156.アリの巣の仕組み
門のところに行くと、なんと、大所帯。蒼炎のキャラバンとロジック・ロジカルだ。人数多すぎて覚えきれる自信が無い。髪色で覚えよう。フレンドになれば名前頭の上に出るんだけど、基本みんな隠す設定にしてるんだよね。
というかすごい、これは、目立つどころの話ではない。
周りでは、レイド? 大型レイドくるの? などと囁きが交わされている。
「やあ、セツナくん」
「こんばんは」
ロジックのリーダーダインと、蒼炎のリーダー黒豆からの挨拶に、俺もこんばんはと返す。
「なに? 聞いてなかったのか」
「あー、クランチャットにはクラン狩りするとしか書いてなかったな、そういや」
「どうもあの女王アリに勝てる気がまったくしなくて、何か手順があるのではないかということになりました」
黒豆は相変わらず丁寧な口調なのだが、後ろのおねいさんたちの圧が今日もマックスです。怖い怖い。
アライアンスを組んで、大所帯で攻略を探ることにしたそうだ。
「動画を見ましたけど、女王アリにたどり着くまでが結構大変なんです」
「うちもヴァージルとアランいたからなんとかなってたけど、いなかったら女王に対面する前にみんなHPMPギリギリになってそうだったしな」
「エナドリ常用でも結局根本的解決にならないんですよね」
黒豆は今回のソーダの動画をかなり研究したという。
「アリの巣ダンジョンというのも1つのポイントかもしれないと思ったんです」
アリの巣は、それぞれの部屋に意味があるという。卵の世話をするための部屋、餌の保管室、繁殖するための部屋。
地下1階の前半が羽アリが巡回し、ひっかかると兵隊アリが出てくる。
後半は羽アリとともに兵隊アリが巡回している。
地下2階は羽アリと兵隊アリの集団の数が多くなる。
「どうしても僕らは、見つけたばかりのダンジョンは先へ先へ進もうとしてしまって、脇道まで行かなかったんですけど、本来アリの巣は縦に作られ、横に部屋がたくさんあるんです。もしかしたら回り道が最適解なのではと思いました。ただ、正直アリが強くてそこまで調べ尽くしている余裕がなくて」
「それで、今回みんなで脇道を潰していこうって話になったんだよ」
「眠りダンジョンでレベルは上がってきているので、レベルはクリアしているはずなんですよ」
そういえば、ソーダも迷い無く階段へ進んでいた。半蔵門線の【気配察知】スキルが強すぎて、モンスターが多い方へ向かえば自ずと道が開ける状態だったらしい。
1階部分はすでに他の攻略動画でも上がっていたそうだ。
とりあえずクラン同士でパーティーを組んで、さらにアライアンスを組む。
『じゃあ以降はアライアンスチャットで~』
アリダンジョン手前で色々と打ち合わせ。
剣を使う人たちはみな付与を欲しがった。
残念。3回しか使えません。案外というか、みんな、全然まったく【MP譲渡】を持っていないという事実。
柚子と案山子は他クラン魔法使いへ【MP譲渡】をしまくるという係になった。
付与が欲しければ俺にMPを渡せというギブアンドテイク方式。それを叶えるために生やそう【MP譲渡】!
『やっぱりNPCとの絆は羨ましいね』
とはダイン。なんといっても経験値を分け与えなくていい火力が仲間入りする。実質効率アップ。
『お嬢様は戦闘全然ダメらしいけど』
『あそこはまた例外だろ。お貴族様のフルコース食べて、テーブルマナー学んでたぞ』
『めっっっちゃ怒られてたわ』
ゲームの中でも怒られるの嫌だな。
羽アリは接敵即撃墜。それは変わっていない。この人数がいるならばと落とした羽アリを 総出で【風付与】剣でざくざく切り刻む。
『ヴァージルのやってた【風塵】やりてぇー!!』
同じような長剣使いのダインが叫ぶとみんながうんうん頷いてる。
『【風塵】は持っていないんですね』
『やってることは【なぎ払い】みたいなもんだからな。噂の付与固有スキルかもしれない』
みんな付与専門じゃないから固有スキルは当然持っていない。
『僕は【火付与】メインだったので、【風塵】は出ていません。固有スキルは派生型と、特定の人物やスクロールから学ぶパターンとがあります。【風塵】は確かに【なぎ払い】に似ていましたから、風で【なぎ払い】を続ければ、もしかしたら派生するかもしれないですね』
黒豆の剣にも俺が付与をした。つまり、まだ錬金術師には会えていない模様。ごめんな……解禁するまで俺、話せない。
ダンジョンの部屋は固定だということで、潰していけば一定時間そのままだ。ゲーム時間内で半日ほどだそう。ボスはだいたいもう少し早くに復活する。美少年もそうだった。扉付きのボス戦もあるらしく、そうなると入場制になるそうだ。そういったところは前のパーティーが負けるか勝つかして帰還したら扉が開いてボス戦となる。
言われてみれば、横に結構脇道がある。そこがそのまま部屋となっているタイプや、さらに道があって、分岐していた。ダンジョンの天井は俺たちの2倍くらいの高さがあって、そこまで圧迫感はない。
柚子は【MP譲渡】で楽をするのじゃと宣言しているので、兵隊アリが多いときの【フロストサークル】はロジックの氷魔法使いだ。蒼炎には氷使いはいないらしく、風使いの範囲攻撃で処理していたという。
とはいえ、数の暴力とはこのことだろう。
落ちた羽アリが可哀想になってくるくらいの有様だった。
『この部屋は……貯蔵庫、かな?』
どうしたって虫が嫌いとか、ダメなものってあると思う。
一応ゲーム内で多少の配慮はあって、リアルさは少ない。デフォルメされたアリやらなにやら。
この貯蔵庫も本来を想像してみれば阿鼻叫喚なわけだが、転がってるのは丸い緑色の大きな団子だ。餌ってポップが出ている。
『餌、全部燃やして供給を断ってみよう』
火で燃えるかな? といいつつ魔法使い組がファイアーアローをたんまり喰らわせると、緑色が真っ黒な消し炭になっていた。
同じように順番に隣の部屋を覗くとここいら一帯は貯蔵庫だったらしく、全部燃やし尽くした。
『よしよし。相手の兵站を押さえたと』
途中なんと働きアリに遭遇した。
『属性変わらず!』
【属性看破】を持っているらしい蒼炎の赤髪のエルフが叫ぶ。
6体いたので【フロストサークル】からのそれぞれの個体へ強攻撃を加えることとなった。
『働きアリは初めてだったな』
『黒豆の説が当たりかもな。他の部屋も潰していこう』
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誤字脱字報告も助かります。
ピロリが気付くとおネェになってる……
気をつけてるのにおネェに。
初手の雰囲気と違うのはわかってるのに!!
くっ……




