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17 救出

 オークの群れは直ぐに見つかった。


 その群れの数は多く、二十五体程の群れを成していた。

 オークは成体はゴブリンに似て、少なければ十体程度から、多ければそれ以上の群れを成して生活している。

 寧ろ、先日戦闘した様な数匹単位での相手は珍しいと言えるだろう。


「……いましたね」

「お前達は手を出すな。……行くぞ!!」

「「「応!!」」」


 ヘンリック達パーティーが、駆け出す。

 流石一応のCランクパーティー。意外と様になってるねぇ……。

 あれだけの数を真正面からとは、随分剛毅だ……が、少々無謀過ぎるのかもな。

 俺達の目の前だからこそ、というのもあるのだろう。

 俺はチラリと視線を後ろに向けた。それを見て、フィリノアも視線を俺の向けた方向に向ける。


「……何も言ってきませんね」

「そりゃそうだろうさ。……アイツの仕事はただの監視だ。それ以上でもそれ以下でもないしな」


 そこで遠くから見ているのは今回の件で冒険者ギルドから派遣されたギルド職員だ。

 監視……つまり俺達が『それ相応の力を持っているのか』の監視をするための。

 どうせ厄介なことに巻き込まれた、とでも思っているのだろう。

 顔の表情がそう物語っている。


 ギルド職員とはいえ、元冒険者だ。

 そういった人間でなければ、こういったフィールドに出ることはない。

 とはいえ、最低限自分の身を守れる程度だ。

 だからああして安全な場所にいる……らしい。


「……ご苦労なこった」

「そうですね。……本当に申し訳ないです」


 っと、そんな事を話していると、少々マズい事になっていた。


 オーク達は低能である。だが、その腕力と集団になった時の連携は侮れない。

 いつの間にか、ヘンリック達パーティーはオーク達に囲まれていた。

 あれでは脱出も出来ないだろう。


「……どうする?」


 俺が尋ねると、フィリノアは


「――勿論、助けますよ!!」


 ――死なれたら目覚めが悪いですから。

 そう言ってフィリノアは俺を担ぎ、駆け出した。






 ――――――――――――――――


「――くっ!!」

「囲まれたわね」

「厄介ですね」

「……どうするよリーダー!!」


 ヘンリック達は囲まれていた。

 そして、同時にヘンリックは焦っていた。


「……クソッ」


 最初は良かった。オーク達を一体一体順序良く倒していけた。

 だが、途中からオークの数が想定以上に多く、倒す前に別のオークが此方に気付き襲ってくる、の繰り返しになり、最終的には囲まれていたのだ。


「……どうする。どうする!?」


 ヘンリックは状況を打開する為の手を考える。

 ここはもう、ガーベラに彼女自身の持つ最大の魔術を撃って貰うしかないだろう。

 使用した後暫くは魔力の消費のし過ぎで役には立てないが、そうするしかない。

 覚悟を決めて、ヘンリックはガーベラに指示を出そうとして、


 ドスン


 ドスン


 金属が物体を打つ鈍い音が響いてきた。


「な、何!?」


 ガーベラが困惑した声を出す。

 音のした方向を見ると、オーク達もそちらに集まっていた。


「――あれは」

「そんな……」

「嘘!?」

「……アイツ」


 まさか、そんな。

 ヘンリック達は目を疑う。


「――えぇい、数が多いですね」


 そこにいたのは、怪力でオーク達を片っ端から倒していく自分達が見捨てた少女と、


「オロロロロロロ!!」


 嘔吐しながら振り回される、磔にされたゲロまみれの男がいた。





 ――――――――――――――――


 ヘンリック達を囲んでいたオーク達はあらかた片付けた。


「……オークを一撃か。腕を上げているな。フィリノア」

「有り難うございます!」


 口の端から涎が垂れた儘俺が誉めると、嬉しそうにフィリノアは笑う。

 うんうん、まだまだ元気な様だ。

 まぁこんな程度で疲れてしまう程、俺の相棒は柔じゃない。

 ……俺の胃は軟弱だったがな。


「――で、まだまだ群れは残ってるんだが、手前等は元気かい?」


 俺はそう煽りながらヘンリック達に目を向けると、四人に睨み返された。

 うん、こいつ等も元気な様だ。……というか、助けてやったのにその態度か。


「ま、元気がないなら休んでおきな。……行くぜフィリノア」

「はい!!」


 俺達はそう言い残して、オークの群れに向かっていった。






 オークリーダーはオークよりも更に一際大きな個体だ。


「……」

「――ッ!!」


 何かをオークリーダーが叫んでいるが、相も変わらず何を言っているのかさっぱりだ。

 だが、俺達を敵認定はしているらしい。

 槍を構え、此方の様子を伺っている。


「――っ!!」


 先に動いたのはフィリノアだった。

 俺を構え、オークリーダーに向けて駆けていく。


「――ッ!! ――ッ!!」


 オークもそれを見て、槍を突き出そうとし、


「――ガアアアアアアアアアアッ!!」


 突如、上空からやってきた何者かが、オークリーダーに襲い掛かった。

 暴風が吹き荒れ、その風によってフィリノアが吹き飛ばされ、その拍子にフィリノアの手が俺を手放す。

 地面に投げ出された俺は、その風を巻き起こした主を見る。


「……っ!! あれは――」


 俺の視界に映ったのは、真っ赤な鱗の竜――レッドドラゴンがオークリーダーを捕食している姿だった。




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