159.木魔法のアルボルじいさん
知力プラス。これはお知らせしておくべきか。
セツナ:
【知の泉2】を手に入れ、知力がプラス20、前のと合わせて合計プラス30。
読んだ本は301冊。
この1冊は謎です。
100冊、たぶん200冊ときたので、次は400冊でプラス40と思われます。
柚子:
にゃあああああああんじゃとぉぉぉぉ!!!!
ソーダ:
プラス30はエグいなおい。
セツナ:
びっくりでしょ。
八海山:
その1冊って、もしかして図書館で何か読んだんじゃないか? この間図書館に行ったと言っていたし。
セツナ:
あ!!
そうだ。図書館アルバイトしていたとき、そういえば1冊読んだ。
もう一度【知の泉2】の説明を読み直す。
そこには前の時と変わらずの文言が。『生を犠牲にし、知識を求める者よ』と。
セツナ:
これ、図書館の本はノーカンかも。
柚子:
ええええ!! こつこつ読んで80冊オーバーになってるのに!?
セツナ:
説明に、『生を犠牲にし、知識を求める者よ』ってあるんですよね。
つまり、ただで借りられる図書館の本はノーカン。
柚子:
おおぅ……だから301冊なんじゃな。
セツナ:
全面的に秘匿の方向でっ!!!!!
貸本屋で読みたいならイェーメールの貸本屋を教えます!
柚子:
せっちゃんが大好きなアンジェリーナさんを1度くらいは見てみたかったんじゃが、ガードが堅いのじゃ。
敵を騙すには味方からじゃないけど、知ってる人は1より0の方が情報漏洩の隙間がなくていいです。
まあ、知力は嬉しいけど、俺の目的はアンジェリーナさんと親しくなることなので目的と手段が一致してるだけ。
その後も時間いっぱいまで読み倒しましたとさ。
せっかくアンジェリーナさんが教えてくれたので、木魔法のおじいさんを探しに行くことにした。イェーメール近辺らしいので、まあ1人でも大丈夫だろう。
木のモンスターと言えば触媒の材料、エルダードリュアスを思い出す。
今回のアリ戦で結構触媒も使ったから、また歩く花狩り行かないとなぁ。
昼間の部はまた1人でいいんだけど、夜の部が1人じゃとうてい無理なのでヘルプ出さねば。風が足りない。
ぎょろちゃんに乗って夜空の旅だ。これ、シルバーボディーに月明かりが反射して、後ろ足からは火が出てる。はたから見たら、結構かっこいいんじゃない!?
なんてことを思いつつ。本にはイェーメールから少し行った先の森のマップに小屋を建てて、1人隠居暮らしとか書いてあったのだ。もうすぐログアウト時間になってしまうから、その手前あたりで、いい感じのところで終わりにしておきたい。
と思ったんだけど、気付いたら小屋を発見していた。
夕暮れだからなおのこと、森の中の明かりがよく見えた。
枯れた葉をサクサクと踏みながら歩いていると、真後ろから突然話しかけられる。
「こんなところに人が来るなんて珍しいな」
「わあっ!?」
本当にすぐ真後ろで、びびったあああ!! あれ、【気配察知】さんお仕事は!? モンスター全然いなくて、おかしいなとも思ってたんだが、びっくりだよ!
「すまんねえ、驚かせてしまったようだ」
「い、いえ、はあ、びっくりした。こちらこそ、不審者ですみません」
「みたところ、来訪者の方のようだが……よかったらうちで一休みしていくかい? 足元が危ないし、夜の森歩きはお勧めしない」
「ああ……もうすぐ眠くなる時間なのでお邪魔するのはご迷惑かと」
近くまで行ってログアウトする作戦が!!
「来訪者の方は長いと1週間眠り続けることもあるとか。連れ合いをだいぶ前に亡くしてね、ベッドが1つ空いているからもしよかったら泊まって行きなされ。さあこっちだよ」
わりと強引。だけどまあ、それもありかな?
「ここいらには何か探してやってきたのかい?」
「実は、『木とともに生きる』という本を読んで、その著者であるアルボルさんにお会いしたいなと思いまして。この辺りで暮らしてらっしゃると聞き及んだので……」
「そりゃ、たいした偶然だな。アルボルは私だよ」
「あれ!? そうなんですね。うわー光栄だなぁ」
棒読みになっていないことを祈る。
森の木はみんなどれも太く、それでも細い道が出来ていて、俺はアルボルさんの後ろを歩いて行った。
「私の本を読んで来てくれるなんて嬉しいね。さあどうぞ」
それはもう、立派な丸太小屋。
「腹は減っていないかね? ウサギ肉のシチューならあるよ」
「あ、ありがとうございます。すみません、泊めてもらった上にご飯まで」
「若者がそんなことを気にしてはいけないよ」
パンとシチューを出されて、大きな木のテーブルに向かい合って座る。一人暮らしには贅沢な、大きな丸太小屋だった。
俺は、今魔法使いを目指していること、属性を増やしていきたいこと。本を見つけて読んで、是非木属性の魔法を教えてもらいたい旨を話す。
「木属性は他の攻撃が主体の魔法と違って、どちらかというと補佐をする魔法だね。茨の蔦や、木の根を使って相手を拘束し、無力化することを狙うものが多い」
真面目にお話拝聴していた。
のだ。
していたんだよ。真面目に聞いていた。
だけど、気付いたら、ウロブルの冒険者ギルドだった。
「んなっ!?」
慌ててステータスウィンドウ。ゲーム内時間、そんなに経ってない。ええっ!? 何が起きたの!?
セツナ:
木魔法のじいさんに会いに行ったら、いつの間にかウロブルに帰ってきてるんだけどどゆ……?
案山子:
あ、初見殺し乙でーすッ!
柚子:
あのじじいにぬっころされてるんじゃよ。
セツナ:
えっええー!!!!
柚子:
ご飯食べたらだめじゃ~
半蔵門線:
拙者も木遁の術を覚えるべく向かって、あの人の良さそうなじじいに殺されたでござるね。
案山子:
もう1回行って、パラサイトオークと戦闘だねッ! 火系あれば余裕だよッ!
パラサイトオークを倒せば、木魔法、【シードウィップ】手に入るよ~。種鞭ってなにって感じだけどッwww
柚子:
ついでに丸太小屋漁って、たくさんある種拾ってくるのじゃ。木魔法は種を育ててそれを武器に使う感じじゃよっ!
半蔵門線:
じじいがモンスターでござる。
くっそおおお。そんな仕掛けがっ!!
まあ、掲示板見ないって決めたからいいんだけどさっ!
これもまたゲームを楽しんでる感…………くっ!!
もうログアウト時間だから、次は覚えてろよー!! と心の中で負け犬の遠吠えしました。
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初見殺し回。
まあ、攻略見る人はもう引っかからないです。ふらっと見つけてしまった人がやられるところ。




