145.さらば黄色親分
黄色親分も土属性だ。【属性看破】を戦闘のたびにかけるようにしているので、結構育ってきた気がする。
わからないということがほとんどなくなった。
『地、土系の魔法は足場悪くなるものも多いから気をつけろ』
「【一身集中】」
「ごげええええ」
長い舌が伸びたかと思ったら、ソーダの盾に絡みつく。
「させないわよっ!」
ピロリの双剣が舌を切断、する直前でしゅるると舌が戻って行った。ノーマル親分の舌にはじかれた俺だが、今は水付与がなされている。
『【なぎ払い】をすると水の刃みたいに切れ味がよくなるよ』
ピロリの双剣は俺のダガーより刃渡りが長い。ダガーではできない【なぎ払い】のスキルはあるはず。
『了解』
「【ウォーターボール】」
「【ウォーターボール】」
「【投擲】」
魔法使い二人の【ウォーターボール】からワンテンポ遅らせての【投擲】でタゲを取る。が、舌が柚子の方に伸びたのでダガーを振るう。
すると、途中で向きを変えて戻って行った。
『水嫌ってるなぁ~魔法使い二人、水のでかい魔法なかったっけ?』
『ないッ! 【ウォーターボール】は火力マシマシ速度マシマシでいけますッ!』
『ないのじゃ! 同じくウォーターはいける』
『舌を切るのを嫌がってる感じがすごいするな』
八海山の言葉に、俺もうんうん頷く。
『舌を狙って行くためには囮が必要よ~』
伸ばしてもらわないといけないからね。
囮は、……俺かな?
『仕方ないんで、一番前で弱っちい【ウォーターボール】打ちます』
『弱くなくてもいいのじゃ』
それならば、と俺は衣装チェンジ!!
そう、知力プラス30の白衣です。
ローブの防御力剥がしてやったぜっ!!
ちゃんと聞いたんだ、この白衣、くれって。
そしたら、あげるのはだめって言われた。だがそこであきらめるには知力プラス30が惜しくて、じゃあ、研究者気分を味わいたいから、キノコ採りに行くまで貸してくれってお願いした。
そうしたら、譲渡不可で貸してくれました。ちょっとだけだぞって言われた。
『せっちゃんなんじゃそれ』
『博士みたいッ! カッコいいッ!!』
『知力プラス30の【ウォーターボール】を受けてみよ!!』
『『欲しいいいいい!!!』』
「【ウォーターボール】」
俺が狙いを定めた瞬間、親分が俺に舌を伸ばしてきた。まあ、俺の【ウォーターボール】は詠唱速度遅くてまったくもって当たる気がしないんだけど。それでもちょっと本気を見せたら食いついた。
食べられは……しないよね????
身体に巻き付いた舌をピロリが狙う。あと、舌を伸ばすのに集中してたのか、俺の【ウォーターボール】一応当たってる! 結構ダメージも入った。
だがその時、まさかの子カエルたちが茂みから現れて、ピロリに舌を伸ばす。
10匹はいる。
「【フロストサークル】」
柚子がすかさず、行動制限のために親分もかするよう、【フロストサークル】を唱えるが、親分の舌の強さに間に合わない。てか、口、開けてるぅ!? 俺も【フロストサークル】に突っ込んじゃう!
「た、助けてぇ〜〜」
「【ウォーターカッター】」
突然、強い力で引っ張られていたのが止まり、多少の慣性の法則を受けつつ地面に落ちる。
一緒に親分の舌も落ちている。
「ゴギャアゴオオオオ」
舌を失った黄色親分がのたうち回ったところへ、柚子の【フロストサークル】がかする。俺は慌てて起き上がる。
「リリさん!?」
「セツナ、あなたはなんで水辺で私を呼ばないのよ!」
またもや失念してた。てか、あれ呼んだことに入るの?
親分は少しだけ凍結している。
「あなたが呼ばないと私は地上に出向けないのよ!?」
そして黄色親分に向き直る。
「【ウォータートルネード】」
湖の水が、渦巻きながら黄色親分を襲う。
「まだとどめにはならないよ!」
リリの言葉に、みんなが一斉に動き出した。
ソーダも剣を抜いたので俺はすかさず唱える。
「【水付与】【ウォーターボール】」
【ウォーターボール】で打ちのめされているところを、ピロリとソーダが左右から貫く。
「ゴエェェェェェ!!!!」
断末魔とともに、黄色親分が倒れた。
《『ビッグイエローブルフロッグ』を パーティー名ソーダと愉快な仲間たちが初討伐しました》
『お、アナウンス。ただまあ、フィールドボスとかではないな。初討伐』
リリさんには、水辺で分が悪いときはもう少し早く呼びなさいと説教された。このパーティーならいけると思ったんだよ~!!
「いつも助けてくれてありがとうございます。何かお礼は――」
「そんなの別にいいわよ。散歩気分だし。ああ、私を伴侶にしてくれたら――」
「それは無理ですね」
「もう! いっつもこれなのよ、あなたたちセツナの友人でしょう? なんとかならないの?」
彼女の怒りに苦笑するクランメンバー。
それでも伴侶はお断りなのである。
「もう……じゃあ、今度綺麗なものをちょうだい?」
「綺麗?」
「キラキラしてるものが好きなの」
「うーん、俺の財布の範囲で何か探しておきます」
「お高い宝石とかはいらないのよ。キラキラした物が好きなの。ウンディーネはね」
そう言って水の中へと沈んでいった。キラキラかぁ~。
『ウンディーネはガラス細工が好きって、なんかで読んだ気がするのじゃ。今度綺麗なガラス瓶でも作ってやるのじゃ~』
『ありがとうございます。じゃあ俺の採った砂金渡しちゃおうかな~』
ガラスのブレスレットとか? ビーズみたいな。女性が好きそうな物か……ちょっと考えねば。
『さ。討伐アナウンスがあるなら最低でも3時間は出てこないから、ヘビ捕まえてきてとっとと脂汗も集めようぜ~』
『捕まえてどうやって持ってくるかじゃ。捕獲キットとか、店売りでなかったからなぁ』
『え、別にヘビなんか掴んでもってくればいいじゃん』
ソーダの言葉にみんな、えっ? とちょっと引く。
『いけるいけるってー。しかもあいつかみつきと沈黙しかやらないし。かみつきがかなり痛いけど、俺なら何回かかみつかれても平気だから、かみつかれながら顎辺り掴んでやりゃあイチコロよ』
どうぞどうぞとソーダに譲って、本当にその通りに捕まえていた。わおー。
マップを戻って湖の畔、ヘビを持っているソーダには少し離れてもらって、俺はイエローハイマッシュルームに手を出す、と、舌が伸びてくる。
ダガーで切るのではなく、舌を捕まえる。
「ゴギャッ!?」
魔法を放ってくるが、俺は舌を掴んだままカエルをぶん回してソーダのいる方へ。
瓶を開けて待つ柚子。
ソーダの持つヘビ。
俺がぶん回すカエルちゃん。
しゃーっと威嚇音を上げながらこちらへ沈黙飛ばしてくる。もちろん、カエルもかかった。
『よっしゃー! 柚子さん!』
『ぎゃー、カエル間近で見るの無理なのじゃー!』
叫びながらも蓋を開けてくれているので、カエルちゃんを放り込んだ。そして蓋を閉める。 蓋は、金属でバチンと留める結構近代的? なもの。果実酒用に作っていたらしい。
『さあ、どうなるかな?』
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舌を回されたカエルが一番かわいそうです。




