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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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143/362

143.黄色カエルの脂汗

 日を改めて参りました。

 まだ見学許可証は有効。10日間って言ってたから、だいたい3日だ。

 詰め所の人に挨拶をして許可証を見せると、笑顔で送り出される。

 色々検討したが、まあ、何に使うかを聞いてみて、だ。


 扉をノックすると入室許可の声がした。

「こんにちは」

「ああ、君か。それで、採れたか?」


 俺は無言でイエローハイマッシュルームを取り出すと、ブラウン先生はガバッとソファから立ち上がる。見たことのない機敏さ。


「ちょっとまってください! 先生はこれをどうするおつもりですか!?」

 俺が聞くと、ブラウン先生はにやりと笑う。

「お前、【鑑定】持ちか!! いいな。ちょっと手伝え」

「残念。友人に【鑑定】してもらいました」

「チッ、惜しいな。【鑑定】は来訪者だけの特殊スキルだから、喉から手が出るほど欲しい。持ってりゃどの研究室からも引っ張りだこだろうよ」

 おお……やっぱり覚えよう。


 ブラウン先生はひょいと俺の手からイエローハイマッシュルームを取り上げると、食べはしなかった。

 そばにあったビーカーに入れる。


「研究に必要なんだ。こんなもん食べやしない。やる気はみなぎらなくていいからなぁ」

 研究はあくまで自堕落に生きるためなのだと豪語する。

 それはそれですごい。


「今から実験しに行くが、見に来るか? それとも、ここで約束通り生活魔法を覚えるか?」

 あああ……そんなこと聞かれたらついて行くしかないじゃないか。

「ならこれを着ておけ」

 タンスの中から取りだした白衣を投げつけられる。

 ローブをしまい、着ると、うわあ……知力プラス30なんだけどこれえ!! 欲しいな……。MPめっちゃ増えてる。


 廊下をすたすた歩くブラウン先生の後を、置いていかれないよう必死で追う。何この人、とんでもなく足早いんだけど?

 駆けることができない。少しでも走ろうとすると、《廊下は走らない》と注意が入る。あんまりやるとペナルティありそうで、走れない。


 2枚、廊下の突き当たりの扉を開ける。2枚目は俺の許可証では開かない物だった。先へ行っていいか悩んで戸惑ってると、早く来いと急かされる。


「その白衣きてりゃバレないよ」

「うう、これでルール違反で入れないってなったら先生、責任とってくださいねっ!!」

「嫁にはもらえん」

「それはこっちからお断りだ」

 思わず飛び出た言葉にブラウン先生は笑った。

 

「ほら、来い。――よお、ヤバイキノコ手に入ったぞ」

「おお!! 同志よ!! みんな、実験器具揃えろ」

 ブラウン先生の部屋は、10畳くらいの大きさだった。

 しかし連れて来られた研究室は3倍はゆうにある。テーブルもいくつもあった。理科室みたいな、水道が壁にあったり、謎の機械がたくさん。ドラフトチャンバーまであった。有毒ガス出る-??


 ブラウン先生が話しかけた人以外に5人が箱とか、チューブとか、フラスコ、顕微鏡のようなものまで、広いテーブルに揃えていた。


 フラスコの中でぐつぐつ煮出されたキノコからあがる湯気が、ガラス管とチューブを通っていく。途中冷やされて、液体がぽたりぽたりと溜まっていった。黄色いっ!!


「これが毒物の濃縮成分だ。舐めただけでぶっ飛べる」

「素人にはお勧めしませんな」

 お断りです~。


「だが、毒は時に薬になる!! 弱めて培養したものをゼロールというモンスターに与えれば、そいつの生成物から俺たちの研究しているものが作り出せる……可能性がある!!」

「いやー、イエローハイマッシュルームの生息地にはビッグイエローブルフロッグがけっこうな頻度で出ますからね」

 黄色親分……。

「俺たちみたいなか弱い研究員にはとうてい無理な相手だ」

「助かった。本当はもっと欲しいがなぁ……」

「というか、イエローブルフロッグも研究したいんですけどね~あれなかなかに強くて捕獲しても管理しきれないという」

「イエローブルフロッグの恐慌状態になったときにしたたり落ちる油、あれを採取したいんですが、なかなかこれが」

 ガマの油みたいなやつ??


「おい、追加のイエローハイマッシュルームと、イエローブルフロッグの脂汗。採ってこれねえか?」

「いや……あー、キノコは友人に同行を頼めばもう少しなら。あのカエル結構強いんですよ~。俺そんな強くないんでギリギリでした。でも、脂汗はどうやって出したらいいか……」

「そうだな。なんか苦手なもんでも目の前に持っていってやればいいんじゃないか?」

 

 カエルの苦手な物、蛇?


 なんか……いたなぁ…………。




 見学許可証が切れると言ったら、特別許可証をくれた。こちらは有効期限なし。切られるときは切られるやつだ。さらになんと!! このおつかいをうまくこなせば、生活魔法研究室の横にある休息スペースを貸してくれるとか。

 え、これ、もしや学園と同じく帰還ポイント増える!?

 そうなればいつでもアランブレに戻れるし、ウロブルにも来られる。欲しいっ!!


 アンジェリーナさんとの定期的な密会(俺目線です)のために、クランメンバーに募集をかけてみる。


セツナ:

ビッグイエローブルフロッグ。今後は黄色親分と呼ばれるであろうヤツと、戦う可能性があるマップに行ってくれる人っ!!


ピロリ:

はいっ!!


セツナ:

ちなみにちっちゃいノーマルな方は土属性でした。水がまあ、効くかな? みたいな。


柚子:

土なら氷もわりあい効くのじゃ。別に時間合わせて行くのはおっけーじゃよー?


ソーダ:

今案山子と授業中なんだよ~。それが終わってからなら!


八海山:

構わないよ。


 んん?? そういえばござるの気配を最近感じてない。


セツナ:

半蔵門線さんの声を最近聞いていないんですけど。


ピロリ:

あら、そうね。


半蔵門線:

いるでござるけど、拙者ちょっと忙しいのでパスでござる。すまぬ、セツナ殿!


セツナ:

いえいえ、別に強制じゃないし……忍者見つかりました?


 まさかのウロブルにいた?


半蔵門線:

図書館で同志たちと探しているところでござる。

透波(すっぱ)の珍道中という全56巻を読破しようとしているんでござるー!!


セツナ:

透波(すっぱ)


半蔵門線:

忍者の異名でござるよ。他にも草とかも言うでござるね。


 へええ。てか、とうとうヒントあったのか。よかったねー。

 そりゃ大忙しだ。しかも56巻とか。


セツナ:

あ、そうそう。カエルの脂汗も欲しいとかいう注文があって、方法としては、蛇に睨まれたら脂汗かくかなって。


ピロリ:

どうやって睨ませるのよ~


セツナ:

そのカエルが生息する場所の少し前に蛇型のモンスターいたんですよね。


八海山:

それは、フラグってやつだね。


 問題はどうやって蛇を持って行くか。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


【鑑定】は、覚えるのはまだまだ先です。

単に手が回らない!!


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― 新着の感想 ―
野生小魔物?の虐待反対!!!?!!!!
ガマの油なら鏡でも行けるんちゃう?w
この小説のいいところは、絵にするとシュールで面白い情景がさらっと流れていくところ 図書館で大人しく本を読んでる忍者集団……
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