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獣様と私  作者: あむ
獣様と私と時々師匠
11/13

お片づけとゆずれないものと 前編

ついに、主人公の名前が!

今日は楽しいお部屋のお片づけ♪

……は、頼むからやめてくれって家から放り出されましたとさ。

ぐすん…。


お片づけは、師匠でも獣様でもなく、うちのおばあちゃま…もとい、カレンさんがやってくれるんだ。

おばあちゃんって呼ぶと恐いんだよね。だからカレンさん。

師匠は初め、「ばばあ」って呼んでひどい目に合わされたらしい。どんな目なんだろう…。恐いけど聞きたい、聞きたいけど恐い…。

あの元魔王様な獣様でさえ「カレン嬢」って呼んでたし。おばあちゃまなのに嬢?と思ったけど、獣様から見れば、人なんてみんな年下なんだよねぇ。ロリコン? いやいや、カレンさんが最強って話だったネ。


洗濯とか簡単な掃除とかは師匠の魔術でちょちょいのちょ~いってやっちゃうんだけど、あそこまで散らかっちゃうと、どうにもこうにもならないんだって。…まぁ、散らけた本人が言うことでもないんだろうけど。


そんなわけで、私は一人で畑いじり。

ま、出掛ける前にカレンさんにまでしっかりお説教されたけどね。…ぐすん。

私だって、自分で魔術が使えるようになれば、師匠の手を煩わせなくたって、洗濯だって掃除だって、探しものだってちょちょいのちょいなのに…。そんでもって、おまけにあんなことやこんなこと、そんなことまで…!?


「そんなとこでイジイジしてんじゃねーよ」

「ほあぅ!! ……師匠」


ブチブチ言いながら草むしりしてたら、師匠がいた。

急に人の背後に現れないで欲しい! 口から心臓がぼよーんって飛び出るかと思ったよ!!


「お前はバカだけど、ワタシのバカ弟子なんだから、そんなバカみたいに落ち込んでんじゃねーよ。

 バーカ」

「な…バカバカ言いすぎだよ!

 バカって言うほうがバカなんだよ! バーカ!!」

「なにおぅ!

 師匠に向かってその口のきき方はなんだ! バカ弟子のくせに!」

「師匠だって人のこと言える口のきき方してないじゃん!

 自分のこと“ワタシ”って言ってたら丁寧に聞こえるとか思ってるくせに!」

「な、なんでそれを…」

「あれ、ホントだったんだ…。フェル様の受け売りだったんだけど…」

元魔王(アイツ)か…。やっぱ、殺すか…」

「えぇ!!」


あわわわ、師匠の目がマジだ。獣様、ピーンチ!!

どうやって師匠の怒りを鎮めたらいいだろうか?

水を掛けるか、クワで殴るか、飛び蹴りを……


「これ、詠んでみろ」

「はぇ??」


対策を練っている間に、怒りは鎮まっていたらしい。…残念。

読んでみろ、と手渡されたのは、何やら字と陣が描かれた紙だった。

もしかすると、呪文を詠め、ということか?


「アル・ルラ・フルクチォ・フェアリ・イオ・フル・フライ」


ゆっくり、間違いのないように確認しながら詠んだ。

詠み終えた瞬間、溢れたのは光。

色とりどりの光が私の周りを踊って、消えた。

そして、その光に導かれるように集まってきたのはキレイな蝶々…じゃなくて、精霊さん。

私の周りを、チカチカと瞬きながら舞うように飛ぶ。


「キレイ……」


それはそれは幻想的で美しい光景。きっと、ぽかんと口が開いていることだろう。

けど、さらに口が開ききることが起こった。


『クリス! 私たちの声が、聞こえる?』

『クリス!! ねぇ、遊ぼうよ!』

『やっとクリスとしゃべれる!!』


口々に(とはいってもどこに口があるのかはわかんないんだけど)精霊さんたちがしゃべりだしたんだ。

鈴の鳴るような、可愛らしい声に、けれど開いた口のまま返事が出ない。

蝶々が…いやいや、精霊さんだけど、でも見た目蝶々がしゃべるなんて…。


「お前は、保有魔力はワタシと同じくらいあるんだ。それを見込んで、弟子にとった。…決して、料理の上手さ目当てじゃねーぞ!

 けど、そのお前の…天性の才能なんだか災厄なんだか、その危なっかしさでは、普通の魔術は教えられねー。何が起こるかわかんねーからな。

 だけど、お前は精霊にはものすごく好かれてる。だから、こーゆー魔術なら使えると思ったんだ。

 だからこれからは……」


師匠が何やら小難しいことを言っている。

けど、けど……今はそれよりも……


「私の名前は、クリスティーヌ・デ・マルゲリータです!!」


ゆずれないものが、あるのです。


悩んだ挙句のこんな名前。

いかがなものでしょうか??

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