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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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128/362

128.なんでもありリレー

「俺、選手にならなくていいんじゃないですか? 確実に足を引っ張りますよ……」

「でも、他のチームが納得しないのよ~」

 最初のウンディーネ、リリさんが、困った顔をして言う。

 俺にやられてるからなぁ。


「まあ、リレーで負けてもすでに2競技勝ってるから、総合では勝ちだから大丈夫」

「うーん」

 【ウォーターボール】のスクロールが欲しいんですよお~!

 1つ負けたら商品のランク下がりそう。


 水の中、ふわふわしてるから走りにくいしなぁ。


「まあ、そこは仕方ないわよ。前の2試合で圧勝したし、私たちはもう満足してるから」

 とはルルさん。

 いや、俺が困るんですってばー。


 黄色チームきゃっきゃしてるけどさ~、他チームの視線は痛いです。

「さあ、行きましょうセツナ」

 リリさんに促されて渋々出場って、アンカー渡されたし。もー。


 そして、予想通り、ウンディーネたちの個体差はさほどない。だいたい同じくらいで水底に敷かれたトラックを走っている。

「あっ、今赤の子が魔法で妨害したわね」

「でも、緑の子、上手く避けてたわ」

「……妨害ありなんですか」

「そうよ、傷つけるような危険なものじゃなければ、多少はいいのよ」

「そうそう、小さな範囲なら問題ないわ」

「セツナは狙われるわね、気をつけて」


 確実にやられるやつだよ。


 走者は5人。第4走者が走り出した時点で、団子だ。ほとんどみんな差がない。

 俺もバトンパスの位置に立った。


 おう、お姉さんたちの圧がすごい。


「あなた、リリの申し出を断ったんですってね」

「私たちは伴侶を得れば、地上を自由に行き来できるのよ。伴侶を得ることは大切なことなの。ひどい子だわっ」


「いやー、俺には心に決めた人がいるので」


「もしかして、妖精の求婚を知らないの? 別に伴侶とはいえども、人間同士の結婚とは違うのに」

「一緒に旅をするだけよね」

「ただ、大切にしてくれないと、私たちはまた魂を失ってしまうけど」


「いやー、俺には心に決めた人がいるので」


「融通の利かない子ねっ!」

「ほんと、憎たらしい」


 憎悪マシマシになっちゃった。

 そして第4走者が迫る。うん、また団子だ。

 さてー、やるかぁ~!


「セツナ! 頑張って!!」

「はーい! 【冷凍】」

 お姉さんたちの足先を、ちょっと凍らせてもらいますよ。


「キャッ!」

「わっ!!」

「何っ!?」


 走り出そうとして足が離れないと言う事態に、彼女たちは軽くパニックになる。

 その間に俺は、ちょっとでも距離を稼ぎますよ~!!


 と思ったら身体が横に吹っ飛んだ。

 水の中なので、必死で腕をかいたら止まったが、魔法使われてる!

 【冷凍】はそこまで強いものじゃないから、すぐ後ろを追いかけてきていた。


 これは、やれることを山盛りやってしまえということかっ!


「キャッ! 熱い!!」

 突然の顔面【沸騰】サービス。いや、すぐ周りの水で温くなると言うか、突っ込むときに温くなってるけど、それでも熱いだろう。妨害です。


「またっ!!」

 また【冷凍】です。これ、凍結とかあったらもう少し長くなるんだろうな。まあでも、足が動かなくなって多少の妨害にはなってる。


 緑と青が多少後ろの方に。だけど赤のお姉さんはしぶとい。

「絶対に、絶対にこの競技だけは勝ってやるんだからっ!!」

 鬼気迫る表情でぴったり後ろをつけてくる。

 魔法を使うと余計な動作が入るらしく、彼女はもう何もせずただひたすら走っている。

 正解です。水の中だと俺の方が足遅い。


 もうすぐゴールだ。ゴールテープが張ってある。

 赤ハチマキのおねえさんが先を行く。


 くそ、この手だけは使っちゃダメだと思ってたけど。


「【引き寄せ】」


 リレー、バトンなんだよね。

 俺の手元にすっと入る赤いバトン。それをぽいっと後ろへ放る。



 見事ゴールしたのは赤チームからの黄色チーム。だが、赤チームはバトンがなくて無効になりました。


「い、いぇーい?」

 隣でめちゃくちゃ怒ってるお姉さんと、水の中で胴上げされる俺。

 地団駄踏んでる。たぶんさ、魔法使わなかったら俺普通に負けてるんだよね。正々堂々って大切だね!!!


 表彰式が行われ、無事【ウォーターボール】のスクロールもらいました! やったー。

 広げた途端習得終了。




「楽しかったわ、セツナ。また遊びに来て。私を伴侶としてくれてもいいのよ」

「いや、心に決めた人がいますので」

「頑固な人ね。妖精の伴侶はあなたたち人が思っているようなものじゃないのに。まあ、水辺なら呼べばどこへでも行ける。困ったことがあったら水に向かって私の名を呼んでちょうだい」


《クエスト:ウンディーネの大運動会 をクリアしました》

《ウンディーネリリの信頼を得ました。水辺なら彼女の力を借りることができます》


 おお、お断りたくさんしたのになんかゲットしました。わーい?


 帰りは湖から少し離れたらタウンハウスへGOのぽちっとが出来るようになったのでそのまますっと移動した。

 ソーダたちもちょうど帰ってきていた。


「ウンディーネの運動会行ったんだって?」

「うん。【ウォーターボール】もらえたよ」

「ああ、参加賞だろ。よかったな」

「えっ!? 参加賞なの? 必死でやったのに」

「初期の派生魔法だぞ? そこまで難しくないよ。なに、勝ったのか?」

「一応3連勝してきた」

「すごいな」


 案山子がテーブルに料理を並べ始めたので俺も参加だ。いないのは柚子だけ。


「和食結構作れるようになったよ~! チーズ屋のおばあちゃんサイコー!」

 筑前煮に肉じゃが、ご飯のお供がたくさん。


「あれって、水切りで勝てたらその場で【ウォーターボール】もらえる?」

「いや、水切りになった時点で水底に引き込まれるルート確定だと思うよ。聞いたことない」

「出来レースなのか……」

「水の妖精相手に水辺で勝とうというのが無理でござるよ」

「伴侶にする人いるの?」

「ああ、水の妖精を連れ歩けるようになるんだって。俺もやってないからな、そのクエスト。ただ、妖精は1人1つと言われてる。2つ目を伴侶? 契約? できたやついないって。戦闘になるとその妖精の特殊魔法でサポートしてくれるらしい」


 ただで戦力強化できるならちょっと惜しかったかも? いや、でも、俺の心にはアンジェリーナさんがいるからな。


「他にすでに契約妖精いると、水底コースらしい」

「【ウォーターボール】覚えるためには仕方ないのか」

「他にもあるらしいけど、1番早いのはそこだってさ」


 まあ、無事にゲットできてよかったです。あの本のおかげだ。

ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


小手先の技でなんとかクリアしました。

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― 新着の感想 ―
ソーダ、ウォーターボールのことだけで流しちゃったけど、いざ困った時に水辺でリリさん呼んだら驚きそうだなw
多分三連勝した分知らないところで隠しパラメーターとかフラグオンとかされてるんだろうなってニマニマしております。
なんかこのすばのカズマを彷彿とさせるような……w
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