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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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13.恋人たちの待ち合わせ

 別に、家具屋なら他を当たればいいのだ。

 問題は、ここがアンジェリーナさんがオススメしてくれた家具屋だということだ!

 なんとしても家具を買おうという意思を相手に伝えたい。

 趣味に合うものがなかったり、高すぎたときは諦めるが、アンジェリーナさんの好意を無にしたくない。


 通りがかりのおばちゃんの話をまとめると、……あれか。男女の恋のもつれに親が出てきたやつー!!

 めんどくさいやつだ。

 が、まあそうも言ってられないので再びお店にお邪魔しますよっと。


「すみませーん」

「しつこいな! 家具は作れないんだよ、出ていってくれ!」

「いや、1つ……2つだけ確認したいことがありまして。マルスさんは、ユリアさんのことはもう好きではなくなったんですか?」

 俺のこの質問は彼の逆鱗に触れて、追い出されはしなかったものの、怒涛のようなユリアへの愛について語られる。

 砂吐きスキルを手に入れそうだったぜ……。興味のない他人の恋バナキツイな。


「わかりました。マルスさんがいかにユリアさんを愛しているかということは! では、それならどうして待ち合わせの場所に行かなかったんですか?」

「は? 行ったさ。俺はちゃんと時間通りに。来なかったのはユリアの方だ。俺は半日待っていた。それで何かあったのかと探してみたら、あいつ、ウォルと仲良さそうに歩いてやがって……」

 新しい名前が出てきたなぁ。 


 その後怒れるマルスをなだめすかして聞き出したところ、そのウォルとやらはマルスと同じく家具店の息子で、ただ職人兼店舗を構えているマルスとは違って、職人を抱え家具を売ることを専門としているらしい。


 マルスも何度もお抱え職人へと勧誘されているのだが、作るよう注文が来るのは量産品で、確かに一般家庭にはそれでいいかもしれないが、マルスが作りたいのは一点物。なので何度もお断りしているという。最近ではあからさまな嫌がらせも受けていると。


「なんでそんな男と歩いているんだと殴りかかったら」

 手が早いな……。


「ユリアがそいつをかばって。次の日にはユリアの親父さんからお前にやる木材はないと取引中止を言い渡された」

 因果関係があからさまに露骨で……。

 面倒だから関わりたくないが、アンジェリーナさんおすすめの家具屋の青年が潰れるという事実に悩む。

 仕方ない。本当に面倒なことになるまでは付き合うか。


「事情はわかりました。今はユリアさんに近づけもしないということですよね」

「まあ、そうだな」

「代わりに真意を聞いてきてあげましょうか?」

「……なぜそこまでする?」

 お前のためじゃない。

「暇なので。あと、テーブルが欲しいんです。クランハウスに。八人掛けのかっこいいやつが。ま、嫌いになったとかなら諦めてくださいねー」

 そう言い捨てて、先ほどのおしゃべり情報もりだくさんのおばちゃんの元に向かった。




 いやーおばちゃん本当に便利。

 材木屋を教えてくれた上に家族構成やらなんやらすごい情報垂れ流してくれた。

 家具屋通りからかなり歩いたところに、運河があり、それに沿って木材の保管倉庫が並んでいる。どこがその問題の材木屋か覗きながら歩いていると、樽の上に女性が座っている。

 このゲームの便利なところは消す処理をしていなければ頭の上に名前が乗っかっているところです!

 ユリアちゃん発見!


「こんにちは」

「……こんにちは」

 警戒されてる。まあ、不審者。

「俺は来訪者で、正直こんなことに巻き込まれるつもりはなかったのですが、ユリアさんはどうしてマルスさんとの待ち合わせの場所にこなかったんですか?」

 時間もったいないから直球で。早く本、読みたいじゃん?


「は!? 待ち合わせに来なかったのはマルスの方じゃない!!」

 俺の質問に彼女は怒りをもって応えた。

 ほうほうほう。


「マルスさん、半日待っていたそうですよ?」

「それはこっちの台詞よ。半日待ちぼうけだった上に変な男たちに絡まれて……」

「それは、災難でしたね。ちなみに待ち合わせはどこだったんですか?」

「あの日は、運河下流のいつものベンチよ。ちゃんとそう連絡があったから行ったのに」

 マルスは運河上流の広場だと言っていた。


「待ち合わせお互い聞き間違えてしまったんですね」

 俺の断言する口調に、ユリアは戸惑う。


「それはないわ。いつもの約束の隠し場所には、下流の合図があったし」

 二人は、デートが父親や他の職人たちに見つかるとからかわれて嫌なので、どこで待ち合わせをするかは、先ほどの運河に掛かった橋の下に、二人のマークを彫り込んだ木彫りを置く場所で、こっそり連絡しあっていたそうだ。


「下流でと木彫りが置いてあったから、私は向かったのに」

「誰かにいたずらされたんじゃないですか?」

「あの木彫りは私たちが一つずつ持っていて、了解したら木彫りのところにもう一つを置くの。二つ揃ってたら回収してそこへ向かって、別れるときにまた渡すのよ。あの日は変な男たちに絡まれて、そこへちょうどきたウォルが助けて送ってくれる途中だったのに、いきなりマルスが殴りかかるんですもの」


 そしてその現場を見ていた職人たちから親父さんへ話が行き、元はと言えば約束をすっぽかしたくせにとお怒りからの取引中止だということだ。


「お父さんに取引中止されたらマルスは仕事が出来なくなってしまうから、それはやめて欲しいんだけど……」

「そんな不誠実な男なのに、ユリアさんは彼の心配をするんですね」

 ぽろりとこぼしたら、今度はいかにマルスが素晴らしい男性かということを嫌と言うほど聞かされた。砂吐きタイム再来である。


 しかしこれは、どう考えても、ウォルが怪しすぎて。


「そのおそろいの木彫り、借りてもいいですか?」

「え……嫌よ」

「じゃあ見せてくれますか?」

 揃いの、可愛いリスの木彫り。台座の裏には二人の名前付き。

 ただ、そこまで精密なものではない。


「これってどのくらいの時間で作ることができるんですか?」

「マルスなら30分で作ってたわ」

 すぐ出来るのか。


 これは確認だなぁ。





 ということで、マルス側にも可愛いリスちゃん木彫り確認しました。二つ。

 さーて、ということはこれは仕組まれた悲劇!


「絶対ウォルのやつだ。あいつの仕業だ!!」

 まあそうでしょうね。

 ただ、問題なのは今そのウォルさんとやらが親父さんにとっては正義になっているところだよ。

 どうにかしないといけないのは親父さん。


ブックマーク、評価、いいねをしていただけると嬉しいです。


すべてはアンジェリーナさんのために!

が合言葉。

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― 新着の感想 ―
 なんかこう、他の作品の「なんでそこまでするの?」という主人公の行動理由、お人よしすぎ、とかの違和感が解消されていて、気持ちいいですね。いっそ清々しい。  すべては女神のために!  はい、オススメの所…
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