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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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162/362

162.毒薬作り

 木魔法の使い方を色々と考えながらぼけっとしていると、ビエナちゃんが起きてきた。

「おはよー」

「おはようお兄ちゃん! 全部終わってるのすごいね。あ!! ほら、あっちの畑お花が咲いてるよ」

 

 俺が栄養剤を散布した区画の一部に、紫色の花が咲いている。

「あのお花ね、花は切り花として需要があるし、葉が魔法の元なの。ついてきて~」

 葉っぱが毒魔法の元か。

 ビエナの手には鉢植えがあった。土とともにその花をくれる。

「このお花はね、一度咲くと花を切らない限り枯れない不思議なものなの。葉っぱだけとって、【調薬】で魔法の元を作るんだよ。【調薬】持ってる?」

「あー、持ってないなぁ」

「街の薬屋さんにお願いすることもできるよ」

「ならそうしてみようかな」


《『毒の花』を得ました》

《【ポイズンボム】を習得しました。使用時には『毒の素』が必要となります》


 これは、自分で【調薬】覚えた方がいいやつかなぁ~。


「ありがとうビエナちゃん」

「ううん。またいつでも遊びに来てね! でもご飯は自分で持ってきてね」

 うん。死にたくないからねっ!!


 手袋はもらったままだった。たぶんこの葉っぱちぎるのに必要だな。『毒草摘みの手袋』だって。

 ビエナちゃんの姿が見えなくなったところでクランハウスに帰還。

 ちょうど半蔵門線がいた。


「こんにちは。半蔵門線さんは、毒魔法使うのに【調薬】とったんですか?」

「とったでござるよ。結局その後派生する魔法に使う毒も自分で【調薬】するはめになるでござる。そのたびにレシピくれる親切仕様か、毒薬レシピを手に入れ【調薬】したところで新しい魔法を得られるようになっているでござる」

「てことは、毒を進めるには【調薬】は必須かぁ」

「まあ、初期の物なら拙者がやってもいいでござるよ? 『毒の花』もらったでござろう?」

「うん」

 【持ち物】からぽいっと出して見せる。


「普段はアイテムポーチでいいでござるが、これ、葉っぱをとると、生えるのに通常空間に出しておかないといけないでござる。自室に飾っておくのが一番でござるよ」

「毒草を飾る……」

「拙者の部屋は毒草だらけでござるね!」

「忍者には似合いそう」

「えっへんでござる」


 初回はってことで半蔵門線がすでに作った毒の素をくれた。葉っぱと交換だ。

「【ポイズンボム】はわりと使いやすい魔法でござる。毒になると相手の体力が持続的に減るし、それ以上にデバフが掛かりやすくなるでござるね」

「へえ~」

「派生の最初の魔法でござるから、ダメージ自体はそこまですごいものではないし、継続時間も短いでござる。サポート魔法でござるね。ボスの取り巻きなどには有効かもしれないでござる。拙者知力初期値なのであまり意味ないが」

 魔法と言うからには毒の素などを使うくせになぜか知力も必要という。


「魔法が効きにくいモンスターも、毒魔法は有効なことがあるので、魔法無効のモンスターも、【毒付与】は有効かもしれないでござる。付与自体が廃れてしまったので、【毒付与】の事例を見かけてないでござるね。掲示板に書かないソロタイプのプレイヤーが地道に使っている可能性はゼロではござらぬが」

 オワコンて言われてたらしいからなぁ。どうせVRなら、ドカンとド派手に行きたい気持ちはわかる。


「【調薬】とるのも考えます。生産施設夜中やってるみたいだし」

「セツナ殿はコーララ草とるときに薬師と関わっているから、そこに相談してみたら新たな道もあるかもしれないでござるね」

「あー、NPCと仲良くなろう大作戦……」

「NPC5人くらいなら仲良くなっている人もいるでござる。特にアランブレの初期のクエスト相手は、わりとフレンドになってくれるでござるよ。ほら、言ってた家具屋さんとか。ただ、フレンドになると確認されてないところのフレンドが多すぎるでござる。面白いからその調子でNPCたらしになるでござる!」

 人聞きが悪いっ!!


 それじゃあと、言って半蔵門線は出て行った。

 俺は部屋に花を飾ると、もちろんアンジェリーナさんの元へと駆け出すのだ。【隠密】忘れずに。

 ……あ、【隠密歩行】出た! 今度戦闘時やってみよう。ミュス相手にしてもなぁ……。なんかいいのないかね。



 夕方までアンジェリーナさんと本を堪能し、ヤーラ婆の薬屋へ行くことにした。

 毒草とかも教えてくれるかもしれないしね~。


「こんにちはー」

「おやまあ、ご無沙汰だね」

「ご無沙汰してます」

 店のラインナップを眺める。ポーション系、咳止め、解毒剤なんかも売ってる。腹下しとかあったよ。しかも買える。買ってどうするんだろう。そんなクエストあるのか?


「解毒剤あるんですね」

「そうだね、なんだ、毒持ちモンスターにでも会うのか?」

「いえ、実は今魔法使いやってまして」

「ああ、来訪者は好きな職業にコロコロ変わるって聞くよ」

「毒魔法を知る機会があったんですよ~。ただ、使うためには【調薬】が必要らしくて」

 なるほどなるほどとヤーラ婆は頷く。


「街の生産施設で【調薬】は学ぶことができるが、よかったらこの婆が教えてやろうか? ただでとはいかんがね」

「おー、お代はいかほどで?」

「なあに、例のコーララ草を採ってきてもらえばいい。時期は外れているが風邪を引いたら咳が出る。咳止めストックはしておきたい」


 ぎょろちゃんがいれば楽ちんに行ける。が。

「今から行ったら帰ってきたらヤーラさん寝てるころですね。俺もそのあと眠る時間になっちゃうし、届けるのはまた3日後くらいになりますけど大丈夫ですか?」

「ああ、構わんよ」


 ということなのでぎょろちゃんと移動の旅。

 結構ぎょろちゃんとうろうろするの好きなんだよね~。

 コーララ山脈もすぐだ。1/2の時間で行って帰ってできる。

 時間が余ったのでイェーメールの鉱石ダンジョンにもお邪魔した。

 【鑑定】目指すが、なかなか難しく。赤水晶たくさん採れたからよかったとしよう。



 次ログインしてすぐにヤーラ婆の店へ。たくさんのコーララ草を渡すととても感謝された。「それじゃあ教えてやるよ。こっちにおいで」

 カウンターの中に招待されて、奥の部屋へ。中央の机の上に小さな鍋とフラスコがいくつかあった。毒の花の葉っぱを渡す。

「毒魔法の毒の元を保存しておく瓶がいるんじゃが」

「それは、失念してました」

「まあ、安い瓶でよい。ほら、300シェルだ」

 本当に安かった。お支払いする。瓶と言うより試験管だ。


 葉を入れて、水を入れてかき混ぜて出来上がり。漏斗で試験管へ注いで行く。葉1つで試験管10本。

「魔力を込めながらこれを投げて割るって寸法じゃな」


《【調薬】、【毒の素】のレシピを習得しました》

 【調薬】が生えた~わーい!


「ついでに普通のポーションも教えてやる」


《【調薬】、【ポーション白】を習得しました》

 ポーション瓶は丸っこい。ありがたや。

「生産施設を毎度利用するのが面倒なら、小さな調薬台もある。そこら辺は財布と相談だね」

「調薬台、どこで買えるんですか?」

 生産施設にてということだった。半蔵門線とお金出し合うか? 今度お値段調査に行ってみよう。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


毒魔法手に入れたどーーん!!

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― 新着の感想 ―
毒魔法みたいに調薬したものを消費して魔法って系統他にもありそう こうやって知識を得るのと実地を積み重ねてスキルが上がっていくのエリーのアトリエ感があって懐かしいなあ
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