142.水辺の救世主
ぎょろちゃんに乗って空を行く。
うーん。これ飛行系に属するのかなぁ。でも、定期的にジャンプするか、ぼぼぼぼって火力増やしているんだよね。
羽ばたいてはおりません。
途中飛行系のモンスターがやってきた。
何かわからないが、【投擲】で羽根狙ったら穴が開いて落ちていった。
中途半端なの放置していいのかなと思いつつ、下にはなんかエグそうな蛇がいたので降りたくありません!! あ……蛇が食べた……。ご愁傷様。
実感は湧かないが、獅子座の宝珠のおかげか【投擲】の威力が増しているようだ。石をもっと集めておかないといけないな。
【持ち物】の中が石ころだらけとか、リアルでは遠慮したい状態。
やがて木が多くなり、水辺に出た。
多分言っていた湖だ。
「ぎょろちゃん、降りよう」
背を撫でると、次第に降下していく。突っ込んでいくのではなく、くるりと旋回しながら徐々に高度を下げていくのだ。
気遣いの塊。愛おしい。
赤水晶を渡して石に戻ってもらった。
降り立ったところで、あからさまに異質な黄色いキノコを見つけた。かさの部分が黄色で、赤い斑点がある。
毒やろ……それか食べたら大きくなりそう……。
まあそれでもお望みの品なので、いただきます。
手を伸ばしたところをぴゃっと何かが通り、目の前にあったキノコが消えていた。
デジャヴぅ!!!
今まで察知できなかった気配が現れた。
見やると、黄色いカエル。
イエローブルフロッグ。
うぇー、やりあったらビッグイエローブルフロッグ出てきたりして?
色を見るにこれが主食なのだろう。
さて、また舌を切るか? イエロー親分登場はやだなぁ。絶対一人じゃ勝てない。
【属性看破】でイエローは土属性なのはわかった。土属性攻撃はほとんど通じない。属性は結構面倒らしいが、ほぼ共通なのは、同属性は攻撃が効きにくい。
属性プラス物理なら、物理だけが反応するらしい。
光と闇のような完全なる対立は珍しいそうだ。
土は防御に長ける。固まれば強い。わりあい効くのは水だそうだ。硬い土も水を山ほど与えれば軟らかくなる。
「【水付与】」
さあ、キノコ狩り、始めようか!!
俺がキノコに手を伸ばす。横からしゅっと盗っていく。
親分のところと違うのは、カエルの数だ。周りを見回しても1匹しかいない。
他から狙われないのは助かる。
なので、俺は例のごとく軌道を狙って手を伸ばした瞬間、しゅっとダガーを走らせた。
「ゴゲエエエ!!!」
手応えアリ。そして、飛んでくる石つぶて。
はあああ!? あいつ魔法使いカエル!?
つよっ!!!
石つぶて痛いっ!!
紙装甲に酷い仕打ち!!
まさか魔法が来ると思っていなかったので、一度目はもろに喰らった。HPごりっと減って泣きそうになりながら回復ポーションを飲む。2発目はこちらも構えていたので逃げられた。
「【ひと突き】」
水流がカエルを襲うが、あちらもひょいっと避ける。
近づこうとすれば、石つぶてに襲われ、中距離攻撃の【ひと突き】は避けられる。
「【ウォーターボール】」
水の球がカエルを襲うが、それもひょいひょいっと避けられた。
あちらさんも敏捷値高いっ!
どうにもこうにも決着が付かない。
仕方ないのでキノコ狩りを隙を見て押し進めようとすれば、怒り狂って石つぶて。
これ以上採取できない。1つじゃなあ。
「誰かにお願いすれば良かった!! ヘルプミ〜」
「はあい! 助けが欲しいの?」
俺の叫びに後ろから声が掛かる。本気でびっくりして飛び上がった。
そこにいたのは――、
「リリさん!?」
ウンディーネのリリだ。青い髪、今は白いワンピースを着ている。不思議と湖の中から来たくせに濡れている感じはしないのだ。
「水辺は私たちの領域だって言ったでしょう? 連絡が入ったのよ~。手を貸しましょうか?」
「貸してください~。カエル、土属性だから、水は結構効くかも?」
「そうね、その黄色いカエルは、私に掛かればイチコロよ♪ 【ウォーターボール】」
俺の水の球みたいなへろへろのが1発じゃない。ぐるんぐるんしてる水の球が恐ろしい勢いで、イエローブルフロッグへ向かう。
「ゴゲェ」
か細い断末魔とともに、カエルの姿が消えた。
ドロップは黄色蛙の矢毒。
毒持ちかーい!! 危ない危ない。
「助かりましたリリさん」
俺はいそいそとキノコを集めた。
「そのキノコ、あんまり食べるのはお勧めしない感じだけどー?」
「ですよね、幻覚見そう。頼まれ物なんですよ~」
「ふうん。セツナが食べなければいいけど」
「参考までに食べるとどうなりますか?」
「ふふ……、丸1日生きてるのが楽しくなって、次の日死にたくなるわ」
完全に、あかんやつー!!!
「何に使うんだろ……」
「人が食べるものじゃないから、気をつけてね」
リリが湖の中に沈みだした。
「ありがとうございました!!」
帰り道、またもや飛んでくるのを【投擲】で落として、蛇の餌を作る作業。
途中からぎょろちゃんが火を吐いたんですけどおお!!
【ファイアーアロー】というよりは【ファイアーボール】かな?
ぼっぼっぼっと音をさせて、火の玉が飛んできたヤツを打ち抜いていた。
事前に案山子に連絡を取っておいて、黄色キノコを鑑定してもらう。学園前だ。
「か、案山子さん、制服っ!?」
「あ、そうそう~。成人しているように見えるエルフの制服姿って、ちょっと微妙だよねー!!」
ブレザー着てた。ネクタイして、かっこ……なんだろう、年齢層高めのアイドルみたいになってる。
「イエローハイマッシュルーム」
「名前がもうアカン」
「食べればたちまち元気になり、丸1日行動力が上がる。だが、翌日は死んだように動けなくなるだろう」
「存在がアカン……」
「セツナっち、これどうするの……」
「学院の先生のおつかいクエストです。渡していい物かどうか」
「ぶっ飛んでる先生だった? 常用者?」
「どちらかというと、やる気はない先生だね」
怠惰の極み。
素直に渡していいか悩むところ。
さて、どうしましょうかね。
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
地属性と土属性はNPCもどちらも言うのでどちらもありです。
(私の表記ゆれが激しいからどっちもありだよ!!)
リリさんが鯉のぼりボートレースで来なくて、今回来たのは、ヘルプしたからですね。助けてぇーて。




