探し物と大嵐と
「で、アレはなんでああなったんだ?」
「……」
いつもの食事の席、いつものように3人で丸いテーブルを囲んでいる。
うん、今日のご飯もおいしいなぁ。
……って、ごまかされてはくれないよね??
最初に質問を投げかけたあとは、無言で返事を待っているフェル様。
無言なのに、視線が痛い。
助けを求めるように師匠のほうを見れば、師匠も無言のまま、無関係を貫こうとしていた。
そりゃないよ……。
「で?」
「ええっと、あの、ちょおっとばかり、探し物をしとりまして……」
「ふぅん、探し物、そうか、探し物ねぇ……」
なんだか必要以上に頷きながら、再度視線をアチラに向ける獣様。
仕方なく、私もソチラを見てみる。
うん。記憶と寸分たがわない惨状がそこにはあるのでござった。
今日もステキな晴天に恵まれた、うららかなお昼時。
3人で囲む食卓の側にも、優しい光が落ちているざす。
そして、優しい光とおいしい匂いの溢れる居間の隣のお部屋には、まぁ大変、泥棒さんでも入ったのかしら? それとも、局地的大嵐か何か?
それはそれはスバラシク荒れ果てたお部屋があったのでござったのじゃ。
「のじゃ、じゃねーよ。
お前は丁寧語は使えないんだから、無理に言おうとするんじゃない。
っていうか、そんなのでごまかそうとするな。
俺が聞いてるのは、なんで探し物をしていただけでこんな惨状になるのかってことだ」
「あれ? 声に出てました?
ってか、獣様、言葉が汚いよ。師匠に似てきたんじゃない?」
「「お前に言われたくない」」
師匠と獣様、そろって否定してきた。そういうとこ、似てきたと思うんだけど、そう言えばまた二人して怒るんだろなぁ。
「で?」
「ん?」
「………」
はうぅ、話がちょっとそれたから、ごまかせたかと思ったのに…。
フェル様が恐い。お母さんみたいだ…。
再度師匠を見てみる。
…やっぱり、無関係を通すつもりらしい。
「…この前採ってきた野いちごをジャムにしたんで、それをしまうビンをさがしてたの。
でも、なかなか見つからなくて…。
そしたら、師匠が――――」
そこまで言って、もう一度、師匠を見てみた。
目が冷たいっす。けど、師匠だけ無実なんてそんなの、ズルイもん。
「ダンが?」
「師匠が、探索の魔術をかけてくれたのであるます!
そしたら、簡単にビンは見つかったんだよね。
でも、他にも、あれこれしまいっぱなしになって忘れてたものも見つけて……
で、そのいろんな物の下にいた、ゴ○様まで見つけちゃって…
探索の魔術と一緒に、重いものも動かすからって腕力アップの魔術もかけてもらってたから…
それで、気がついたら、あんなことに……」
だから、私だけが悪いわけじゃ、ない…かな…と思うんだけども……。
「……」
「……ワタシは、悪くない」
えぇっ。
やっぱり悪いの私だけ??
二人の目が冷たいっす…。
「むしろ、なんで料理はできるんだろな…」
「な、何そのあきらめ感!!
私だって、私だって、頑張れば料理以外だって――――!!」
「「頼むから、やめてくれ」」
また、二人でハモって止められた。
しょぼん……。




