160.少女の手料理は死の香り
一応一人で戦おうと、やってきましたリベンジマッチ。
待たせたな、アルボルじいさん!!!
今日はヤる気満々でログインして早々にぎょろちゃんでGOした。
この間は真っ暗だったが、まだ日が出ている時間だ。森の中も薄暗いで留まっている。
たどり着くまでにウサギのモンスターに出くわす。【火付与】した剣で一発ですよ。俺の怒りの一発。美味しかったぜウサギシチュー!!
丸太小屋にたどり着くと、ドアをガンガンノックする。
「たのもーっ!!!」
ガンガンガン!
「毒入りシチューとは、いたいけな青年になんという狼藉!!」
眠剤入りなら俺も耐性あるからあんなにすぐ寝なかったよっ!! 毒はまだまだなんだ。
ガンガンガン!!
「早く出てこい!!」
ガンガンガンガン!
「やれやれ、うるさい小童め。あれで懲りたらいいものを」
「表に出ろーっ!」
広いところでやろう。
姿は昨日の好々爺のまま。だが、目が真っ黒になっていた。白目も黒いとか、悪魔じゃんもう。
「アルボルじいさんをどこにやった!?」
「ふっ、あれはもうワシ自身になっている。ちょうどよい、新しい寄生先を探していたところだっ!!」
そういって目の前のおめめ真っ黒じいさんは人間の皮を破り、巨大な木に変化した。
お名前、パラサイトオークだそう。寄生樫の木? 樫の木に寄生しているモンスター、かな?
「さあ、お前の身体を寄越せ~」
【属性看破】はするまでもなく木。お爺さんの木なんて、よく燃えそうですよ。
攻撃は根が地中をつたってやってくるのと、枝がびよーんと伸びてくる。どちらもそこまで早いわけじゃないし、地中をやってくると、地表がもこもこするのでわかりやすい。
俺も素早さ結構上がってるんですよっ! と、避けて近づき、胴体に【ひと突き】。弱点とかがわからないから決まるかどうかと思ったが、ダメージくらったようだ。
「おおおおおおお」
雄叫び上げてる。
基本属性ゲットのためだから、そこまで戦闘能力なくてもいいと思うんだよね。なんなら魔法使いでやってきてもらえるものだし。
伸びてきた枝を払うと燃えた。
「【ひと突き】!」
もういっちょやると、木が苦しそうにめきめきめきっと音を立てて裂けた。討伐完了である。
《クエスト:アルボルの寄生樫をクリアしました》
《【シードウィップ】を習得しました》
樫の木があったところには、おじいさんが倒れていた。残念だけどお亡くなりになってる。可哀想に。時間もあるし、埋めてやるか。
丸太小屋を漁って、シャベルを見つけた。引きずるのもいやだし、遺体の真横に穴を掘り掘りする。結構重労働だな。浅いとダメだと思うけどまあ、大丈夫だろ! てことですっぽり入ったらOKにしてもらった。埋めたら大きめの石をどんと置いてお祈りしておいた。
さ、家の中もう一回漁るぞ~!
言われてた通り種がたくさんあった。るんるんで回収してるとクランチャットに入電。
ソーダ:
アリの外殻持って色々当たってみたら、やっぱり酸対策用防具が一番よかろうという話になったぞー。んで、傘を作ってもらうことになった!
ピロリ:
あの黒光りするので作る傘……可愛くなーいっ!!
ソーダ:
わがまま言うな! 人数分作ったらまた合同で行くかって話になってる。作るのに少し時間が掛かるらしいから、今日は自由行動で。ただ、そろそろ酒運ばないといけないんだよな。長々クエストやってないなら1度アルバイトの方片付けたい。
柚子:
了解なのじゃ~むしろ夜中暇だから、何かしたい。工房も閉まる。
セツナ:
ファンルーアの貸本屋は夜中開いてるよ。
柚子:
なぬっ!?
100冊とりま読もうかなぁ。合計300冊読む暇はないんじゃが、100冊でプラス10もらえるならちょっと頑張りたいのじゃ。
セツナ:
フレチャに位置送っておくね。
ゲーム時間内午前10時にクランハウスか、イェーメール集合ということになった。
俺はもう1つ毒の方を片付けたい。
毒関連で初期魔法もらえそうなところが近くにあるのだ。
というのも、あの木のアルボルじいさん。本でやたらと毒草についても語っていた。何でかと思ったら、近くに薬草園があるという。薬も過ぎれば毒になるってやつね。そこを管理している人がいるというので会いに行きます。
もう日が暮れだしているけど、まあ位置確認。
俺はわりと懲りない質なのかもしれない……。
「お客さんが来るなんて嬉しいな」
少女がお料理をもてなしてくれている。
毒草園、もとい、薬草園はすぐ見つかった。こんな人里離れたところにと思ったが、広い敷地にたくさんの花々が咲き乱れ、花壇にはきちんと名札が差してある。なんでも植物を育てるのに広大な土地が必要で、街から離れた場所に暮らしているそうだ。定期的に商人が買い付けに来るそうだ。
切り盛りしているのは10歳くらいのお嬢さんでした。茶色の髪をツインテールにして、赤いリボンが可愛い。ピンクのエプロンもふりふりで、少女趣味って感じ。まあ少女だからね。
「商人のおじさん以外が来るなんて久しぶりだよ! さあどうぞ」
たくさんの料理でおもてなしされている。
セツナ:
少女がっ……少女が俺を殺そうとしてくるっ!!
ピロリ:
何事ww
セツナ:
薬草園に毒魔法探しに来たんだけどっ!!
少女の手料理に、明らかに毒草が混じってるっ! 【鑑定】なくてもわかるっ!!
サラダにスズラン添えられてますぅぅぅ!!
半蔵門線:
ああ……その少女は無自覚でござる……。1度食べて倒れるまでがセット。
セツナ:
くっそ、スズランは危険過ぎる。こっち食うか。これ、ニラに見せかけた水仙だろ!!
半蔵門線:
それは中吉でござるね~
セツナ:
え、それどっち向き? スズランは凶? 大吉?
半蔵門線:
スズランは大吉の方でござるよ~
セツナ:
くっ……水仙も危険かっ!
悩みに悩んで、これだ!! ジャガイモ! よく見ると芽がある。これでお腹壊します。
一口食べると目の前が紫色になった。
「あ、あれなに、わぁ……」
「どうしたのお兄ちゃん?」
「いや、なんか毒……」
ぐるぐるっと渦巻いて倒れました。
気付くと床に寝ていて、少女が心配そうに見ていた。
「ごめんねお兄ちゃん気がついた? 私、自分が慣れてるから、お客さんに出しちゃダメな料理なの忘れてて」
無自覚殺人!! 恐ろしい子!!
毒耐性1つ上がってる。時間は1時間ほどだったよう。後から聞いたが、毒性が強ければ強いほど、この気絶時間が長くなるそうだ。待ち合わせあるから小吉でよかった。
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
ちょっと前にニラと水仙の見分け方回ってきましたね、Xで。お気をつけください。
ニラは、ニラの匂いがするっ!!




