10話
部屋の窓の外に、小さく泣く子が見えた。
ランドセルを背負っているから、まだ下校時間だろう。
「う、うぇ、え…」
俺に気づくと、女の子は驚いて顔を上げた。
「もしかして、優!!」
「あ、そうだよ。もしかして俺のファン?」
「ファンって何?」
「えっと…俺のことを知ってる人かな?」
女の子は泣き止んで、少し元気を取り戻している。よかった。知名度はこういうときに助かる。
「君、迷子かな?」
「うん、そうなの」
「どこの学校の子?」
――――
俺はその子を学校まで送ることにした。
歩きながら、女の子は俺の服をぎゅっと掴む。
迎えが来るまで、待とう。
――――
迎えに来たのは姉と名乗る女性だった。
二人が再会したときの、姉の安堵の声を聞いて、俺は少し驚いた。
「お姉ちゃん…」
「よかった、本当に」
感動の再会のはずが、姉の顔を見て、俺は固まる。――夏だ。
彼女は元同級生で、退学前はいつも冷たい視線を向けてきた。
「優…君?」
「お姉ちゃん、そうだよ。優が学校まで案内したの」
「…そ、そうなんだ」
夏はぎこちなく微笑み、俺を見て言った。
「ありがとう、優…君」
「うん、じゃあ、俺は帰るよ」
「待って、何かお礼をさせて」
「いや、帰りたいんだ」
――――
思い返せば、退学前のある日、夏は俺に冷たかった。
「私の近くに来ないでよ」と言われ、次の瞬間、机が蹴られ――
弁当もろとも俺は倒れた。あれが、夏との最後の思い出だった。
「お兄ちゃん、私もお礼したいな」
妹がそう言ってこちらを見ている。
「妹さん、帰り道はちゃんと教えてあげてね。じゃあ…雪ちゃん、楽しかったよ」
「優君!!」
俺は二人の礼を受け流し、そのまま家に帰った。
――――
帰り道、ふと考える。危ない。あのままだと面倒になる。
「誘拐とか企んでないだろうな?」なんて、また言われるかもしれないし。
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