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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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145/362

145.さらば黄色親分

 黄色親分も土属性だ。【属性看破】を戦闘のたびにかけるようにしているので、結構育ってきた気がする。

 わからないということがほとんどなくなった。


『地、土系の魔法は足場悪くなるものも多いから気をつけろ』

「【一身集中】」

「ごげええええ」

 長い舌が伸びたかと思ったら、ソーダの盾に絡みつく。


「させないわよっ!」

 ピロリの双剣が舌を切断、する直前でしゅるると舌が戻って行った。ノーマル親分の舌にはじかれた俺だが、今は水付与がなされている。

『【なぎ払い】をすると水の刃みたいに切れ味がよくなるよ』

 ピロリの双剣は俺のダガーより刃渡りが長い。ダガーではできない【なぎ払い】のスキルはあるはず。

『了解』

「【ウォーターボール】」

「【ウォーターボール】」

「【投擲】」

 魔法使い二人の【ウォーターボール】からワンテンポ遅らせての【投擲】でタゲを取る。が、舌が柚子の方に伸びたのでダガーを振るう。

 すると、途中で向きを変えて戻って行った。


『水嫌ってるなぁ~魔法使い二人、水のでかい魔法なかったっけ?』

『ないッ! 【ウォーターボール】は火力マシマシ速度マシマシでいけますッ!』

『ないのじゃ! 同じくウォーターはいける』

『舌を切るのを嫌がってる感じがすごいするな』

 八海山の言葉に、俺もうんうん頷く。


『舌を狙って行くためには囮が必要よ~』

 伸ばしてもらわないといけないからね。


 囮は、……俺かな?


『仕方ないんで、一番前で弱っちい【ウォーターボール】打ちます』

『弱くなくてもいいのじゃ』

 それならば、と俺は衣装チェンジ!!

 そう、知力プラス30の白衣です。

 ローブの防御力剥がしてやったぜっ!!

 ちゃんと聞いたんだ、この白衣、くれって。

 そしたら、あげるのはだめって言われた。だがそこであきらめるには知力プラス30が惜しくて、じゃあ、研究者気分を味わいたいから、キノコ採りに行くまで貸してくれってお願いした。

 そうしたら、譲渡不可で貸してくれました。ちょっとだけだぞって言われた。


『せっちゃんなんじゃそれ』

『博士みたいッ! カッコいいッ!!』

『知力プラス30の【ウォーターボール】を受けてみよ!!』

『『欲しいいいいい!!!』』


「【ウォーターボール】」


 俺が狙いを定めた瞬間、親分が俺に舌を伸ばしてきた。まあ、俺の【ウォーターボール】は詠唱速度遅くてまったくもって当たる気がしないんだけど。それでもちょっと本気を見せたら食いついた。


 食べられは……しないよね????


 身体に巻き付いた舌をピロリが狙う。あと、舌を伸ばすのに集中してたのか、俺の【ウォーターボール】一応当たってる! 結構ダメージも入った。

 だがその時、まさかの子カエルたちが茂みから現れて、ピロリに舌を伸ばす。

 10匹はいる。

「【フロストサークル】」

 柚子がすかさず、行動制限のために親分もかするよう、【フロストサークル】を唱えるが、親分の舌の強さに間に合わない。てか、口、開けてるぅ!? 俺も【フロストサークル】に突っ込んじゃう!


「た、助けてぇ〜〜」


「【ウォーターカッター】」

 突然、強い力で引っ張られていたのが止まり、多少の慣性の法則を受けつつ地面に落ちる。

 一緒に親分の舌も落ちている。


「ゴギャアゴオオオオ」


 舌を失った黄色親分がのたうち回ったところへ、柚子の【フロストサークル】がかする。俺は慌てて起き上がる。


「リリさん!?」

「セツナ、あなたはなんで水辺で私を呼ばないのよ!」

 またもや失念してた。てか、あれ呼んだことに入るの?


 親分は少しだけ凍結している。


「あなたが呼ばないと私は地上に出向けないのよ!?」

 そして黄色親分に向き直る。


「【ウォータートルネード】」

 湖の水が、渦巻きながら黄色親分を襲う。

「まだとどめにはならないよ!」

 リリの言葉に、みんなが一斉に動き出した。

 ソーダも剣を抜いたので俺はすかさず唱える。

「【水付与】【ウォーターボール】」

 【ウォーターボール】で打ちのめされているところを、ピロリとソーダが左右から貫く。


「ゴエェェェェェ!!!!」

 断末魔とともに、黄色親分が倒れた。

 


 《『ビッグイエローブルフロッグ』を パーティー名ソーダと愉快な仲間たちが初討伐しました》




『お、アナウンス。ただまあ、フィールドボスとかではないな。初討伐』




 リリさんには、水辺で分が悪いときはもう少し早く呼びなさいと説教された。このパーティーならいけると思ったんだよ~!!


「いつも助けてくれてありがとうございます。何かお礼は――」


「そんなの別にいいわよ。散歩気分だし。ああ、私を伴侶にしてくれたら――」

「それは無理ですね」

「もう! いっつもこれなのよ、あなたたちセツナの友人でしょう? なんとかならないの?」

 彼女の怒りに苦笑するクランメンバー。


 それでも伴侶はお断りなのである。


「もう……じゃあ、今度綺麗なものをちょうだい?」

「綺麗?」

「キラキラしてるものが好きなの」

「うーん、俺の財布の範囲で何か探しておきます」

「お高い宝石とかはいらないのよ。キラキラした物が好きなの。ウンディーネはね」

 そう言って水の中へと沈んでいった。キラキラかぁ~。


『ウンディーネはガラス細工が好きって、なんかで読んだ気がするのじゃ。今度綺麗なガラス瓶でも作ってやるのじゃ~』

『ありがとうございます。じゃあ俺の採った砂金渡しちゃおうかな~』

 ガラスのブレスレットとか? ビーズみたいな。女性が好きそうな物か……ちょっと考えねば。


『さ。討伐アナウンスがあるなら最低でも3時間は出てこないから、ヘビ捕まえてきてとっとと脂汗も集めようぜ~』

『捕まえてどうやって持ってくるかじゃ。捕獲キットとか、店売りでなかったからなぁ』

『え、別にヘビなんか掴んでもってくればいいじゃん』

 ソーダの言葉にみんな、えっ? とちょっと引く。

『いけるいけるってー。しかもあいつかみつきと沈黙しかやらないし。かみつきがかなり痛いけど、俺なら何回かかみつかれても平気だから、かみつかれながら顎辺り掴んでやりゃあイチコロよ』


 どうぞどうぞとソーダに譲って、本当にその通りに捕まえていた。わおー。

 マップを戻って湖の畔、ヘビを持っているソーダには少し離れてもらって、俺はイエローハイマッシュルームに手を出す、と、舌が伸びてくる。

 ダガーで切るのではなく、舌を捕まえる。


「ゴギャッ!?」


 魔法を放ってくるが、俺は舌を掴んだままカエルをぶん回してソーダのいる方へ。

 瓶を開けて待つ柚子。

 ソーダの持つヘビ。

 俺がぶん回すカエルちゃん。


 しゃーっと威嚇音を上げながらこちらへ沈黙飛ばしてくる。もちろん、カエルもかかった。

『よっしゃー! 柚子さん!』

『ぎゃー、カエル間近で見るの無理なのじゃー!』

 叫びながらも蓋を開けてくれているので、カエルちゃんを放り込んだ。そして蓋を閉める。 蓋は、金属でバチンと留める結構近代的? なもの。果実酒用に作っていたらしい。


『さあ、どうなるかな?』

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


舌を回されたカエルが一番かわいそうです。

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― 新着の感想 ―
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 白衣、貸し出すのもダメなんじゃ 類稀なる交渉術で貸してくれたんかな?
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