124.花の夜の姿
マップ入り口は、もしかしてプレイヤーが来るかも知れないと、邪魔になるから移動した。
と、すぐ【気配察知】に引っかかる。
『北西から2体』
『【属性看破】で属性がわかったらすぐ報告』
なんか、5人の空気がすごく、ぴりつくというか、最大限に警戒している。
『視認。セツナわかるか?』
『あー……、氷だな。左が氷。右が無属性かも?』
『看破いくつ?』
『4になった』
『それなら結構当たるわね』
「あちらも気付いたぞ。【一身集中】」
その瞬間、地を氷が張って、ソーダの足下までやってきた。
「【投擲】投網でござる~」
半蔵門線がバッと何かを投げた。すると、【鷹の目】を使って見ていた距離のモンスターが一気にこちらに引き寄せられた。
昼間つぼみが落ちた。つぼみの形状は、朝顔のつぼみとよく似ていた。もう少し丸っこくてふっくらしている感じ。
それが今は、花開いて、浮いているのだ。
『魔法耐性マックス、魔法使いフラワーだよ』
『魔法でしかつぼみ落ちないのに、落ちて夜になったら魔法が通じなくなる厄介者なのよ』
『それでヴァージルは昼間だけって言ったのか』
『一晩経てば散ってしまうしね。このマップ、ほとんど夜、人来ないから。結構レベルも高いのよ』
物理で片付けなければいけないのは確かに魔法使いからしたら、死の宣告だ。
「【なぎ払い】」
前の双剣よりさらに刃が大きくなった剣で、ピロリは左右から2体を切り裂く。
『ピロリはもう大剣にした方が強いまであるな』
『大剣は動きが鈍くなるから嫌なのよ~。それよりはある程度動ける双剣で、手数増やす方が好き』
『銃とか出ないかなぁ。盾職しながら銃構えたい』
『銃かぁ……』
『北東方向から3体。……雷と氷と火かなぁ』
『3属性ちょっと大変だな』
『雷どいつでござるかー?』
『真ん中』
俺が答えると、半蔵門線はすぐに投網でそれだけをお取り寄せ。雷があたりに降り注ぐ。
『水気と雷が結構危険だから、雷はどれかまで教えて』
「【なぎ払い】」
『了解』
『セツナくん、風と氷は無効化バフがあるから、そのときはセツナくんも参加して欲しい。特に、別方向から来たときは。これは序の口で、音でかなり寄ってくると思う』
『雷優先、風と氷なら俺も攻撃参加、ね。これって避けられると思う?』
『セツナ殿の数値なら1種類なら避けられるでござるよ』
『バフって重ねがけできるの?』
『できるよ。大丈夫』
なら、氷風他なら俺が行くべきだな。
『北4体、左から火火雷無だと思う』
『だと思ういらないよ。外れても仕方ない。なんならこれで看破もっと育てろ。ファイト』
『南、氷風無。俺行くよ』
『頼んだ』
無属性の敵は【ダークストライク】を放ってくる。これ、詠唱ほぼなしだから便利だと言ってたが、逆にやられるのは結構きつい。
仲間だと頼もしいけど敵になると怖いヤツ!
敏捷と筋力を中途半端に振った俺だが、当たれば紙装甲パターン。ダガーで【ひと突き】する。だが、少し足りなかったようだ。
なので、一度切ってからの【ひと突き】に切り替えたら上手くいった。
最初に無属性。次に氷で風。
3体なら俺でも倒せる。
『セツナ、倒すのもいいけど【属性看破】と【気配察知】忘れずに』
『忙しいな』
『優先順位は【属性看破】かな~』
『【気配察知】は拙者もやってるでござるよ。ただ、同時に【属性看破】使うからセツナ殿がやっていた方が効率がいいだけでござる。数を間違えてたら指摘するでござる』
は、はぁ~い……
『ここのところ、ヴァージルパイセンに連れられて狩りに行ったから、レベル上がってるんだけど、ステータスどうしようか悩んで……知力に振るべきなのか……』
『それこそパイセンに相談しろよ。AIが的確にお悩み相談だろう』
『AIの相談たまにやべー方向に走ることがあるでござるけど~』
『知力は【知の泉】でまた上がるかもしれないだろ?』
『いや、それが……』
いつの間にか200冊越えてました。
そう、いつの間にか。
そして変化なしである。
『まじかぁ……』
『一発の称号だったでござるね。残念』
『100冊ごとならとんでもないスキルだと思ったが』
『残念の極みでありました』
『ただ、付与にはそこまで魔力いらないから、付与と相性のいい剣作って、剣士の方がいいかもな~』
『しかも5属性、無も入れたら6属性でござろう? セツナ殿……金羊毛の売り上げ突っ込んだでござるね』
『突っ込んじゃった』
氷と風を含む3体のときは俺が飛び出す。魔法1種類なら確かに避けられる。
途中【属性看破】を失敗して違う属性が来たときも、ピロリの方は問題なく、俺は命からがらなんとか回避した。
そしてやっと終わった。
『昼間やった分だけなんだな』
『そうだよ。だからこのマップは昼夜セットなんだ。まあ、夜はこれを取りにくるヤツ以外来ないね』
そう言ってアイテムを渡された。
属性の花びら。火の花びら、雷の花びら等、属性の花びらが山ほど手に入る。
『これが、付与に必要な触媒の1つだな。触媒は色々あるらしいぞ』
『まさかヴァージル、そのうちこれセットでやるつもりだった??』
『ヴァージル高スペックみたいだし、その可能性はあるな』
『その場合夜は自分1人で始末つけるつもりだよな』
『可能性はあるでござる』
『恐ろしい子……』
微妙にスパルタなので、俺にも戦わせるつもりなのだと思います。
『じゃあそろそろ朝になるし、帰るか~』
『ドロップの分配は?』
『いいよ別に俺ら付与持ちいないし。柚子も案山子も取ってなかったはず』
お言葉に甘えていただくことにした。
付与はあまりうまみがないというのが今の風潮で、初期取っていた組もあまり使っていないらしい。付与の研究は止まってしまっている。
『ヴァージルが色々教えてくれたらまた情報流せばいいよ。てか、単純に、付与師とかありそうじゃね?』
『付与師……だけじゃ微妙よねえ。それが何かプラスになれば別だけど。完全なるサポート役じゃない』
夜が明けるまではミュス狩りを進めた。
始まりの平原で試乗会はだんだん落ち着いてきて、いつも通りの俺マップが帰ってきた感じだ。ゼロではないし、たまに俺を見に来る輩がいることはいるので、騒がしくはあるが、ミュス狩りに支障はなかった。
本屋開店まで続けて、久しぶりの本屋だ。
「おはようございます!」
「いらっしゃい、セツナくん」
【知の泉】は止まってしまったが、本を読むのを止める気はない。
俺は魔法についてガツガツ読んでいくことにする。
「魔法使いになったの?」
「一時的にですけど。まだまだ駆け出しです」
「属性はたくさんあるから、頑張って」
ちょっとした応援の言葉にもウキウキしてしまう。
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次回は新しい属性探し。




