132.やんちゃが過ぎる2人
騎士団長、副団長によるやんちゃで、森が火の海に!!! ならなかった。
燃えるのはあくまでエルダードリュアスだけだ。
なんでーっ!?
『ここの木は水で潤ってるからね』
『だから森の中でも遠慮なく火を使えるんだよ』
やりきったお二方が笑顔で答えてくれるが、俺は逃げるのに必死でした。
水を得た魚のごとく、水を得たエルダードリュアスは一気に枝を四方へ伸ばした。
後衛のアランのところまで。
その前に戦ったエルダードリュアスは遠巻きに眺めているだけでよかったのに、今度は必死で逃げ回り、この際だと自分のダガーも付与して追いかけてくる枝先をぶつぶつ切ってやった。
大変でした。でもおかげさまで、枝は40本近くになった。
『この方が効率がいいな』
『もう1体くらいこれで行こう』
やだ、このつよつよ騎士様。
たぶん、俺のことも、最悪守れるし、上手に逃げたね、程度にしか思ってない。
あとね、すごいレベルあがったんだけど……ここのところヴァージルと狩りをしていたので、Lv25はゆうに越え、30までこの調子ならあと何回か一緒に狩りしたら行けるな~とか思ってた。目標は45くらいで遠いんだけども。
Lv30になりましたよ……。
前2体分も確かに結構たまったけど、強化させたエルダードリュアス、すごい経験値あるらしいです。つまり強い。
そして、走り回るとEPが危ない。
『休憩を希望します!』
『そうだね、少し休もうか』
俺はレジャーシート代わりの布をばさっと広げた。
最近地べたに座ってご飯をたまにやるけど、嫌だったんだよね~なんか。
3人寄り添って座ることになったけどまあいいや。
そして、今回の狩りのメインである牛丼をお2人へ。ヴァージルウキウキだな。また牛さん狩りに行かないと。そして作ってもらわねば。
香辛料で鞄がいっぱいって言ってた。醤油とかみりんとか、そういったものはどうしているのだろう??
『これが牛丼っ!!』
『米という物の旨さを俺はこの年で知った』
ヴァージル満足そう。そして、アラン。一口食べて、カッと目を見開く。
『なんだこれは……』
『牛丼です。肉は、ブルーブルです』
『甘さとしょっぱさが、独特の風味で、……旨い!!』
『だろう? 案山子はすごい』
案山子さんともフレンドになってあげてください。是非。
しかし、牛丼でここまでアガるなら、『湧き水亭』のお料理大変なことになるな。今度連れて行ってみよ。面白そう。
『お代わりいります?』
『頼む!』
『俺にももう1杯もらえるかな、セツナ』
こいつら牛丼2杯ぺろりしたぞ~。
EP回復して元気いっぱいになった俺たちは、もう1度ウォーターボールからのエルダードリュアス狩りをした。合計75本の枝を得る。俺が38本もらっちゃったよ。
『いやあ、新しい発見だった。狩りも面白かったよ。また行こう』
『こちらこそ、付与ありがとうございました』
『ヴァージルはどうするんだ? 枝を取ってきたなら、あそこに連れてくんだろ?』
ちらりとアランが俺を見る。
含みのあるそれに、俺は首を傾げる。
なになに? 何が始まるの?
『セツナは信用できる』
『まあ、お前がそう言うのなら俺は止めない』
なにーっ!?
イェーメールでアランはパーティー退出。それじゃあと手を振られるが、フレンド申請は来なかったね。ほら、普通ほいほい渡すもんじゃないんですよ。最初にちょっともらいすぎた。
『それじゃあ、セツナが大丈夫ならウォーキングフラワーに行こう。その後は俺が始末して触媒の材料を集めておくよ』
『あ、もしかして、花びら?』
すっと、ヴァージルの表情が険しくなった。
『昼間だけだと言ったはずだが?』
『いや、えーと、昼間だけのつもりだったんだけど、ソーダがあそこは昼夜セットで、と』
『ソーダか……』
『クランメンバーが一緒に狩りをしてくれて』
『そうか。彼らは本当にバランスの良い強いパーティーだな。ただ、セツナ1人はとうてい難しいからやめてくれよ』
それはもう、よくわかってますので。
『そうか、もう花びらがあるのか……それじゃあ、触媒を作るか……』
ついてくるよう言われて行った先は、イェーメールの薬屋さん。以前、ヴァージルと待ち合わせをした店だ。
「やあ、団長様」
「その言い方はやめてください。こちらは俺の友人のセツナです」
「こんにちは」
お利口さんの挨拶しておくよ。
「いらっしゃい。何が入り用かな?」
「実はセツナが、付与の道に足を踏み入れてね」
ヴァージルの言葉に、薬師はすっと眉をひそめる。
「そうか。それはおめでとう」
「そういうわけなんだ」
2人は押し黙る。
睨むでもなく、何か目で会話してる。
つまり、居心地がすこぶる悪い。
なんとなく俺察しちゃってるんだよなぁ~。でもな~言っちゃダメって言われてるし。だってさ、思い出してみる。本の内容検索できる。
アラン・マクイーン著『付与についての考察』に書いてありましたよ。
いつまで経っても進まない。
ん? これ進まないのか。
あー、本読んでるからここまでこれたやつ? 錬金術を本来知ってるってところでスイッチ入ってるんじゃなくて、俺がアランさんの著書を読んだから始まってるやつ。
つまり俺が動かないといけないのか。
下手に別情報あるから悩んじゃったよ。
「『元来付与とは、この世から消えた錬金術師の分野だったと聞く。』って、アランさんの著書にありましたね」
2人がはじかれたようにこちらを見た。驚きに目を丸くしているが、ヴァージルは笑った。
「アランの馬鹿はそんなことを本に書いているのか」
「『付与についての考察』にありましたね」
俺とヴァージルのやりとりに、薬師さんは肩を落とした。
「錬金術師が今の世においてどのように扱われているか知ってるか?」
「預言書を盗み出したのが錬金術師だと言われて、迫害を受け、いなくなった、というところは知ってます。だから、もし、目の前に錬金術師が現れても、俺はそれを声高に言うつもりはないです」
内緒にしてねって、アンジェリーナさんに頼まれちゃったもん!
ってか、ヴァージルは知らないのかな? いや、知ってて試されてるまであるぞっ!! 俺の口から錬金術師のワードを引き出して、アンジェリーナさんとの仲を裂こうとする運営になんて負けないからなっ!!!
店主はふぅっとため息を漏らした。
「触媒の材料を出してみろ。作ってやろう」
2人目の錬金術師ゲットだぜーっ!
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
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錬金術解禁がまた一歩近づいた!!




