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貸本屋のお姉さんに気に入られるために俺は今日も本を読む  作者: 鈴埜


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105/362

105.定食屋で漏れ聞いた

「今日は何食べる?」

「うーん」

 どれもこれも美味しそうなんだよ。


「唐揚げ定食で!」

 やっぱり食べてないもの食べたい。

「あいよ!」

 相変わらず威勢がいい。

 そして今日も混んでいる。


「アキヒトから聞いたぜ、肝試しするんだってな」

 どんな、どんな話になってるんだ。


「いや~、新しい街での新しい発見に出会えるかなぁと」

「まあ、ほどほどにしておけよ、本気で出るって話さ」

 スケさんがにやりと笑う。


 そして唐揚げ定食。めちゃくちゃ旨い。からあげーじゅーしーだし周りはざくってしてるし、最高! 定食だから付け合わせがあるんだけど、俺、白和え大好きなんだよねー!

 最高、白和え。うまっ。味噌汁は合わせだしだった。豆腐とネギだ。うまーい。


 と、突然耳に入ってくる近くの席の会話。


「そういえば、お屋敷の領主様が倒れたらしいぞ」

「聞いた聞いた。毎晩うなされてるって話だ」

「本妻ないがしろにして妾とうつつ抜かしてるからだろう」

「あの領主様は自業自得だ。街を治める才能はあっても、あっちがひどい有様さ」


 お子様に聞かせられない話じゃん。

 というか、こんな風に人の話が耳に入ってくるの珍しい。


 珍しいってことは、なんかあるー。

 フラグなんか踏んだかな?


 そんなことを考えている間も、隣の会話は続く。


「そういや、お屋敷の庭大変なことになってるらしいぜ」

「ああ、それも聞いた」

「知り合いの庭師が行くの嫌がってるな」

「どいつもこいつも目が怖いって。剪定してるのを監視されてるようだって話だぜ」

「全部あのお妾さんが可愛がって集めてるって話だよな」

「毎日大量の餌が用意されるってよ」

「1匹2匹は俺だって可愛いと思うけどさ、10とかまとまり出すとちょっと怖いよな」


「ああ、猫ってやつは、あの目が怖い」


 ふぁああ、猫又だぁあああ!!!


 なんかあったなぁ、猫又案件。妾食い殺して乗っ取ってるやつ。


「おトヨの方だろ? すげえべっぴんさんだって聞くけど、毎日猫と日がな過ごしているらしいじゃねえか。正妻様は気が気じゃねえだろうなぁ」


 幽霊だけじゃなくて化け猫騒動も始まるのかこれ。ちょっと今は幽霊の方に集中したいから、心に留めておく。同時進行とか大変だし。


 だいたい聞き終わったらしく、彼らの話がすっと遠のいた。

 よし、それじゃああとはアランブレに戻って、ログアウトまで狩りをすることにしよう。 ソーダたちも図書館を追い出されて、どこか狩りに行ってるらしい。レベル上げと資金調達に忙しい毎日だ。





 さてさてやってきましたローレンガ!

 図書館で、退魔師について司書に聞くと本を1冊渡されたそうだ。

『たぶんフラグ踏まないとダメなんだと思う。俺らはセツナとあの本読んだだろ? だからそこで退魔師について知っている判定になって、図書館で本を得られた』

 図書館で新しい職業を探すのに、手当たり次第聞いてみている人たちもいたという。だが、手がかりを得ていない段階でそれをしても、わかりかねますと返され終わっていたらしい。


 半蔵門線は、忍者聞いたってよ。


『幽霊についてもいくつかあったよ。だけど、ゲームの中でも本を読むことになるとは思わなかったなあ』

 みんなが笑う。まあ、それはそう。俺もアンジェリーナさんがいなかったらここまで本読んでないからね! もう150冊を越えてるんだよな。実は。200冊でまた何かあるかちょっと楽しみ。


『俺の方も事前に教えてもらった幽霊の話を読んだけど、同時に、店主から化け猫って話が出てきてさ。化け猫系の本もいくつか読んだんだよね。それでそのあとスケさんところの定食屋に行ったら、ローレンガの領主の屋敷が猫だらけって話を漏れ聞いた。あんまりNPCのちょっとした話は耳に飛び込んでくることないから、なんかあるかなって』


『ローレンガの屋敷の猫って、にゃんにゃんパラダイスだよな?』

 にゃっ?


『猫好きの楽園って話よね』

『猫に名前つけてるやついたッ! 見分けがついてきたってッ!』

『にゃんにゃんパラダイスなら拙者もチラ見しに行ったでござるよ。猫好きにはたまらん空間でござるな、あれ』

『オスの三毛がいるって話じゃよ! 庭全体に散らばってるから見つけたらラッキーなのじゃ』


 にゃんにゃんパラダイス……。


『その楽園崩壊させたら恨まれそうだ……』

『崩壊させるようなネタがあるのか?』

『うーん。ただ、幽霊と同時進行きついから、お触りするならまた後でかな?』

『図書館で色々調べるの楽しかったし、今度からもう少し利用していきたいな』

『フラグ踏んでないと本出てこないのが困りものだけどな。蔵書多すぎて俺ら手分けしても目的のものを探すとか無理そう』

 ああ、図書館にはそんなデメリットもあるのか。


『それじゃあ行こうか、八海山どれからがいい?」

『えっ』

『お前に一番関係がありそうだからな』

 ソーダがにやりと笑った。

 八海山の尻尾、股の間に入っちゃってるじゃん!


『嫌なら別に無理に行かなくても……』

『……新しい職には興味があるんだ』

 まあそれなら行きましょうか。


 一番穏便そうな、キクさんところから行くことになった。

 今ログインして真夜中。丑三つ時まであと少し。


『きゃーっ! 雰囲気出て、お化け屋敷来た感じ~』

 ピロリは好き系らしい。他の面子も平気そうだ。

 つまり、びびってるのは俺と八海山! うん、俺……。わっ! って驚かされるの苦手なんだよ~。ゾンビも苦手。


 アキヒトに教えてもらった古井戸が見えてきた。

 寂れた家の庭にある。ローレンガは空き家が多いようだ。


 そしてどこからか聞こえてくる何かを数えるか細い声。


「いちまぁ~い、にま~い」

『きたきたきたぁ!!』

『お約束よね~!』


 井戸の上には木で蓋がされている。その横で、着物姿の女性が涙を流しながら皿を手にとっていた。


『八海山中心に行かないといけないと思うが……無理そうなので、俺が行こうか』

 ピロリの後ろで気配消している八海山。俺も、案山子を盾にしております。


「こんばんは、何かお探しですか?」

「……誰?」

「通りすがりの来訪者です」

「……お皿が、お皿が足りないのよ」

「お皿ですか……」

 彼女の手元には数枚の皿。


「いくつ足りないんですか?」

「……割ったのは1枚よ」


 キクさん透けてらっしゃるー!


「ふむ、ちょうど皿があるんですけど、これで代わりになりますか?」


 ソーダお前っ!?


ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。

誤字脱字報告も助かります。


にゃんにゃんパラダイス!!!

私も行きたい!!!

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― 新着の感想 ―
>いつも軽く揺れている 仲間と遊んでいるときはいつもごきげんなんだと思うと微笑ましいですね笑
更新ありがとうございます。 次も楽しみにしています。 セツナ氏、フラグ管理が面倒くさくなりそうです
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