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25 盗賊退治完了

 盗賊達はその後、俺達によって呆気無く鎮圧された。

 冒険者側にも何人か怪我人は出たが、護衛の中にいた僧侶(プリースト)回復薬(ポーション)のお陰で既に歩ける程度には回復している。


「――クソが!」

「放しやがれ!!」


 縄でグルグル巻きにされた盗賊達がガヤガヤと悪態を吐いている。

 暴れてる奴を解放するバカがどこにいるのか。

 それよりも、初の対人戦闘をしたフィリノアの方が心配だった。


「――大丈夫かフィリノア?」


 まだまだ元気で五月蠅い盗賊達を無視して、俺はフィリノアに声を掛ける。

 盗賊とはいえ人を相手にしたことで、それがトラウマとなってしまう者もいる。

 フィリノアがそうならないという保証はなかった。


「……あ、はい。大丈夫、です」


 うーん、大丈夫と当人が言ってはいるが、果たしてどうなんだろうか?

 正直言ってしまえば少しばかり休ませたい。

 とはいえ、そうも言ってられない。まだ依頼の最中だ。

 まぁ盗賊相手に戦ったのはフィリノアにとって良い経験となるだろう。

 これからもそういった依頼を受けないとも限らないし。


「……人と戦うのって嫌ですね。やっぱり魔物相手の方が気が楽です」


 ポツリと、フィリノアがそう言う。

 うん、わかる。


「俺だってそうさ」


 俺もそれに同意する。

 千年前の旅で盗賊等人と戦う事もあったが、俺も人と戦うのは嫌いだ。

 勿論、いざ戦うとなったら遠慮はしないし、割り切れるけど。


 というか、一部脳筋や戦闘大好き人間以外に人間同士で戦うのが好きな奴がいるんだろうか?

 いや、”戦士王”ヴォールみたいに人間と戦うのも魔物と戦うのも両方好きって奴はいたけどさ。

 少なくとも俺自身は、どちらかと言えば魔物相手に切った張ったをしている方が気が楽だ。


 ……ただしティノは例外だ。アイツは人じゃなくて”神様”だから。

 人の形をしているだけの別の何かだから。人間と一緒にしてはダメだ。

 アイツとはもう一度戦わなきゃ気が済まない。

 戦って勝つ。……今は戦えないけど。


「――おーい、お二人さん。出発するぞー!!」


 おっと、そろそろ出発か。


「フィリノア。気にするな、とは言わない。だけど余り気にし過ぎるなよ」


 俺がそう忠告すると、フィリノアはパンパンと自分の頬を叩き、


「はい。……大丈夫です。人を殴った事はありますし、その延長だと思うようにします」


 ……果たしてそれで良いのか?

 まぁ当人がそれで割り切れるなら良いけどさ。





「――おい、俺達を放せって!!」

「こんなところに置いていくのかよ! 魔物に食われちまう!!」

「そ、それだけは嫌だ! 助けてくれ!」

「クソ、覚えてやがれ!!」


 盗賊達が去っていこうとする俺達に懇願してきたり罵倒してくる……が、無視だ無視。

 というか、俺で殴られたってのに無事だったのって凄いな。俺、ドラゴンよりも硬いってのに。

 人間ってのは意外と丈夫に出来てるねぇ……。


「――おい、待てって!!」

「出発しますよ!!」


 商隊の商人達も、盗賊達を一瞥するだけで直ぐに馬車を動かし始める。

 可哀そうとは思うまい。自業自得だ。

 ま、運が良ければ抜け出せるだろう。……頑張れ。






 その後の護衛は順調に進んだ。

 特に凶悪な魔物や盗賊に襲われる事なく――途中で一度だけゴブリンの襲撃があったが、大きな怪我無く倒す事が出来た――、進んでは休み、進んでは休みを繰り返し、野宿を二日して、俺達は目的地であるハザティークに到着したのだった。

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