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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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131/362

131.高火力パーティー

 アランの騎獣は虎だった。白い虎。白虎もかっこいいな。

 まあ、それ以上に俺のぎょろちゃんに食いつかれましたが。

「羨ましい。いや、俺のスノーが世界一可愛いが……」

 基本みんな己の騎獣にメロメロになるのかな??


「ぎょろちゃんは、とても賢い良い騎獣だからな、羨ましがる気持ちはわかる」

 ヴァージルの口からぎょろちゃんって出てくるとなんかおかしい。

「ぎょろちゃん、幸運値が高いのか、【フロストダイス】というスキルとすごく相性が良かったです」

「なら、セツナも【フロストダイス】を習得するよう狙ってみるのもいいかもしれないな」

「今度柚子さんにどんな風に手に入れたか聞いてみようと思います」

「聖騎士に【フロストダイス】持ちはいなかったな~」

 ヴァージルにお勧めされたので後で聞いてみよう。せっかく氷取ったし。まあ、俺が投げたらマイナス補正だけども。


「セツナ、今日行く場所は少しレベルが高い。俺が【MP譲渡】するから、付与の練習をしてみて、戦闘は基本こちらに任せてくれていい」

「火に弱いモンスターばかりだから、火の付与でいいよ」

「了解です」


 本日はアランもパーティーに入れてる。NPC2人入りパーティーとか豪華だな。




 イェーメールからファンルーアは基本飛行船だ。とはいえ、道で繋がってはいる。深い谷間があるので大回りをしなければならないというだけだ。

 イェーメールから結構行ったところ。もう真夜中近くになっていた。


『エルダードリュアスというモンスターがいるんだが、その枝が触媒として非常に優秀なんだよ』

『木のモンスターだからよく燃える」

『枝取るのに、燃やしちゃっていいんですか?』

『全部燃やすわけじゃないし、残った枝を回収できればいい』

『反対に水属性は相手を強化することになるから厳禁だ。どんどん増えていく』

 ほうほうほう。

『そんなに数がいるわけじゃないから、ゆっくり進んでいればいいよ』

 そういって速度を落としたヴァージルは、地に降り立ち騎獣を石へ戻す。俺もぎょろちゃんに赤水晶をあげた。

 周囲は森。木だらけだ。


『とっても興味深かった』

 アランが消えゆくぎょろちゃんを名残惜しそうに見ている。

 ぎょろちゃんファンがここにまた増えましたね。


『セツナ、付与を頼む』

 初実践付与。

 こうやって事前情報があれば、付与を先にしておけるからいい。知らない土地の場合は、魔法で試してからを勧められた。

 ちなみに触媒はアランがくれた。気前がいい!!

「【火付与】」

 ヴァージルの剣に手をかざして、手のひらに乗せた触媒の粉をふっと吹く。すると剣がぼぉっと音を立てて炎に包まれた。

 夜なので一層明るく輝いて、それに照らされたヴァージルはイケメン度ましまし。パシャパシャ。


『アラン、どうする?』

『ヴァージル騎士団長様の活躍の場を奪っちゃいけないでしょう~というか俺今日も弓っすよ。後衛に回りますって』

『なら、セツナが2番目で』


 そうか、アランは弓か。

『弓は、矢に付与するんですか?』

『そうだね。普通は矢にする。まとめて10本くらいは付与できるよ。ただ、俺は魔弓だから』

『まきゅう?』


 アランはくるりと後ろ向きになる。

『弓はほら、背負ってるだろ? これ。矢は持ってきてない』

『んん??』

『矢は魔力で作り出すんだ。これで』

 左手の中指に、銀色の指輪がある。

『この弓幹(ゆがら)を左手で握る。で、弦を引く。そのときに、この矢環(やかん)に付与をしておけば、魔力の矢ができて、それが属性を帯びるんだ』

『か、かっけええええ!!!』

『だろっ! 魔弓はかっこいいんだよ~』

 早く射るところを見てみたい。


 と、気配がする。

『北西に1体』

『了解』

 ちなみに付与は30分くらいらしい。

 上書きも可能。


『セツナ、気が向いたら【ファイアアロー】してもいいよ』

『魔力なくなっちゃう。【投擲】でヘイト取る方がましかな~』

『うーん、セツナの逃げ足で逃げ切れるかどうか……』


 あ、エルダードリュアスそんな強いのか。レベル差かなりあるようだ。

『まあ、セツナに向かう前に俺が接敵するし、魔力はいくらでも【MP譲渡】するから気にしなくていいよ』

『戦い方脳筋なのに、ヴァージル魔力豊富だから大丈夫だよ~』

『アラン、お前が先頭行くか?』

『弓職に前衛させるなんて、冗談がキツいですよ騎士団長』

 ホント仲いいんだな。

 団長と副団長が仲の良い騎士団とか、めっちゃやりやすそう。

 二人揃って鬼畜だと死ぬけど。そこまでじゃなさそうだしな。……いや、ヴァージルスパルタだった。


『それじゃあ行くよ』


 火が付与された剣はそれはもう効いた。

 ヴァージルが炎を纏いながら、舞っていた。いやー、真っ暗な森の中。赤やオレンジの光に照らされて、木が燃える燃える。森消失しない? と思うが、そこは不思議と周りには燃え移らないのだ。

 これは、下手なことできないなと、ファイアーアローをちょっとばかり打って、遠くから様子を見ている。次のヤツが来ないか【気配察知】を定期的に使う。


 そしてアラン。

 火の矢がすっとエルダードリュアスに吸い込まれていったかと思うと、爆発する。

 その火力がすさまじく、思わず後ろを振り返ったらにやりとされた。


 弓つっよ!!


 そうして接敵後5分もせずに終了。

 だが、次の接敵まで20分もかかった。


『数あまりいないんですか?』

『そうだなあ。あんまりいたら困るモンスターだな』

『1体1体が強いからね~』

『2人を前にすると強そうに見えないんだけど……』

 劣勢になる隙間もない感じ。


『まあ、駆け出しでもやれるくらいだからな』

『1体に掛かる時間は俺らの2倍以上だけど』


 そして得た枝は3本である。

 うーん、効率が悪い。


 俺の表情に考えが現れていたのだろう、ヴァージルがまあ、と笑う。

『正直同時に5体来ても余裕だが、こればかりは仕方ないよ』

『セツナ君。回収枝は半分ずつね』

 うーん。


『水を得ると力を増すんですよね?』

『増殖するね』

 と答えたヴァージルが固まる。

 アランも真顔になった。


 考えていることはみんな同じか?


『いやいや、どんなことになるかわからないし?』

『……そうだな、どんなことになるかわからないし?』


 顔よ、顔。イケメン2人がにやりってしてる。


『セツナ、【ウォーターボール】覚えたって言ってたよな?』


 森がっ!! 森が燃えるっ!!

 ふぁっ!!

 森が火事になる勢いで、大変。大変だよおお!!!


『あとはどれだけ枝が得られるか、だな』

『水を得ると枝が恐ろしく増えて伸びたから、かなり取れそうな気がする』


 余裕の2人の間を、俺は右往左往した。とにかく足を引っ張らないよう、伸びてくる枝から必死に逃げた。思いつきを適当に言う物ではない。

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― 新着の感想 ―
『この弓幹ゆがらを左手で握る。で、弦を引く。そのときに、この矢環やかんに付与をしておけば、魔力の弓ができて、それが属性を帯びるんだ』 矢は魔力で作り出すって話ですから、ここで出来るのは魔力の矢じゃな…
育てて刈り取る。 これが林業の始まりである。(てきとー)
これぞ真のマッチ(火付与)ポンプ(ウォーターボール)
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