127.水底運動会
突然始まる運動会。
どうやらこれが、【ウォーターボール】ゲットのクエストらしい。
始まりが告げられないタイプの、終わったあとに言われるパターンのクエストだな。
俺のステータスでいけるのかなぁ……?
黄色もたくさんいるのだ。何人も、何人もの水の妖精がハチマキをしめて、キリッとしている。全部で……100人くらいいそう。あの湖の底にこんな大きな運動場が。
「まずは玉入れよ! そうね、貴方は地上の民だから、水の中の玉入れはやったことがないわよね。ほら、あの籠を背負って泳いでいる魚がいるでしょう? 私たちの黄色チームは黄色の籠にたくさん入れたら勝ちよ」
泳いでいる魚の背に下に落ちているボールを入れるそうだ。
なかなかに激しいな。
しかも魚泳ぐの速い!
とはいえ、水の抵抗は地上と同じような感覚だ。水があると思えないくらいだ。魚が泳いでいるから、水があることはあるのだが。
『それでは、水底大運動会を開催します! まずは水中玉入れです』
そこら中から拍手と供に、やる気満々のお姉さんたちが指定された空間に入ってくる。
「ほら、セツナ行きましょう。この範囲から出たら、失格になっちゃうから気をつけてね」
魔法でなのか、ふんわり光ったラインが敷かれていた。大きな立方体の箱の中のような感じだ。
『それでは、はじめっ!』
みんなに聞こえるよう、魔法を使っているのか?
さて、下に落ちた玉入れの玉。いちいち腰をかがめて拾っていたのでは時間が掛かる。
「【引き寄せ】」
周囲3メートルくらいにあった玉が俺の元へざっと集まった。
「はい、よろしくお願いしますね」
1人では多すぎるので、黄色ハチマキのウンディーネさんたちに配りながら俺も黄色の籠を狙う。
つまりだ。
「【投擲】」
籠は大きな魚の背にくくられている。
背中の、籠の少し上を狙えばこっちのものですよ。
「ぴぃぃぃぃ」
なんか、あれ、魚と思ってたけどイルカ系なの? イヤイヤしてる。
でもここ湖だよ。
海の豚と書いてイルカ、確かに鳴き声のイメージ豚とも言える。
河の豚と書いてふぐ。ふっくらしてるから?
湖の豚と書いたらあいつになるのかな?
「セツナ、やるわね」
「他の種目は俺じゃ敵わないかもしれませんからね、これだけは勝ちましょう!」
他の妖精さんたちからもサムズアップされた。
みんなウンディーネさん。
人間さんと呼んでるのと同じだなこれ。
「【引き寄せ】」
再び玉集め。俺が集めると黄色チームざっと寄ってくるようになった。
あらかた渡して、俺も【投擲】。そのうち俺が身構えると前方からやってくるようになったよ。そうしたら。籠の入り口こっち向くから、背中狙わないってわかったようだ。
頭いいな。湖のイルカだな、あいつ。
他のチームも善戦しているが、やはり【引き寄せ】が強い。
取ろうとした玉をすっと奪うこと何度目か。
ちょっと苛立ちが俺に向かってきている。
『ピピーッ!! そこまで!!!』
玉取得数が多くなれば、IN率も高くなるわけで、黄色チームの圧勝でした。
「やったわね、セツナ! 次も頑張りましょう!」
生活魔法、役立つなぁ。
そのまま次の競技だ。
何やら長い棒が準備されている。
引っ張られて並ぶ。
やっぱり100人だったな。5人ずつ5列。そして少し先に……カラーコーンがあります。俺たちの前には黄色のカラーコーンだ。
知ってる。これ、台風の目だ!!
まじかー。
ルール説明がなされた。
『棒から手を離したら、その離れた場所からやり直しです。1つ目のコーンは1周、2つ目のコーンを半周回って折り返し、再び1つ目のコーンを、さっきとは逆回りで1周してください。半周のところはどちらでも良いです』
どこからか持ってきた巨大なホワイトボードを使って説明してくれる。
『帰ってきたら足下に棒をくぐらせ、1番後ろからまた前に持ってきて次の走者たちへバトンタッチとなります。5列全員が終わったらしゃがんで勝ちです』
ガチの運動会じゃん。
俺は第2走者だった。
よーいドン! で走り出す。
が、ダメだ。
え、いっつもやってるんじゃないのか? こいつらじゃダメだ!!
「俺こっちの端に行きます。一番反対側のウンディーネさん、お名前教えてください」
「え……ルルよ?」
「ルルさんですね。じゃあ俺指示出すんでみんなよく聞いていてくださいね」
ぐるっと振り返る。
「みなさんも俺たちの動きをまねしてください。よく見ててくださいね」
そうこう言ってる間に棒が帰ってきた。
「前の人にできるだけ近づいて!!」
足下をざざっと棒が通り抜ける。ジャンプ。
「すぐしゃがんで!」
こんなの学生の時にやるだろしー! こいつら、素人すぎるだろ。大運動会ずっとやってきたんじゃないのか?
棒を手渡され、隣へ指示。
「最初は俺がコーンより。みんな、俺の方に集まって!」
来たのを確認したら、獅子座の宝珠頼みの筋力全開でぶんと振り回す。
ルルさん軽く浮いてた。
でも、これで足を動かす距離は断然短い。
1周ぐるりとした後走り出す。2つ目のコーンは半周折り返しだ。
「また俺の方に!」
ぐっと寄ってきたところを筋力頼りです。
次はルルさん中心なので、俺が走ってる途中に詰める。セクハラレベルで押しました。でも、このおかげでかなり早かった。
「前の人にくっついて!」
意図を理解したウンディーネたちは賢かった。
ぎゅっと詰まって、棒を動かす範囲を最小限にしてくれる。
「しゃがむわよ!」
他の人も指示を飛ばして、次の走者も俺たちのことをよく見ていたのかきちんと間を詰めて回っていた。
途中から隣のレーンの緑チームが俺たちの真似をしだしたが、遅かった。
たぶん、ウンディーネの能力にそこまでの個体差はないとみた。
頭ですよ。へへっ!
ということで、見事この競技も黄色チームが1番だった。
みんなでそろってしゃがんで勝ちだ。
「やったわね、セツナ! あと競技は1つよ」
「おお、なんですか?」
「リレーよ!」
あれ、それは勝てない。水の中のウンディーネ速いもん。
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誤字脱字報告も助かります。
運動会の競技って今何があるんですかね。
表現とかはすごく見せられるんだ。毎年。




