154.付与の剣のお値段
うええん。長剣で炎の【なぎ払い】が夢だったのに~!
「そんなに、俺、長剣向いてないですか?」
「うーん、あれは鋭さもまあ、もちろん刃だから使うと言えば使うんだが、どちらかというと筋力で、刃を押して切るところも出てくるんだよ。大剣ほどではないがな」
「今の5倍くらいは腕を太くしないとなぁ」
5倍……獅子座の宝珠でプラス30になっているからかなりつぎ込まないといけない。素早さについつい振っちゃってたからなぁ。
「俺らの腕を見てみろよ! 鍛冶屋はどうしたって力が必要になるからなぁ。毎日ハンマー振るってりゃこうなるのよ!」
といって急に筋肉自慢始まった。
やめてくれ、興味ないからっ!!
「まあ、依頼主の望みなら長剣用の見積もりもだせるけどな」
「ううん……ちょっと知り合いにも相談してみてからにしようかなぁ」
「まあ、概算になるが、長剣なら必要な素材をとってきたら、5000万シェル、細剣なら、4500万シェルってとこかな。状況によっちゃもっと上がる」
た、たけえええええ!!!!
「素材採ってくるのも結構大変だからなぁ。それでも一生ものだし、自分の命預ける武器だから」
「相棒を作るなら、それなりの対価は必要だぜ」
「大変だぁ……」
「ちなみに、付与に向いている金属は魔鉱石てのがあってな、そいつが馬鹿高けぇのよ」
「マジックストーンゴーレムの採掘場から採ってくるには許可がいるしなあ」
「その代金が時価だ」
んんん……。
「あとは、レインボーシータートルからごくたまに取れる、透明のレインボータートルエッグって宝石があって、あれが付与の伝導率を上げる。剣に組み込むと色がつくのが不思議なんだ」
「これもかなりする」
ヴァージルにお願いし倒す。
「この2つは長剣だろうが、細剣だろうが必要なものだ。そして希少性が高いから値段が馬鹿高い!!」
「レインボーシータートルは……自前でなんとかしたい!」
「お前1人でいけるか??」
「俺が魔法放つ係で、知り合いに一撃で倒してもらう感じで……」
「なかなか手に入りにくいもんだから、まあ気長に通うといいさ」
双子座の加護に全力ですがろう。
あといくつか共通の必要素材を聞いて、俺は飲兵衛たちに別れを告げた。
誰に聞いてみるか考えたが、方々に聞いてみることにした。
まず、ヴァージル。
概算と、細剣をお勧めされた……長剣ダメ? という趣旨で送ってみる。
あとは、クランチャット。
セツナ:
イェーメールの飲んだくれ小人族に、付与剣の値段聞きに行ったら、長剣より細剣をゴリゴリ勧められた。
どうやら筋力が足りないらしい。
ソーダ:
www NPCの見立ては確かだろうなぁ。こだわりないならそっちでもいいんじゃね?
突き刺す系だよな、細剣って。
ピロリ:
あんまり細剣使ってる人見たことないし、面白いんじゃない?
半蔵門線:
みんな違ってみんないいでござるよ……
セツナ:
なんか元気ないですね、半蔵門線さん。
ピロリ:
この間言ってた本、全部読み終わったのにクエストのとっかかりがないんですって~
忍者への道が。
セツナ:
あー、今度またローレンガの貸本屋さんに行って、俺も、なんでしたっけ? らっぱ?
半蔵門線:
透波でござるが、乱波も忍者の異名の1つでござるね。
何カ所かローレンガの店の名前に似たものもあったので、仲間内で捜索中でござる。
頑張ってる様子。
半蔵門線:
まあ、拙者も日本刀の固有スキル出したり忙しいでござるから、気長に、気長に頑張るでござる。セツナ殿も、浪漫を求めるのはアリでござるよ~ただ、それに見合ったステータスというのも確かにあるのはある。
拙者は長剣何回か使ってみたけれど、速さがあるとぶん回すよりはなで切りしたり、刺したり投げたりの方が良いとは思ったでござる。
つまりこの村正改よりも、小太刀があったらそっちに流れるかもしれん。
うえーん。それでも半蔵門線は結構筋力にもステ振りしてるんだよなー。
その半蔵門線ですら、長剣は扱いにくいと。
悩ましいな。
イェーメールから始まりの平原に戻り、ミュス狩りをしながらその日は頭の中で悩み続けた。
ログインするとメールが来ていた。
ヴァージルからで、時間があったら騎士団へ来てくれとのこと。
それならこの間口に入っていないだろうカツサンドを持って、お伺いする。
今は夕方、たぶん食事の時間が近い。
騎士団の敷地に入るには、神殿近くの扉から行くのだが、そこには一応門番がいる。
が、すでに顔見知り認識らしく、笑顔でいらっしゃいと挨拶された。
ここはもっとお互い仲良くなっておくべきだと、カツサンドを1つ渡す。賄賂の正しい使い方である。
そのまま勝手知ったるで外の訓練場を横切ろうとしたが、目の端にキラキラした空間を発見。ヴァージルです。あちらも気付いて手を振る。
「ちょっと待っていてくれ」
聖騎士団は今見習いも含めて100人ほどらしい。多い。めちゃくちゃ多い。それだけの人間に渡せるカツサンドはさすがにない。
VRは、基本いい匂いしかしない。悪臭はカットされているらしい。されてなかったらさ、100人のいい年した男が詰め込まれてる寮とか絶対入りたくないよねー。
消臭剤とかなさそうだし。
「セツナ、屋内訓練場へ。アラン!」
「はいよー、すぐ行くから先行ってて」
今日もアランさんを伴うらしい。
「カツサンド持ってきましたよ」
「それは嬉しいな。この間のエナドリの反動。すごかった。あんなに食べ物を食べても食べても満たされないのは初めての経験だった」
「お腹が壊れなくてよかったです」
「本当に、そこは不思議だ」
ヴァージルが笑って言う。本当に、反動がEP減るでよかったよ。
先日【なぎ払い】を見せてもらった屋内訓練場。
そこに準備してあったのは、細剣だ。
「セツナが長剣にこだわるのは、この間俺が【なぎ払い】を見せたからだろ?」
「う、うん、はい、ソウデスネ」
俺の反応にヴァージルがまた笑った。いい笑顔すぎるんだよー。今日のヴァージル・アスター、いただき。
「細剣はまだ身体が出来上がってないときに結構使っていたんだ」
「お待たせ~、【風付与】でいいかな?」
「ああ、頼む」
アランの付与でヴァージルが持っていた細剣がふんわり光る。
そして構えた先には丸太が立っている。
「【青嵐】」
ヴァージルが、素早く何度も丸太の方に向かって突く動作をした。
すると、太い丸太がバラバラと崩れ落ちた。
ビュッと風の音が何度も聞こえたあとの出来事だ。
「細剣には細剣の特殊スキルがある」
か、かっけえええええええ!!!!!
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
セツナくんは基本チョロいです。
ちょっとリアルバタついててストックがゴリゴリ減ってます。
ストック10になったら一旦更新を止めるつもりですが、まあ、6月中はいけると思いたい……。
感想お返事も隙間見て書きたいとは思ってるんですが〜




