117.魔女っ子になります
魔法使いギルドで魔女っ子になったのはいいのだが、魔法、教えて欲しい。
「あの、魔法ってどうやって覚えるんですか?」
「ああ! そこからですね、すみません。ええっと、まず魔法ギルドで選べるのは、それぞれの属性の最初の魔法です。つまり、ファイアアロー、アイスアロー、サンダーアロー、エアカッター、アースクウェイクの5属性です」
火水雷風地って感じかな?
「他の属性もあるようですが、ここではこの5つ。最初の1属性は、お好きなものを教官から学ぶことができます。それ以降は受講料がかかります。また、最初の魔法以外は、魔法使いギルドで販売しているスクロールで、適正レベルであれば覚えることができます。他にも、秘伝の書があるらしいのですが、偉大な魔法使い様に師事して得たり、学んだり、新しい魔法を得る機会はたくさんあります」
さあどれにしましょう? と聞かれるが、ううん……悩ましいな。
「2つ目からの受講料はおいくらですか?」
「1属性につき20万シェルになります」
今なら払えちゃう……。
なんか、金が入ると金が出ていくなぁ。世知辛い世の中だ。
まあ基本は炎の剣だよな!
「ファイアーアローでお願いします」
「それでは、こちらへどうぞ」
カウンター横の扉へ案内され奥へ促される。
扉の向こう側は小さな部屋があり、椅子に座って待っていると魔法使いのローブを着たおじいちゃんがやってきた。
「ファイアーアロー受講者のセツナ君」
「はい!」
「それではこのスクロールを読みなされ」
と、手渡された巻物。
広げるとA4くらいの大きさの紙だ。
『ファイアーアローの奥義』とあった。
奥義なの!?
そして読める、読めるぞっ!! とはならず、目を通した瞬間ぱっと消える。
「派生魔法はそんなものじゃ。すぐ取り込める。だが、段階が進むにつれて、よくよく読み込まねば学びきれない。さあ、己の中の火の魔力を感じたら、外に出て的に向かって叫ぶがよい」
促され、さらに奥の扉を開けると、中庭に出た。20メートルくらい先に的がある。
「【ファイアーアロー】」
ただ叫びました。
すると、顔の前に炎の渦が出てきて、炎の矢が発射される。
みごと的を打ち抜いた。
「ふむ、来訪者のほとんどは、なんでか手を前に出して叫ぶが、セツナ君はそっちタイプじゃないんじゃな」
ああ……いいたいことはわかります。
でもさ、杖なかったんだよ! 俺、短剣装備だし。短剣の先から出るのちょっと違うでしょ。
「【ファイアアロー】は、熟練度が上がるにつれて出てくる本数が変わる。最大10じゃな。威力はよく学ぶことだ」
知力ステータス上げろってことね。
「【ファイアーアロー】の熟練度が上がれば、そのうち新しい魔法の術式を思いつくこともあるだろう。スクロールを探すのも1つの手じゃ。新しい魔法使いの誕生をここに祝おう」
といった感じで火魔法は終了。それじゃあ、次は氷だ!
「次お願いします!」
「えっと、火はもういいんですか?」
「属性全部覚えておきたいので」
「ああ! それなら、一気に済ませます?」
そんな便利なやり方が。
80万シェルお支払いです。お高いけど、憧れの魔法剣士への第一歩というか、やっぱり魔法使いたいし。今回金羊毛が手に入ったのも、この魔法受講へのフラグってことで。巡り合わせだと思う。
お爺ちゃん先生に教わって、5属性無事ゲット。そんなことをしていたらいつの間にか夜が更けていた。
しまった。
こっち夜中に回せばよかったな。基本ギルドは何時でも開いてるし。
まあ、仕方ない。EP満タン。ミュス狩りまーす!
魔法使いになって、筋力にプラスされていた分が知力に回った。
結果、ミュスの首元に刺す力が減ったわけだが、ミュス相手なら十分だ。
狩りの効率的にはさほど変わらなかった。
装備も変えなくていいのが助かる。
魔法も試してみた。というか、熟練度をあげるなら使わなければならない。
問題は、MP。マジックポイントである。今まで気にする必要のなかった、魔法を使うのに消費するこのポイント。
知力とレベルで数値が変わるのだが、知力もレベルもそれなりでしかないので、あまり乱発できない。
じっとしていれば徐々に回復するが、ミュスを求めて歩いていたら、残念なことに回復はほぼない。
まあそれでも熟練度のために、【ファイアーアロー】。ミュスなら一発。MP枯渇したら、溜まるまでダガーで倒す。
まあ、新しいスキルを得るためには仕方ない。
そろそろ冒険者ギルドに納品して起きる時間だ。
ログインするとギルドチャットが賑わっていた。
今日は用事があったので俺のログイン遅かったんだ。
柚子∶
せっちゃんおはよー。そーちゃんの動画の件知ってる?
セツナ∶
おはようございます。聞いてます。というかアップ前に見ました。あとなんか、掲示板にもいろいろ言って回るとか。
ピロリ∶
まああまりにも絡んできたら通報だから、証拠動画は小まめに撮ってねー
セツナ∶
了解です。
さて、ハトメールだ。
『魔法使いの基本魔法が取れたなら、狩りに行かないか?』
ううん、イケメンよ……。うーむ。アンジェリーナさん優先したい……あーでも、この間は早めに帰ってきて。なんなら本読む時間あったな。俺の時間調整が間違っただけ。
『夜遅くに、こんばんは。お昼すぎには帰ってきたいんですけど、それでよければ。魔法は火氷雷風地の5属性とりました』
『いいね。それじゃあまたクランハウスに行けばいいかな?』
即レス、きた。
謹慎中でたいがい暇か? でも1ヶ月って言ってたから、そろそろ復帰の時期じゃなかろうか?
待ち合わせはクランハウス。
ノックで扉を開けたら、少し後ろに女性プレイヤーがソワソワしてる。
つけられとる……。
まあ、クランハウスには許可した人しかはいれませんが。
「待たせたね」
「いえ、こちらこそ、俺の都合に合わせてもらってばかりで」
お茶と茶菓子再び。
「それで、セツナは付与目指してみるでいいのかな?」
「面白そうなのでそれでお願いします!」
「じゃあ、魔法使いの属性を育てるのにぴったりなモンスターに会いに行こう」
そんな爽やかに言うと勘違いしそうだが、会いに行って殴るスタイルは新しい。
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魔法覚え始めました。




