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桜紅初恋(オウコウ・チューリエン)1月24日番外更新☆  作者: 白師万遊
第二幕:~.。.:*✽桜紅の結び✽*:.。.~
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第十九集:堕神の王


 予想だにしない人物に遭遇してしまった。


 「――タリア……、数世紀ぶりだな」


 (もと)上級三神(じょうきゅうさんしん)上位神(じょういしん)、光を司る神ルキだ。

 上位神(じょういしん)エルの次に生まれた男神で、上位神(じょういしん)で最も知恵に満ち、美の極み、光を象徴する輝かしい神と(うた)われていた。現在は堕神(だしん)の王、輝堕王(きだわう)と本人は名乗っている。

 遥か昔ルキは地上に生まれた初めての人間の跪拝(きはい)を拒み、天上皇(てんじょうおう)天上界(てんじょうかい)を追放され、初めての堕神(だしん)となった男神(おがみ)だ。天上界と下界(げかい)(さかい)に自分で創った異空間、奈楽界(ならくかい)に住んでいる。タリアはルキと数百年会っていなかった。


 「……ルキ、……」


 大好きだった兄の面影はない。

 

 ルキはチュニックの黒軍服(くろぐんふく)を着用している。

 詰襟(つめえり)で袖がフラットな腰丈の栗梅(くりうめ)の上着に、下は黒い短袴(たんこ)もとい乗馬ズボンだ。肩章(けんしょう)は金色の鎖でショルダーチェーンになっていた。金色のダブルボタンは十二個、真鍮(しんちゅう)製でドーム状に盛り上がっている。金糸や銀糸で刺繍が(ほどこ)された黒マントは豪華絢爛、引き摺る長さは権威の証だ。栗梅(くりうめ)のロングブーツは膝丈(ひざたけ)で五連のバックルベルトと、二つのチェーンベルトが付いていた。


 容貌(ようぼう)眉目秀麗(びもくしゅうれい)な黄金比の顔立ちだ。すっきりした(あご)に鼻筋が通った高い鼻、黒い目の虹彩(こうさい)と眼球は黒い。目尻は黒く化粧がされてある。歯や舌や爪も黒く、滑らかな真珠の肌は(きら)めいていた。唇は薄く艶がある。

 髪型はツインテールの黒い髪を束ねて丸め、団子状に結ってあった。生花(せいか)の黒い彼岸花(ヒガンバナ)が挿してある。長い前髪は団子に入れておらず、真ん中分けの自然体で垂れていた。


 身長は206㎝ある。天上皇(てんじょうおう)授かりし十二枚の翼は漆黑(しっこく)だ。


 「相変わらず綺麗だなお前は――、なんで呪神(じゅしん)といた?」


 「あ~……、うん。お世話になっている村人の子供が堕神(だしん)の能力で危なかったんだ。交戦中で堕神(だしん)呪神(じゅしん)に……」


 堕神(だしん)の王に堕神退治の話は気まずい。しどろもどろになるタリアにルキは笑った。屈託ない笑顔だ。

 

 「アハハ、俺は兄妹弟(きょうだい)の味方だっての。可愛い末弟(まってい)に怪我がなく安心した」


 「……ルキは何故、呪神(じゅしん)を? 仲間だろう?」


 「仲間じゃねえよ。自我のない下種(げす)な奴らだ。俺は感覚で呪神(じゅしん)になったヤツがわかる。来てみりゃお前がいた、今日の俺はツイてる」


 天上界の未知の事実だった。堕神(だしん)の王自ら呪神(じゅしん)に堕ちた堕神(だしん)を始末している。


 「ルキのお陰で子供は助かるよ、ありがとう」


 「……村人に世話になってるってお前、下界にいるのか?」


 人間嫌いなルキは眉間に(しわ)を刻ませた。タリアは片頬(かたほお)を掻き、正直に答える。隠す必要はない。


 「ハハ。まあ、うん。紆余曲折(うよきょくせつ)あってね、いまは彼と住んでいる」


 彼、と紹介した人物はもちろん火鬼(ひおに)孤魅恐純(こみきょうじゅん)だ。ルキは「あ゛?」と濁音を零し、視線を隣に滑らせた。

 

 天上界の神々にない二本角を頭部に生やす、朱红色(しゅいろ)の鬼がルキを見据えている。


 「……鬼?」


 「火鬼(ひおに)孤魅恐純(こみきょうじゅん)だ」


 「……神の天敵か……五百年前、堕神(だしん)の間で話題になってたな。人間と神官(しんかん)(あや)めてジジイに封印された鬼界(きかい)の鬼だろ。なんでまた一緒に住んでるんだ? 火鬼(ひおに)上位神(じょういしん)、お前らふたりに何の接点がある?」


 天上界と四界(しかい)は相容れない関係だ。天上界の内情に元神(もとかみ)堕神(だしん)は詳しい。堕神(だしん)に情報を得ているであろうルキが驚いても何ら不思議はなかった。


 ルキの矢継ぎ早の質問にタリアは簡潔(かんけつ)に説明する。


 「あ~……封印が解けて私の監視下に置いている。恋人でいまは婚約期間だ」


 「三百年後に婚姻する」


 (ほむら)が即座に付け加えた。肩を抱き寄せられるタリアは拒まない。


 「――婚姻? お前が? 鬼と?」


 ルキにとって二人の、タリアの返答は青天の霹靂だったようだ。瞳を左右に揺らし驚愕(きょうがく)している。


 「え、と……まあ、うん」


 「ジジイやエルは?」


 「承知している」


 「……マジかよ。エル泣いたんじゃねえの? アイツ異常にお前にべったりじゃん」


 さすがは次男だ。的中していてタリアは苦笑した。


 「アハハ、まあね。エルは私に優しいよ」


 「お前に優しくねえ兄姉はいねえだろ。俺も兄妹弟にだけ(・・)は優しい」


 ルキは語尾の一部を強調させ、タリアの後ろを睨んだ。ハオティエンとウォンヌが軍刀(ぐんとう)(つか)を握っている。


 (もと)上位神(じょういしん)ルキの実力に(かな)う神は、上位神(じょういしん)エルくらいだ。正義を捨てた堕神(だしん)は自らの様々な欲に忠実で、常闇(とこやみ)に溺れる力は計り知れない。もしかすると堕落したルキの堕力(だりょく)は数千年を経てエルに匹敵するか、それ以上になっているかもしれない。


 タリアは焦って両手を広げ、二人を(かば)った。


 「ま、待って兄さん!!」


 「お前の結婚話はビックリしたが、まあ火鬼(ひおに)はいい。お前はジジイが創っていない(まが)い物の神や、ジジイが俺達に這い(つくば)らせる低級な人間を選ばなかった。いい判断だタリア、お前らふたりの前途を祝福してやる」


 「ありがとう義兄(にい)さん。嬉しいよ」


 緊迫する状況で焔はただひとり冷静だ。


 「(ほむら)……!!」


 「俺とタリアを祝福してくれた。嫌な気はしない」


 タリアに一喝(いっかつ)されるが(ほむら)は反省しない。(ほむら)の正直な姿勢がルキに好感を持たせる。


 「ハハッ、そりゃ良かった。義兄(にい)さんかいいな、お前の悪名は気に入っている。タリアと来ないか奈楽界(ならくかい)に、歓迎してやるぞ」


 「やめてくれ兄さん!! 私は堕落しない!!」


 「真っ黒なタリアか……」


 堕神(だしん)の王、輝堕王(きだわう)直々(じきじき)の勧誘は洒落にならない。断固拒否するタリアの横で(ほむら)は妄想に(ふけ)っていた。脳裏を掠める黒々しいタリアは魅惑的だ。


 「っざけるな!! 孤魅恐純(こみきょうじゅん)!! 我らが神々しいタリア様に!!」


 「堕神(だしん)のタリア様を想像するな!! 万死に値するぞ!!」


 ウォンヌとハオティエンが目に角を立て、怒鳴る。万が一も、そんな未来あってはいけない。


 二人は格上のルキに臆せず抜刀した。それは二人のタリアに対する、ルキが遠い昔に投げ出した愚かで正しい忠義心だ。

 

 「威勢がいいな、若さか」


 「やめてルキ」


 タリアの背中に十二枚の純白の翼が現れる。ルキと対照的で(けが)れがない。


 「……どけタリア」


 「私が相手になる」


 勝算が低い戦いだ。けれど迷いはない。タリアが能力で天上皇(てんじょうおう)御言葉(みことば)が彫られてある諸刃(もろは)聖剣(せいけん)を取り出し右手に握った。


 「はあ、タリアは下がって」


 (ほむら)はハオティエンとウォンヌの生死に関心はない。単にタリアを守りたい意思で前に出る。タリアは(ほむら)の背に守られる形となった。並んだ列にルキが呆れる。


 「ったく面倒くせぇな、お前ら……。いい、やめだ興醒(きょうざ)めだ」


 天を仰ぎ太息(ふといき)を吐いたルキの殺気がふわっと和らいだ。


 「……ルキ」


 「こっちに来いタリア、俺が去る条件だ。一回抱き締めさせろ」


 「……わかった」


 「タリア様!? 堕神(だしん)甘言(かんげん)です!!」


 「騙されてはいけません!! 罠ですタリア様!!」


 (うべな)うタリアをウォンヌとハオティエンが反対した。堕神(だしん)の概念をなす要素は悪行だ。天上皇(てんじょうおう)の愛を裏切った醜悪(しゅうあく)堕神(だしん)は嘘が上手い。


 心配する二人にタリアはにっこり微笑んだ。


 「平気だ、大丈夫だよ」


 二翼と剣を(おさ)め、制止を振り切り、タリアはルキの傍に行った。(ふく)れっ(つら)のルキにタリアは戸惑う。ルキが望んでいないオマケがタリアに引っ付いていた。


 「お前は呼んでねえ」


 「義兄(にい)さん十秒だよ」


 「……チッ」


 (ほむら)の一方的な時間制限に舌鼓(したづつみ)し、ルキがタリアを抱き締める。


 「ルキ……」


 「……遠目にいるお前を、抱き締めたいと思ってた。俺の(ずっと)を疑うかタリア」


 「私は兄さんのずっと()を信用しているよ」


 「……お前は俺の、俺達兄妹弟(きょうだい)の、自慢の末弟だタリア」


 タリアを離すルキが継いで(ほむら)に告げた。


 「俺の大事な末弟(まってい)だ。神々や人間共に利用させるな、頼んだぞ火鬼」


 「ハッ、自明(じめい)だ。義兄(にい)さん」


 タリア主義の焔に(ほむら)二言はない。ルキは長い睫毛を半分下げ、タリアの頭を撫でる。


 「じゃあなタリア」


 「……また(・・)ねルキ」


 また(・・)を願うタリアの挨拶に、ルキは切なく一笑した。暗黒(あんこく)(しょく)(きり)になって消散(しょうさん)する。表現し難い感情にタリアが涙し、「おいで」と(ほむら)が胸に閉じ込めたのだった。


最後まで読んで頂きありがとうございます(*'ω'*)


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また次回もよろしくお願いします!

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