131.高火力パーティー
アランの騎獣は虎だった。白い虎。白虎もかっこいいな。
まあ、それ以上に俺のぎょろちゃんに食いつかれましたが。
「羨ましい。いや、俺のスノーが世界一可愛いが……」
基本みんな己の騎獣にメロメロになるのかな??
「ぎょろちゃんは、とても賢い良い騎獣だからな、羨ましがる気持ちはわかる」
ヴァージルの口からぎょろちゃんって出てくるとなんかおかしい。
「ぎょろちゃん、幸運値が高いのか、【フロストダイス】というスキルとすごく相性が良かったです」
「なら、セツナも【フロストダイス】を習得するよう狙ってみるのもいいかもしれないな」
「今度柚子さんにどんな風に手に入れたか聞いてみようと思います」
「聖騎士に【フロストダイス】持ちはいなかったな~」
ヴァージルにお勧めされたので後で聞いてみよう。せっかく氷取ったし。まあ、俺が投げたらマイナス補正だけども。
「セツナ、今日行く場所は少しレベルが高い。俺が【MP譲渡】するから、付与の練習をしてみて、戦闘は基本こちらに任せてくれていい」
「火に弱いモンスターばかりだから、火の付与でいいよ」
「了解です」
本日はアランもパーティーに入れてる。NPC2人入りパーティーとか豪華だな。
イェーメールからファンルーアは基本飛行船だ。とはいえ、道で繋がってはいる。深い谷間があるので大回りをしなければならないというだけだ。
イェーメールから結構行ったところ。もう真夜中近くになっていた。
『エルダードリュアスというモンスターがいるんだが、その枝が触媒として非常に優秀なんだよ』
『木のモンスターだからよく燃える」
『枝取るのに、燃やしちゃっていいんですか?』
『全部燃やすわけじゃないし、残った枝を回収できればいい』
『反対に水属性は相手を強化することになるから厳禁だ。どんどん増えていく』
ほうほうほう。
『そんなに数がいるわけじゃないから、ゆっくり進んでいればいいよ』
そういって速度を落としたヴァージルは、地に降り立ち騎獣を石へ戻す。俺もぎょろちゃんに赤水晶をあげた。
周囲は森。木だらけだ。
『とっても興味深かった』
アランが消えゆくぎょろちゃんを名残惜しそうに見ている。
ぎょろちゃんファンがここにまた増えましたね。
『セツナ、付与を頼む』
初実践付与。
こうやって事前情報があれば、付与を先にしておけるからいい。知らない土地の場合は、魔法で試してからを勧められた。
ちなみに触媒はアランがくれた。気前がいい!!
「【火付与】」
ヴァージルの剣に手をかざして、手のひらに乗せた触媒の粉をふっと吹く。すると剣がぼぉっと音を立てて炎に包まれた。
夜なので一層明るく輝いて、それに照らされたヴァージルはイケメン度ましまし。パシャパシャ。
『アラン、どうする?』
『ヴァージル騎士団長様の活躍の場を奪っちゃいけないでしょう~というか俺今日も弓っすよ。後衛に回りますって』
『なら、セツナが2番目で』
そうか、アランは弓か。
『弓は、矢に付与するんですか?』
『そうだね。普通は矢にする。まとめて10本くらいは付与できるよ。ただ、俺は魔弓だから』
『まきゅう?』
アランはくるりと後ろ向きになる。
『弓はほら、背負ってるだろ? これ。矢は持ってきてない』
『んん??』
『矢は魔力で作り出すんだ。これで』
左手の中指に、銀色の指輪がある。
『この弓幹を左手で握る。で、弦を引く。そのときに、この矢環に付与をしておけば、魔力の矢ができて、それが属性を帯びるんだ』
『か、かっけええええ!!!』
『だろっ! 魔弓はかっこいいんだよ~』
早く射るところを見てみたい。
と、気配がする。
『北西に1体』
『了解』
ちなみに付与は30分くらいらしい。
上書きも可能。
『セツナ、気が向いたら【ファイアアロー】してもいいよ』
『魔力なくなっちゃう。【投擲】でヘイト取る方がましかな~』
『うーん、セツナの逃げ足で逃げ切れるかどうか……』
あ、エルダードリュアスそんな強いのか。レベル差かなりあるようだ。
『まあ、セツナに向かう前に俺が接敵するし、魔力はいくらでも【MP譲渡】するから気にしなくていいよ』
『戦い方脳筋なのに、ヴァージル魔力豊富だから大丈夫だよ~』
『アラン、お前が先頭行くか?』
『弓職に前衛させるなんて、冗談がキツいですよ騎士団長』
ホント仲いいんだな。
団長と副団長が仲の良い騎士団とか、めっちゃやりやすそう。
二人揃って鬼畜だと死ぬけど。そこまでじゃなさそうだしな。……いや、ヴァージルスパルタだった。
『それじゃあ行くよ』
火が付与された剣はそれはもう効いた。
ヴァージルが炎を纏いながら、舞っていた。いやー、真っ暗な森の中。赤やオレンジの光に照らされて、木が燃える燃える。森消失しない? と思うが、そこは不思議と周りには燃え移らないのだ。
これは、下手なことできないなと、ファイアーアローをちょっとばかり打って、遠くから様子を見ている。次のヤツが来ないか【気配察知】を定期的に使う。
そしてアラン。
火の矢がすっとエルダードリュアスに吸い込まれていったかと思うと、爆発する。
その火力がすさまじく、思わず後ろを振り返ったらにやりとされた。
弓つっよ!!
そうして接敵後5分もせずに終了。
だが、次の接敵まで20分もかかった。
『数あまりいないんですか?』
『そうだなあ。あんまりいたら困るモンスターだな』
『1体1体が強いからね~』
『2人を前にすると強そうに見えないんだけど……』
劣勢になる隙間もない感じ。
『まあ、駆け出しでもやれるくらいだからな』
『1体に掛かる時間は俺らの2倍以上だけど』
そして得た枝は3本である。
うーん、効率が悪い。
俺の表情に考えが現れていたのだろう、ヴァージルがまあ、と笑う。
『正直同時に5体来ても余裕だが、こればかりは仕方ないよ』
『セツナ君。回収枝は半分ずつね』
うーん。
『水を得ると力を増すんですよね?』
『増殖するね』
と答えたヴァージルが固まる。
アランも真顔になった。
考えていることはみんな同じか?
『いやいや、どんなことになるかわからないし?』
『……そうだな、どんなことになるかわからないし?』
顔よ、顔。イケメン2人がにやりってしてる。
『セツナ、【ウォーターボール】覚えたって言ってたよな?』
森がっ!! 森が燃えるっ!!
ふぁっ!!
森が火事になる勢いで、大変。大変だよおお!!!
『あとはどれだけ枝が得られるか、だな』
『水を得ると枝が恐ろしく増えて伸びたから、かなり取れそうな気がする』
余裕の2人の間を、俺は右往左往した。とにかく足を引っ張らないよう、伸びてくる枝から必死に逃げた。思いつきを適当に言う物ではない。
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