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赤き覇王 ~底辺人生の俺だけど、覇王になって女も国も手に入れてやる~  作者: 書く猫
第3章.ただの怒りではなく、それ以上の何かを
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第22話.数で勝てると思うな

 爺とアイリンは小屋の前に座って一緒にパンを食べた。


「美味しいな」


「あう!」


 二人がパンを食べ終わると、俺は爺に目配せを送った。爺は立ち上がって俺に近づいた。


「何事だ、レッド」


「話したいことがある」


 俺たちはアイリンから少し離れた。アイリンは薬学の本を読みながら採取してきた薬草を分類し始める。ちゃんと勉強しているようだ。


「さっさと話せ」


「実は、今朝のことだけど……」


 俺はアイリンの姿を見つめながら、爺に今朝のことを話した。


「……犯罪組織を正面から攻撃しただと?」


 爺が露骨に嘲笑う。


「お前ってやつはな……本当に化け物なのか? 人間ならちょっと頭使えよ」


「いや、頭使ったんだよ」


「はあ?」


「あんな卑怯なやつらは、弱者には強く出ても強者には逆らえないさ。つまり誰が強者なのか力を示してやらなければならない」


 俺の説明を聞いて、爺が頷く。


「あながち間違いでもないな。でも一度叩いたくらいで、犯罪組織が尻尾を巻くとは思うなよ」


「分かっている。次はやつらの方から襲ってくるだろう」


 俺は爺を見つめた。


「爺、戦いが一段落するまで……アイリンのことを頼む」


「へっ」


 爺が苦笑する。


「まあ、分かった。あの子ももう私の弟子だからな」


「ありがとう」


 俺と爺は会話を終えて、勉強しているアイリンの姿を一緒に眺めた。


---


 次の日、俺は朝から南の都市へ向かった。


 都市に向かう広い道を歩いていると、視線が感じられた。誰かがこっそり俺を監視しているのだ。まあ、これも予想通りだけど。俺は視線を無視して歩き続けた。


 やがて都市の姿が見え始めたが、普段とは全然雰囲気が違った。普段はあんなに活気に溢れる南の都市だったのに……今はやけに静かだ。俺は苦笑しながら都市へ一歩踏み入った。


「……やっぱりな」


 道が『人間の壁』で塞がれていた。もっと詳しく言うと、数十を超える屈強な男たちが横に並んで道を完全に封鎖していた。そしてその先頭には……俺が叩いた犯罪組織のボスが立っていた。


「やっと来たか」


 犯罪組織のボスが顔を歪ませて笑う。


「待ちくたびれたぞ、化け物」


「へっ」


 俺も笑った。


「で、結局数に頼るのか?」


「化け物のお前に一つ教えてやる。人間の社会ではな……正々堂々は通用しない。どんな手段を使っても最後まで生き延びればいいんだ」


「あながち間違いではないな」


 俺は頷いた。


「俺も別に手段を選ぶつもりはないし、あんたに偉そうなことを言うつもりもない。ただ……その小賢しい真似を、俺の暴力で正面から捻り潰してやる」


「……大口叩けるのも今のうちだぞ、化け物」


 ボスの目に殺気がこもる。


「やつを殴り殺せ!」


 ボスの命令と共に……数十を超える男たちが叫びながら俺に向かって突進してきた。


「ぐおおおお!」


 俺も雄叫びをあげて、その人の波と正面からぶつかった。全力で拳を振るい続けて、屈強な男たちを次々と倒した。


 もちろん俺も攻撃を受けた。でも俺は怯まなかった。ここで守勢に回ってはいけない。殴られようが蹴られようが……構わずに倒し続ける!


「うおおおおお!」


 今まで身に付けてきた格闘技を極限まで活用し、かかってくるやつらを容赦なくぶち壊す。本能的な暴力と合理的な技が一体化して……自分でも驚くほどの破壊力を出す。


「はあああっ!」


 右からかかってくる男のみぞおちを拳で強打し、次の瞬間には後ろの男の腹を蹴る。その隙にタックルしてくるやつの頭を肘で叩き、体を持ち上げて他のやつらに投げ飛ばす。


「この化け物!」


 一人の男が突進してきた。その男の手は……光っていた。ナイフだ。


「ぬおおおお!」


 俺は近くにいた男の胸倉を掴んで、ナイフの男に突き放した。ナイフの男が慌てると、その頭に一撃を放った。やつは顎が砕かれて倒れた。


「こ、こいつ……」


 男たちの動きが鈍くなる。俺の化け物みたいな奮戦に怯んだのだ。俺は本能的動いて、まだ怯んでいないやつを先に倒した。


「い、一体何なんだ……」


「化け物……」


 最初の勢いが完全に消え去り、男たちの顔に恐怖が浮ぶ。


「……次はどいつだ?」


 俺は周りを見回した。まだ敵の数は多いが……誰も動かない。


「何しているんだ!?」


 犯罪組織のボスが驚愕した顔で叫ぶ。


「相手は一人だぞ! 早く叩き潰せ!」


 しかしその指示にも誰も動かない。


「いいザマだな」


 俺は笑った。


「指示ばかりしないで、あんたが率先してみろよ。ボスなんだろう?」


 その挑発にボスの顔が俺並に真っ赤になるが、やっぱり動かない。


「じゃ、俺の方から行ってやる」


 俺はボスに向かってゆっくりと歩いた。ボスは少し後ずさる。


「……ん?」


 しかし……その時だった。道の向こうから数十の男たちが現れて、ボスの後ろに集まった。


「ふふふ……」


 ボスが笑う。


「お前を潰したいのは私の組織だけではないんだよ、化け物」


「ちっ」


 これは流石にやっかいになった。増援の出現で、もう戦意を失っていたやつらも目の色が変わった。それに比べて、俺はさっきの激戦でかなり体力を損耗した。


「……まあ、ここで全部掃除してやるさ」


 俺は血の付いた拳を握りしめた。ボスはそんな俺を嘲笑って指示を出す。


「やつを包囲しろ」


 やつらは無暗に突進する代わりに、俺の周りを完全に包囲した。少しは頭を使うようになったのだ。


 まずは包囲網を突破しなければならない。そう判断した俺は力を溜めて、突進する準備に入った。


「ん?」


 しかし俺が突進する前に、包囲網の一部が倒れた。新たに数人の男たちが現れて……犯罪組織を攻撃し始めたのだ。


「あいつらは……」


「レッドさん!」


 先頭で戦っている男が俺を呼んだ。


「レイモン?」


 その男は俺の10戦目の相手、レイモンだった。そしてレイモンの周りにいるのは……みんな格闘場の選手たちだった。


「お前たち……」


「これからレッドさんに加勢します!」


 レイモンと格闘場の選手たちは包囲網を突破して、俺の周りに集まった。


「き、貴様ら……」


 ボスの顔が歪む。


「こうなったら全員殺せ!」


 犯罪組織の男たちが俺たちに向かってかかってきた。俺は思いもよらない援軍を得て驚きながらも、向かってくる敵を叩き始めた。

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