァージルとお出かけになると思うので、今日はとことん進めよう。
次はアランブレの商業ギルドから依頼を受ける。
「アーロンさんのお願いだからこちらも手を尽くしてはいるんだが……」
「そこをなんとか頼みますよ」
どうやら、アーロンさんはイェーメールに2号店を持ちたいようで、その許可を申請しているところだという。
だが、商売敵からの妨害工作で、アランブレの貴族が商売敵から頼まれて、イェーメールの貴族へ牽制しているとのことだ。
ヴァージルんちじゃん。
横やりに、イェーメールの貴族もほとほと困っているという。
「我々もしがらみがありますからねえ。……イコルム様に伝手はございませんか? ワルコー子爵様を押さえるにはそれくらいしか……」
「イコルム様、ですか……少し考えてみます」
ちなみにこれ、商業ギルドの奥の部屋に通されての会話。ワルコー子爵とやらが妨害してくる元凶のようだ。
ステータスに随時情報が更新され、イコルム子爵という欄が増える。
愛娘の誕生日が近い、とあった。
「イコルム子爵様の娘さんが、もうすぐお誕生日なのです。何か気に入る物をお持ちして」
「取り入ろうってわけですね!!」
「セツナさん……あけすけに言いすぎです」
すみません。
ギルドから店へ帰る道中、うーんと悩んでいる彼について行く。
そして予想通りの提案。
「アランブレ近くの泉に、宝石が湧くことがあるそうです」
「宝石が……湧く?」
俺の世界の常識にない。
「はい。清水石と呼ばれているのですが、美しい水を溜めたような、透明の石です。そちらを使ったアクセサリーを持ってお願いにあがりたいと思います。そこで、セツナさん。清水石を採って来てはいただけないでしょうか?」
「了解しました! 行って来ますね!!」
「気をつけて。あたりには山賊も出るそうですから」
フラグー!!
山賊倒して石を手に入れてくるぜっ!!
ぎょろちゃんで出動だ。とはいえそう遠くない。2マップくらい移動したところだ。
ナビゲーションに導かれ、ずんずん進んでいると悲鳴が聞こえた。あっぶね、ぎょろちゃん結構早いから、思いっきり通り過ぎてしまったよ。きらびやかな馬車が……山賊さんに襲われてるな。
「【氷付与】」
大勢を相手するときはこれが一番。
「【ひと突き】」
ぎょろちゃんの上から剣を振るって、飛び降りる。スキルで山賊5人中3人の足下が凍った。よしよし。
「お前たちが最近ここいらに出る山賊だな!」
「なんだ貴様は! 関係ないやつは引っ込んでろ!!」
だけどまあ、アランブレイェーメール間の敵は余裕で、俺の勝ち。
人間相手に思いっきり斬りかかっていいものかだけ迷ったが、馬車の中の人のこと考えるとやっちまった方が良きです。
全員戦闘不能になると、馬車の扉が開いてドレスを着たお嬢さんが現れた。
「危ないところをありがとうございました」
ドレスをつまんでお辞儀をする。金髪に青い瞳の可愛らしい少女だった。
「もしよろしければお名前を」
「いえ、名乗るほどのものじゃございません! 先を急ぎますので失礼しますね! 道中お気を付けて!!」
泉まであと少しっぽいからあとはダッシュだ。じゃっ! て手を上げて走り去る。
山賊は倒すみたいだったけど、お貴族様に関わってる暇ないんだ。清水石取りに行かないとね~!!
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鑑定手に入れるよー!!




