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48醜いアヒルの……?

「も、申し訳ありません、マリクル様っ!!」


 あの時、マリクル様が薦めてくださった『ナイト・ローズ』は一割の中に入っている超一流品だったと聞いて、余計に、申し訳なさと涙が込み上げて来る。


「構いませんよ。……でも、どうして、この濁った石がよかったのですか?」


 素人目に見ても、この石だけは、ずば抜けて透明度が低い。


 ハズレ枠のはずの『二流品』と呼ばれた宝石たちだって「色の濃い石が珍重される中で少しだけ薄い」とか「この種類の石にしては僅かに小さい」とか……その程度の差なのだ。


 特に色や大きさの差異はその人の好みもある。

 『血のように濃い深い赤』の方が珍重されていて値段が高かったとしても、『明るく透き通った赤』の方が好きな人も居る。同じように、装飾品によって大きすぎる石は重くなるから苦手、という人も居る。

 そのため『二流品』とはいうものの、あくまでも「珍しさと値段」だけの話であって、石そのものの質が悪い、という訳ではないのだ。


 だが、わたしの選んだ大ハズレは、そのレベルではない。

 宝石の中にさざれ石が混じっているくらい質が違うのだ。


「……ごめんなさい……あの、その、親近感というか……『ナイト・ローズ』は、浄化してあげれば、その超一流の石みたいに奇麗になれる、と聞いたので……その、この石が、濁ってしまって、がっかりしているように感じて……奇麗に、してあげたいな……と、思って……」


「ふふふ、ミルティア様、一つ覚えておいてくださいな。当店ユズチャ&ベッターラでは、正式に聖女様に浄化をしていただいた石が入荷されるんですのよ」


 ジーナさんが子供に諭すような眼差しで優しくお店の仕入れ方法を説明してくれた。


 ただ、その中に、このようにごく稀に、浄化しきれない程の穢れを吸収し、濁りが固着してしまった石が混ざることがある、とのこと。

 そういう石はどうしたって奇麗にはならないらしい。


「……そう、なんですね……」


 そりゃ、そうか。

 ここは、王都でも一等地に立つ超一流の装飾品店だ。仕入れ時に、そのくらいの配慮はされているのだろう。


 とほほ……これは、マリクル様に酷い散財をさせてしまった……

 うぅ……お詫びをしたいけれど、わたし、お金なんて無いし……

 あの養殖池の幸を調理して屋台で売ったら、少しはお金を増やせるかなぁ?


「ミルティア、落ち込まないで下さい。貴女のその優しさに救われた身としては……その気持ちは、とても尊いものに思えます」

 

 マリクル様がそう言いながら、慰めるように私の手のひらの濁った石に触れた瞬間だった。


 ぽぅっ……!


「「えっ!?」」


 宝石の中に灯がともったように明るく青白い光が宿ったとおもったら、その濁りが抜け、みるみるうちに透き通る真っ青な宝石へと変化する。

 

 まるで、今、この場で、小さな海が生まれたみたいに……



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