102.毛倡妓へのプレゼント
その日は結構な時間になっているということで、解散になった。
多分戦闘にならずとも解決することができるタイプのイベントだと思う、とのこと。4月2日になったら消えるかもしれないから各自考えておくようにとのお達し。一応ギルドにも共有していた。
多分、カミキリの特性を活かして、髪の毛以外のプレゼントを考える感じかなぁとの結論。
日中仕事をしながらいろいろ考えていたが、なんかありきたり。
ログインすると、ピロリがやる気でみなぎっていた。
クランハウスに一度集合らしい。せっかくだから全員で行こうということになっている。
ソーダがとんでもない残業食らっているらしく、日付切り替わるころになってしまう。先に行くことも考えたが、まあ、いなくなったらなったでいいかということで、せっかくなので待つ。
待つなら俺は日課をこなすのだ。
なぜかみんな今日はミュス狩りについてくる。
『相談しながらにしようか』
ピロリや柚子までナイフでミュス狩りしてる。八海山は柚子のお守りらしい。美少年のところで上がった【投擲】でタゲを取り、ナイフで突き刺していた。
『植木を切らせるのじゃよ! トピアリー!』
『植木は、持ち運び、かなり大きいだろ? プレゼントには向かないんじゃないか?』
八海山の突っ込みはいつも冷静。毛倡妓に会ったときは、フリーズしてたらしい。怖いものダメみたいだ。俺は騒ぐタイプだけど、八海山は静かに恐慌状態に陥るタイプ。
『お花はどうでござろう? プレゼントの基本でござる』
『花畑がハゲ坊主になる事態が……』
『そこは、育てるところからって条件をつけるでござる。自分で丹精込めた花束を贈るでござるね』
ほうほう、その条件付けはいいかも。遊郭にも土地はあった。
『私は、盆栽を推すわ!』
『盆栽……渋い!!』
『でも確かに盆栽なら持ち運びはできるな』
『持ち運びもできるうえに、あれは感性の域だから、イマイチと突っ返すこともできる!!』
『ただ、毛倡妓がそれを好むかがわからないのじゃ〜』
『そこなのよねぇー』
女性でも喜んでもらえそうなプレゼント、なんだろね。
『カミキリといっしょに花屋やればいいんじゃない?』
『モンスターが花屋やるの?』
『あれ、モンスターというよりNPC寄りだと思うのよね〜』
確かに、その線は大いにある。
『セツナくんは何かいい案ないの?』
『あー、俺は〜』
リアル時間の0時を過ぎる。
そして絶望の叫び。
『なんとなくそう思ってたけどぉぉ!!!! 髪の毛帰ってこないじゃないのよぉ!!!』
『ピロリ殿の髪の毛は、毛倡妓さんが身につけてたでござる』
『いやぁぁぁ!!!』
スレッドも阿鼻叫喚らしい。
『やっぱりカミキリの新しいプレゼントを作らないとだね』
『いやぁ……』
『とりまこっちで光が見えたら情報流すでござる。スレが運営に対する怨嗟まみれで、呪われそうでござるwww』
エイプリルフール関係なかったね。
ソーダもやっと残業を倒したのでログインだ。
「花屋はどうだ!?」
だいたい考えることは同じみたい。
『運営がどこまで想定してるかよね〜』
『ここの運営、すげえ細かい裏設定作ってたりするから侮れない』
準備をしてローレンガに出発だ。
半蔵門線が移動しながらスレチェックに勤しんでいる。
『スレはかなり危険水域でござるね、情報早めに投下してあげたほうがいいかもでござる』
『みんなエイプリルフールと信じていたからな』
『ここの運営の性格の悪さを思い知ったんだろうな、このゲームから始めた奴らは』
なんか、ちょっと5人が遠い目してる。
さてやってきました元遊郭へ。前回と同じように俺が髪を梳くと、毛倡妓が現れる。
「おいでやす」
「お邪魔します! 一応案を考えてきました」
「あら、聞かせて?」
と言うので先ほど話していた通り、自分で育てた花、なんならここで花屋を始めるもよし。トピアリー作成。これは移動できない。盆栽。芸術性が認められないとリテイクできて時間が稼げる。
そして、俺からの案。
「飴細工とかはどうでしょう」
「飴細工……甘いものは好きよ」
『お、飴細工好感触?』
『洋服屋もあったけどね。生地切るのもいいだろ』
『甘いもの好きって言ってるし』
「じゃあ、毛倡妓さんから、カミキリへ、プレゼントは毛じゃなくて飴細工がいいって言ってもらえれば!」
「そのためには、彼を呼ばないといけないわ? うーん、切れる髪の毛があれば、来ると思うけど。この中で自分のものが分かる人はいるかしら?」
毛倡妓が両手(たぶん)を広げる。目立つピンクのツインテール。
「い、いやよぉ!? また切られろって!?」
「呼ぶためだから、な? 俺の赤髪どれかわからん!」
赤髪は結構いる。
「拙者の黒髪もわからんでござるー」
案山子はログインもう少ししないと無理っぽい。
ピロリが泣く泣く毛倡妓から髪の毛を剥いで、頭にセットする。後ろ向けって言われちゃった。
そして響く、ピロリの悲鳴再び。
貸本屋で見た姿そのままの、カミキリがいた。
「カミキリさん、あのね、お願いがあるの」
「あんたの言うことならなんでも聞くよ!」
俺達のことは目に入っていないらしい。
「私ね、髪の毛はもう十分。今度は甘いものが欲しいわ」
「あま……い?」
「ええ、飴細工とか、金太郎飴とか」
「えっ、えっ!?」
カミキリさん大混乱。
《ワールドミッション∶飴細工の材料をカミキリに渡せ! カミキリは、髪の毛の代わりに飴細工を毛倡妓にプレゼントしたい。作り方はわかるが材料がない! カミキリのために材料を持ち寄ろう!》
タイムアタック〜!
『ワールドミッションって?』
『大型レイドと同じだよ。時間内に納品する協力型だ。明日の0時までかぁ。グラニュー糖と、水あめだって』
《成功時、ローレンガに飴細工屋ができ、髪の毛が戻ります。また、毛倡妓の元でシェルを払えば、髪型を変えられるようになります》
《失敗時、髪の毛は4月10日24時までそのままです》
『失敗時の、ペナルティ絶望じゃないのよ……』
『ソーダ殿、真鯖以外ワールドミッション来てないでござるよ』
『あー。サーバーごとか』
『日付がしっかりついてるから、期限は他鯖も同じかもしれん。情報流しておいてやったほうがいいな』
『真鯖限定スレ立ったでござる。グラニュー糖と水あめ分担始まってるでござるよ』
『あー、じゃあ半蔵門線、俺たちのクランが行くとこ書いておいて、どっちでもいいや。八海山は案山子回収。俺はハゲスレにここまでの過程を、だな。セツナ、貸本屋で見たって情報は?』
『あー、本好きの証ってアイテムないとローレンガの貸本屋入れるかわからないし、貸本屋情報はなるべく伏せたい!!』
『おっけwww』
その後、無事全サーバーで飴細工屋、または盆栽屋、または花屋、さらに和裁屋が出現したそうだ。
色々試すのは検証厨の性らしい。
ブックマーク、評価、いいねありがとうございます。
誤字脱字報告も助かります。
髪の毛変更NPCゲットだぜ!!




