120.レインボータートルエッグのお値段
プラチナブロンドを肩で切りそろえた高身長イケメンだったエルフは、熱烈に俺を出迎えてくれた。
だった、は、ヴァージル間近でこれだけ高頻度で見ていると、イケメンの基準あがっちゃった。
ファマルソアンは悪くない。
「いらっしゃいセツナさん。レインボーシータートルを倒せるほどになったんですね」
「いや、俺だけじゃ無理ですよ」
ファマルソアンの店舗はそれはそれは綺麗だった。イェーメールの貴族御用達香水屋さんレベルではない。オークション会場のような広さはないが、ここは宝飾品店のようだ。ショーケースにたくさんのきらびやかな宝石類が飾られていた。落ち着いた雰囲気だが、絨毯も、壁紙も、照明も、みんな高級ですって言ってる。
「ほら、これがレインボータートルエッグを使った一級品です」
俺が持っているのは親指の爪より少し大きいくらいの石なのだが、加工して小さくなったのか? 中指の爪くらいのネックレスや指輪やらが並んでいた。
ゼロが想定より1つ多い。250万で買ったもの、10倍で売るの!? まあ、加工代? 他も金とかプラチナだからか? にしてもすご……。
「さあ、お取引と参りましょう。奥の部屋へどうぞ」
通路の先に扉がいくつもあった。
貴族のお客様はこの部屋でじっくり見てもらうそうだ。
セツナもふかふかソファの部屋に通された。お客さん用でいいのだろうか。
すぐ後から扉がノックされて、女性が茶器と一緒にやってきた。
「あ、先日はどうも」
高位魔法をバンバン放つ秘書兼護衛のカランさんだ。
お高そうな指輪なんかを並べる、ベロア生地で作られているトレイが置かれた。
「それでは見せていただけますか?」
俺はアイテムポーチからレインボータートルエッグを取り出す。
エッグというからには卵のようにつるりとした丸みを帯びた石だ。
「これは……素晴らしい。本当に素晴らしいですね。誰ですか、これを仕留めたのは。セツナさんでは無理ですよね? 先日一緒にいらっしゃった女性の方、たしか、ピロリさんですか?」
「あ、いやまた別の人ですけど、大きくなったのを一撃でやっていました」
「それは、手練れの方ですね」
ほー、はあ、ふーっと5つの石を眺めている。
今回手に入ったのは、火と氷2個、雷と風だ。赤と透明の中に青い模様がはいっているのと、黄色と白だ。
「ぜひまたお願いしたいくらいですね。この4色ということは、基本5属性を持っているんですね?」
「あ、そうです」
「もし他の属性があれば是非。残念ですね、これなら【ダークストライク】で得られる透明の物の、透明度も高そうでしたが」
「あ……」
あー、忘れてた。
「まさか……」
「へへっ」
「また行くことがあれば覚えておいてください。無属性の石は宝飾品だけでなく、色々な用途に使えます。染めることすら可能なので高く売れます」
「心に刻みました」
「それと、ご存じないようなので説明しておきますが、レインボーシータートルは、特定の属性魔法で攻撃すると大きくなります。そして物理攻撃で倒すわけですが、一撃いれるごとに少し縮みます。縮むごとに、エッグが小さくなります」
「え、そうなんだ……」
「つまり、一撃で倒せばそれだけ大きく、綺麗な宝石が手に入るんです。ここまで大きいのはとても珍しいことですよ。というわけで、人気の赤は400万シェル、他は350万シェルでどうでしょう?」
はっ!?
「お、お願いします」
「……市場価格調べてから来るべきですよ、セツナさん。私は、セツナさんとお友だちですから~、こうやって適正価格を提示しますけどっ!!」
「ありがとうございます」
1800万シェルを手に入れた。
おおおお……無敵。
セツナ:
今ならクラン狩りに行けない分の費用が払えます!!
ソーダ:
高く売れたっぽいwww
セツナ:
赤は400万になったっ!!
ピロリ:
たかっ!! そんな大きかったの?
セツナ:
ヴァージル、一撃で倒してた。
ソーダ:
マジかよ。ピロリの【一刀両断】2回でやっとなのに。
ピロリ:
それでもたまに倒れないわよ。
つまり、カニより強いのか。
ころっと消えてたからそんな強いとは思ってもみなかった。
貴族門を出て、クランハウスへ徒歩で向かう。金は受け取ると数字として表示されるだけになる。使うときは1枚2枚だと【持ち物】から取り出して使えるし、枚数が増えたら布袋で取り出すようになる。
だから、金をいくら持っていても特に問題はないのだが、気持ちが。
クランハウスのストレージに貯金しておきたい。お金持ち歩いたら危険。
誘惑がすごい!
思わず、ふらふらと露店通り通っちゃうもん。
ほんと、ここの露店、定番品からニッチな物まで、ユーザーの発想力ってすごいよね。
木細工で、眼鏡置きって、何に使うんだよ。眼鏡置くの? まず、眼鏡って掛けるのか?
花瓶なんかもある。
レース編みの店でレースの栞を見つけた。
栞……俺の記憶をつつく。なんだろうなんかあったな。
あ、そうそう、太公望池で栞拾ってた。
そこら辺も鑑定したいんだが、俺の鑑定スキルが手に入らない。
せっかくだから、今から採掘行こうかな。ぎょろちゃんでイェーメールまですぐだし。ログアウトまで【鑑定】ガチャするか!
と思ったら、俺の目の前に女性が現れた。
金髪ロングヘアーに、白いローブ。青緑の刺繍が綺麗だった。
「初めまして、セツナさん、ですよね?」
「……どちら様でしょう」
動画のせいかなぁ?
「私は、Mayサーバーをメインに活動しています、アリンと申します。今日はセツナさんにお願いしたいことがあって参りました。少しお話を聞いていただいてもよろしいでしょうか? もし不審であればソーダ様をご同席いただければ」
セツナ:
アリンさんて誰ぇー
ソーダ:
あっ!!! それ、ヴァージル親衛隊のNo.4だ。
セツナ:
さ、刺される……。
ソーダ:
いや、多分平気っていうか俺も行くわ! クランハウス来て。
「クランハウスでお話していいですか?」
「もちろんです。ええと、危害を加える気はございませんし、セツナ様にお願いしたいことがあるだけなので」
後ろを見せたら刺されるかもしれん。
ドキドキしながらクランハウスへ参りました。
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とうとう接触です。




